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【王女と皇女編】
第11話 人の背中を追う者は自分の背中を見ない ①
しおりを挟む帝国、帝都にて。
「陛下、御報告がございます」
謁見の合間、娘の一人がやって来た。
少なくとも、そう言われたので時間を空けている。
何番目だろう?
どうでもいい疑問が浮かんだが皇帝は無視をした。
本当にどうでもよかったから。
名前もわからないが、侍従が『姫』と言っているから娘なのは確かなのだろう。
「申すがよい」
興味などないが、わざわざ来たのだ。
言わずに帰りはすまい。
「五番目を送って行った三番目が、相手方へ嫁入りの交渉をしているとの報告を受けましてございます」
五番目、ヒルデガルドのことか。
三番目の名前は知らない。
「帝国には嫁ぐ相手がいないのでございましょう。付き添っている四番目ともども、嫁入りを許可なさるのはいかがでしょうか?」
「許可をな」
それは命令と同義。
皇帝の意向には逆らえないものだからだ。
おそらく、その三番目には他に思惑があっての行動。
それをこの者——おそらく二番目——は利用しようとしている。
話の内容から察するに、この者は既婚らしい。
腹違いの皇子とでも結婚しているのだろうと思われた。
もしかしたら、聞いたことがあるかもしれないが、些末なことゆえ記憶には無い。
腹違いの兄弟姉妹での結婚は珍しいものではなかった。
皇帝自身、妻の半分は姉や妹だ。
その方が、帝位を継ぎやすくなると考えられている。
事実、血の濃さゆえに、帝位継承順位が上がる傾向があった。
その上で、自分より下の皇女をまとめて王国の貴族に嫁がせて、帝位継承順位から外そうとでも考えているのだろうと思われる。
兄弟姉妹を可能な限り排除し、自分の帝位継承順位を上げようとしているのだ。
わかりやすい。
「そうか」
娘を一人の男に三人も嫁がせる話をされているが、動揺はない。
むしろ、心は穏やかだ。
つい先日、何番目かの息子が不慮の事故死をしたと報告を受けた。
数ヶ月に一度は聞く報告である。
いま、生きている。
今後も生きていけそう。
そんな話なら、それはなんであれ『よい話』だ。
「三人も嫁がせるなら、手ぶらでは行かせられぬぞ」
ヒルデガルドだけならば、なにもいらない。
身一つでいい。
休戦協定の目に見えるシンボルだからだ。
だが、そういった理由のない娘を嫁がせるならば、持参金代わりになにか持たせねばならない。
「三番目の領地が彼の地に隣接しております。この半分を付ければよろしいかと」
「領地をな」
王国に領地を奪われたと騒いでいたはずだが、それでいいのだろうか?
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そんな考えが透けて見えた。
「ならば、そうするがよい」
子供達のうち、娘三人は生き延びることができるやも知れん。
悪くない。
皇帝の意を得て、人の悪い笑みを押し隠した娘が頭を下げる。
その娘を見送り、皇帝は人知れず安堵の息を吐いた。
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