商人の男と貴族の女~婚約破棄から始まる成り上がり~

葉月奈津・男

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【歴史の礎編】

第26話 言の葉を用いる ②

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 川の上流には大量の物資が積み上げられている。
 レッドルア領から掻き集めたものだ。

 災害や飢饉に備えて保管されていたものを、各地から供出させた。
 最悪の場合でも、領内の住民を一年は飢えさせない量である。

 さらに、馬を外された状態の荷馬車も並べられていた。
 これも、レッドルア領内から集めたものだ。

 管理しているのは、モンモラシー男爵の第二夫人ラヴァルである。
 ずらりと並べられた荷馬車には、すでに最大限の物資が詰め込まれていた。
 外に積まれているのは、入りきらなかったものだ。

 そこに、帝国軍の荷馬車が続々と入ってきていた。
 タバルの部下たちが誘導してきて、エルフの隊商たちが受け入れをしている。
 エルフたちの指示で、『竜鱗族』が物資を積み込んでいく。
 物資の山が、見る見る低くなっていった。



 帝国兵たちが入って来る。
 先に現地入りしていたカロスタークが、出迎えた。
 もちろん、周りではセザール騎士団が警戒している。

「聞きたいことがあるそうですが、まずはこちらからお聞きしたい」
 タバルが切り出した。

「なんでしょうか?」
「我々をどうなさるおつもりかということです」
 ああ、それかとカロスタークは自嘲した。

「これは、私が先走りし過ぎたようだ」
「・・・」
 タバルは答えを待っている。

「とりあえず、二・三日は監視下に入っていただく。そのあとは自由にしていただいてかまいません」
「自由にですと?」
「ええ、向こうの難民たち同様に開拓民になるもよし、帝国に帰るもよしです」
「か、帰ってもいいですと?!」
 タバルが目を剥いた。

「そんな話は聞いたことがない」
 敗残兵の末路といえばよくて奴隷、そうでなければ皆殺しと決まっている。

「いま、聞いたでしょ?」
 史上初だとしても、現実に提案がなされた。
 答えはいかに、とカロスタークが穏やかに微笑んで見せる。

「そこで、さっき私が訊きたかったことに繋がるわけです。この先も軍人を続ける意志はありますか? こちら側の、という意味ですけどね」
 カロスタークは単刀直入に聞いた。
 タバルが唾を呑んだ。

「帝国人同士で戦わせるおつもりか」
 声が低くなる。
 カロスタークは手と首を激しく横に振った。

「いやいやいや。そんなことは言いません。私が考えているのは監視です」
 難民や投降兵が馬鹿なことをしないように、見張ってほしいのだと伝えた。

「そういうことですか」
 敵側の人間だと対立してしまうが、同国人同士であれば衝動を抑えられる可能性が高い。
 無意味な騒乱を防ぐのに最適だ。

 タバルは部下たちを見た。
 難民になるのも、国に帰るのも難しいだろう。

「直接戦うことはないのですね?」
 確認する。

「ない」
 カロスタークは断定した。
 それならば。

「傘下に入りましょう」
 タバルの決断が下された。
 部下たちは、無言でこれを受け入れた。

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