風のアモール ~祈りの巫女と二人の男~

葉月奈津・男

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(R18)ファタール用改稿版

第50話 神々の舌戦

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 扉の向こうは、先ほどの部屋と似た広間。
 ただし、床が一段高くなった場所に、玉座のような椅子が置かれていた。

 その前に立っていたのは——ゼナ。

 《記憶》の記憶で見たときとは違い、服は整っていた。
 だが、瞳は血走り、狂気に満ちていた。


「待っていたぞ」


 ゼナの第一声は、スラインローゼに向けられていた。
 アモールもサラサも、眼中にない様子だった。

「久しぶりだな、スラインローゼ。新たな力に目覚めた私の魔術を見ることができるとは、あなたは運がいい」

「その驕りが、あなたを滅ぼすでしょう。魔に魅入られ、支配された者の末路ほど哀れなものはありません」

「ふふふ・・・口ではなんとでも言える。実力で証明してもらおう」

 ゼナはアモールに向き直り、挑発する。

「小僧、私を倒しに来たのであろう? かかってこないのか? 足がすくんで動けないのなら、私が引っ張ってやろうか?」

 ゼナの腕が蒼く光り、空気が震え始める。

「何をする気なんだ、あいつは?」

「魔気を集めています。そして、その圧力で私たちを押し潰そうとしているのです。サラサ、障壁に力を貸してください。これに耐えられれば、勝機はあります」

「はいっ!」

 スラインローゼとサラサが、アモールの左右に移動し、力を解放する。

 二人の魔力が融合し、光球となって三人を包む障壁が形成された。

「これが魔気の力だっ!」

 ゼナの叫びとともに、空気が発光しながら集まり、圧力が広間全体を包み込む。

 障壁がなければ、アモールもサラサも一撃で潰されていたに違いない。

「どうだ。これが今の私の力だ。貴女もじきに、私の足下に平伏すことになる」

「愚かな。力を誇示し、人を虐げることだけを追う者に、このわたしが平伏することなどありません。そんなことをするくらいなら・・・命を絶ちます!」

「強情な女だ。力ずくで屈服させてやってもよいのだぞ」

「あなたごときに遅れをとるわたしではありません。やれるものなら、やってご覧なさい」
 
「あなたは私を必要としなかった! 私の力も、私の心も、全部……!」

「必要としなかったのではありません。……必要以上に、あなたを意識してしまったのです」

「……っ……!」

「……おいおい、今さら何言ってんだよ」
 思わず、アモールがツッコミを入れてしまった。

 ——そして、二人の舌戦が始まった。


 そして・・・。

 しばらくの間、言葉の応酬が続いたが、決着の気配はなかった。

「・・・これでも神の一族なのかよ。人間の子供のほうが分別あるぞ」

 アモールが呆れて呟く。
 サラサもあくびをこらえている。

「・・・このままじゃ埒があかねぇな。無茶を承知で、大博打を張るしかねぇ。多少のリスクは覚悟の上ってことで・・・よし! やるっきゃない」

 アモールは決意を固め、サラサに囁く。

「サラサ、さっき渡した魔晶石の袋と、女神の宝珠をくれ」

「なにをする気なのですか?」

 サラサは袋と宝珠を手渡しながら尋ねる。

「なぁに、あの二人が素直になるためのきっかけを作ってやるのさ」

 アモールは袋から白の魔晶石を四つ取り出し、ゼナに向けて放つ。

 白の魔晶石が空中で弾け、光の渦が四方からゼナを締め上げるように巻きついた。

「ぐっ、お、おのれっ! 人間ごときが・・・! だが、こんなものっ・・・なぜだ・・・なぜ、私の力が通じぬ・・・!」

 ゼナの動きが止まったその瞬間——アモールは黄の石を三つ放ち、雷光がゼナを貫く。

 空気が焦げる匂いが広間に漂う。

「やめてっ!」
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