50 / 84
(R18)ファタール用改稿版
第50話 神々の舌戦
しおりを挟む扉の向こうは、先ほどの部屋と似た広間。
ただし、床が一段高くなった場所に、玉座のような椅子が置かれていた。
その前に立っていたのは——ゼナ。
《記憶》の記憶で見たときとは違い、服は整っていた。
だが、瞳は血走り、狂気に満ちていた。
「待っていたぞ」
ゼナの第一声は、スラインローゼに向けられていた。
アモールもサラサも、眼中にない様子だった。
「久しぶりだな、スラインローゼ。新たな力に目覚めた私の魔術を見ることができるとは、あなたは運がいい」
「その驕りが、あなたを滅ぼすでしょう。魔に魅入られ、支配された者の末路ほど哀れなものはありません」
「ふふふ・・・口ではなんとでも言える。実力で証明してもらおう」
ゼナはアモールに向き直り、挑発する。
「小僧、私を倒しに来たのであろう? かかってこないのか? 足がすくんで動けないのなら、私が引っ張ってやろうか?」
ゼナの腕が蒼く光り、空気が震え始める。
「何をする気なんだ、あいつは?」
「魔気を集めています。そして、その圧力で私たちを押し潰そうとしているのです。サラサ、障壁に力を貸してください。これに耐えられれば、勝機はあります」
「はいっ!」
スラインローゼとサラサが、アモールの左右に移動し、力を解放する。
二人の魔力が融合し、光球となって三人を包む障壁が形成された。
「これが魔気の力だっ!」
ゼナの叫びとともに、空気が発光しながら集まり、圧力が広間全体を包み込む。
障壁がなければ、アモールもサラサも一撃で潰されていたに違いない。
「どうだ。これが今の私の力だ。貴女もじきに、私の足下に平伏すことになる」
「愚かな。力を誇示し、人を虐げることだけを追う者に、このわたしが平伏することなどありません。そんなことをするくらいなら・・・命を絶ちます!」
「強情な女だ。力ずくで屈服させてやってもよいのだぞ」
「あなたごときに遅れをとるわたしではありません。やれるものなら、やってご覧なさい」
「あなたは私を必要としなかった! 私の力も、私の心も、全部……!」
「必要としなかったのではありません。……必要以上に、あなたを意識してしまったのです」
「……っ……!」
「……おいおい、今さら何言ってんだよ」
思わず、アモールがツッコミを入れてしまった。
——そして、二人の舌戦が始まった。
そして・・・。
しばらくの間、言葉の応酬が続いたが、決着の気配はなかった。
「・・・これでも神の一族なのかよ。人間の子供のほうが分別あるぞ」
アモールが呆れて呟く。
サラサもあくびをこらえている。
「・・・このままじゃ埒があかねぇな。無茶を承知で、大博打を張るしかねぇ。多少のリスクは覚悟の上ってことで・・・よし! やるっきゃない」
アモールは決意を固め、サラサに囁く。
「サラサ、さっき渡した魔晶石の袋と、女神の宝珠をくれ」
「なにをする気なのですか?」
サラサは袋と宝珠を手渡しながら尋ねる。
「なぁに、あの二人が素直になるためのきっかけを作ってやるのさ」
アモールは袋から白の魔晶石を四つ取り出し、ゼナに向けて放つ。
白の魔晶石が空中で弾け、光の渦が四方からゼナを締め上げるように巻きついた。
「ぐっ、お、おのれっ! 人間ごときが・・・! だが、こんなものっ・・・なぜだ・・・なぜ、私の力が通じぬ・・・!」
ゼナの動きが止まったその瞬間——アモールは黄の石を三つ放ち、雷光がゼナを貫く。
空気が焦げる匂いが広間に漂う。
「やめてっ!」
0
あなたにおすすめの小説
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
あなたのためなら
天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。
その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。
アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。
しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。
理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。
全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
令嬢の皮を被ったヘビースモーカー、侍女に化けて敵情視察。〜猫を拾ってタバコを吸っていただけなのに、なぜか次期伯爵に愛の告白をされました〜
御厨そら
恋愛
「婚約破棄されたのよ!」
最悪に仲の悪い姉・ルイーザが泣き崩れる姿を見て、妹のフィオレは歓喜した。
自室にダイブして爆笑し、お祝いに父の書斎からくすねた一級品の葉巻をくゆらす——。
そんなフィオレに、父が下した命令は「姉を振った男、ライネーリ伯爵邸への潜入調査」だった。
黒髪おカッパのカツラにメガネ、そばかすメイクで別人『侍女モニカ』に変装し、いざ敵地へ!
……のはずが。
厨房の男と隠れてタバコを吸い、子猫のルーを拾って可愛がり、義眼の同僚と秘密を共有し、気づけば屋敷の面々と仲良くなっていく。
さらには、姉を振ったはずの次期伯爵ジェラルドが、なぜか偽姿のフィオレを執拗に追いかけてきて……?
「君に行ってほしくないんだ。結婚してくれ、フィオレ」
ちょっと待って。私、変装してるよね? そもそもアンタ、お姉ちゃんの元婚約者でしょ!?
そして潜入先の書斎で見つけた、**『次女フィオレは10年前に死亡している』**という不可解な報告書の謎。
一つの体を共有する姉妹の、あまりに歪で、あやしい「ヒ・ミ・ツ」の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる