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【歴史の礎編】
第7話 使えるなら敵とも手を結ぶ ②
しおりを挟む「我々になにをさせるおつもりか?」
フィオーラからの要請を受けて参集したものの、未だなにも聞かされていない。
突然話を振られて、焦っているのだ。
「聞いての通り、わたしたちは行軍途中の軍に対して兵糧攻めをしようとしている。可能な限り遅らせるが、そのことはいずれ気付かれる。となると、帝国軍はどうすると思う?」
「えーと?」
「それは」
お互いに、戸惑い顔を見合わせている。
「進路上にある村々を襲撃して、略奪を働くでしょう」
いまいちピンときていないらしい高官たちにかわり、フィオーラ が答えた。
「というより、気付かなくてもやると思います。北王国が侵略されたときも、無関係の村々が焼き討ちにあっていますから」
兵糧攻めにあっていると気が付かなくても、付近に村を見つければ襲撃するだろうとの予測が語られた。
「もともとの帝国領ではやらないでしょうけれど、元の北王国領他、侵略地の領内に入ったらなにをしでかすかわかったものではありません!」
かなり危機感があるようだ。
同時に、これ以上の民への暴虐は断じて看過できないとの意思を感じる。
「そこでだ。あなた方には北王国の領民たちに避難を呼びかけていただきたい」
「帝国軍が来る前に逃がすわけか」
「だが、どこへ?」
「軍に見つからない場所に難民キャンプを設営します。ひとまず、そこへ退避させてください」
「しかし、避難と言ったところで、動いてくれるだろうか?」
「逃げようにも食糧が無くては飢えるだけだ」
「あっ!」
高官たちの話を聞いていたフィオーラが、小さく声を上げた。
真ん丸の瞳にカロスタークの姿が映っている。
「パドック殿が買った食糧の運ぶ先は、リューイン州ではなく難民キャンプなのですね? しかも、運び出しは北王国の領民自身に行わせると?」
ああ、それか!
高官たちが理解した、と大きく頷いた。
「それならば説得も容易い」
「食糧をやるから、しばらくは指定した場所にいろと言えばいいのだからな」
旧北王国の領地は、未だに荒れ果てている。
畑も空っぽ。
それでもなお村にとどまっているのは、空っぽの畑ではあってもなにかしらの植物の根が掘れるからだ。
そして、井戸があるからである。
村や家に執着しているわけではないのだ。
村を出れば食糧がもらえるとなれば、しかも村にいれば軍の暴虐に曝されるとなれば、避難することを躊躇する者は多くあるまい。
「そうなりますと、動くのは早いほうがいいですね。帝国軍が動き始めてしまったら、余裕がなくなります」
「そうですな。避難は帝国側から始めなければ意味がない。こちら側からやり始めたのでは手遅れになる」
「北王国の南地域はわたしの生まれ故郷だ。土地勘がある。わたしが行こう」
「なら、わしは北東へ」
「北西は任せろ」
高官たちが次々に自分の力の及ぶ地域を告げていく。
早い者では明日の朝にも出発できるということで、北王国の高官たちの士気が否応なく高まっていく。
「ですが、避難したあとはどうなりますか?」
それでも、フィオーラは不安そうだ。
カロスタークをじっと見詰める。
「我々は、生き残るために王国を見限りました」
「え? はい、それは聞いておりましたが?」
「ですが、我々だけでは未来が描けない。なので、北王国の再興を目指します。そして、二つ合わせて独立した連合国とできればと考えているのです」
王国北西部と、旧北王国。
二つの領地を得られれば、連合国家としての体裁は整う。
「そんなことが、可能なのですか?」
「可能にするのが、私の仕事になりますね」
簡単なことではないが、やらなければ確実な滅びが待っている。
やるしかない状況なのだ。
「北王国の再興だと?!」
「民を逃がすだけでなく、国を取り戻すというのか?!」
騒ぎ出す高官たち。
不可能と言われていたことを、この危機に行うというのは驚きだろうから当然か。
「国民をどれだけ救えるかが鍵です。国は民をもって基とする。避難させた民の数が成否を分けることになるでしょうね」
「急がねば!」
「すぐに現地へ!」
士気が最高潮に高まった。
「私にできることがあれば、なんでも仰ってください。ぜひ、お力になりたいのです!」
「もちろんです。忙しくなりますよ」
帝国軍の進軍は数日中に始まると思われた。
村への襲撃を回避する手立ても打ったことで、敵は最短ルートを最適な速度で進んでくる。
進軍には早くて十数日、遅くてもひと月はかからない。
だとすれば、準備に使える時間は二十日ほど。
多くはない。
「はい!」
目を輝かせて、フィオーラは胸を叩いた。
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