『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

文字の大きさ
18 / 327
全年齢対応・表現マイルドバージョン

第17話 カエル女の憂鬱 ~仁科悠~

しおりを挟む
  
      ◇仁科悠視点◇
 

『ダンジョンマスター』——『ダンマス』カルマが戦闘を指揮している。
 3Dウィンドウで、まるでゲームでもしているように。

 その横で、私もゲームをしている。
 都市開発ゲームだ。

 ダンジョンの片隅に設定された『巣』。
 これの運営をして効率よく生産するのが目的。

 なにを生産するのかって?
 決まっている。

 新世代の『虫』たち。
 そして、『魔力』だ。

 『巣』は六角形を基本に構成されている。
 簡単に言えば『蜂の巣』だ。
 
 機能性抜群のカプセルホテル。
 それが『巣』だ。

 大きな台座に、人ひとりがすっぽり入るくらいの間仕切りがある。
 くらいの、ではないわね。
 実際、人が入るのだから。

 人とは言うが、実際は少し小さめだ。
 身体は不要カ所のない最小限の状態に整えられ、巣の構造に合わせて収められている。

『巣』の構造に適合した人間が、間仕切りにぴったりとフィットしている。
 嵌め込まれていると言っても、密閉感はさほどないと思う。

 体の前面は解放されているのだ。
 魔力の吸収やモンスターの成長に支障がないよう設計されていた。

 その代わり、一部を粘着力のあるもので巣と一体化するほどに安定させている。
 暴れないようにと、常に『誰か』が押さえているというのは効率が悪い。
『虫』たちの自由な生活にも支障が出る。

 よって、『人間』たちを『巣』に安定的に常駐できるようにした。
 大丈夫。
 不便はない。

 食事は常に運ばれてくる。
 おっきなトンボや蜂さんが運び込んできた『栄養物』を受け取り、黒い体の『シデムシ』さんによっ供給され、不要なものは丁寧に処理される。
 すべてが循環する設計になっている。

 この配置なら、魔力の回収効率は最高。
 虫たちも快適に育つし、資源の損耗も最小限。
 ほんと、よくできてる。
『ダンジョン』の機能を大分使い慣れてきているのではないだろうか?

 排泄物の処理もお任せだ。
 親切な『シデムシ』さんがちゃんと拭き取ってくれる。
 これは、生まれた『子供』たちの成長支援用の栄養物に当てられるので、一切ムダがない。
 
 ああ。適合させるのに際して取り除いた部分は『栄養物』に、固くて扱いにくいモノは丁寧に砕いて『子供』たちの栄養だ。
 虫たちにとっても、カルシウムは成長に重要らしい。

 単体の『巣』のときにいた『回復役』も、今は『間仕切り』の中だ。
 回復は『再生虫』がしてくれる。
 死んでないからか私のように支配権を奪われたりもせず、ただただ魔力の塊が移動した痕を癒してもらうだけだ。
 
 私の場合。
 心肺停止の期間が長すぎて、脳にも支障が出ていたのだろうと言われた。
 損傷した脳を『再生虫』が補助しているから、こんななのだろうというわけ。
 そういうことかーって納得しちゃったわよ。

 この調子だと、次世代の羽化も近い。
 巣の拡張も考えなきゃね。
 もっとたくさん、育てられるように。

 って、そんなことはカルマがもう考えているんでしょうけど。
『人型資源』が増えるかどうかは、彼が決めることだから。
 私はウィンドウ越しにモンスターたちを管理し、巣の維持を行っていた。  
 それは、奇妙な充実感を伴う作業だった。

 思うところがあるとすれば、跳ねることも、笑うことも、もう命令だってこと。
 でも、『命』を扱うことへの憂鬱だけは、まだ自分のものだった
 それは、 かつて誰かを守りたかった『私』の、数えるほどに少なくなった灯りだった。

「あれ?」
 そんな中、私は、ふと気が付いた。

 寄生下にあるモノたちが静かになっていた。
 幼虫が巣立ったわけじゃない。
 まだ元気に彼女らの寄生された者の中で、静かに成長を続けている。

 痒いはずだ。
 なのに動かない。

 「どしたの?」
 モンスターの再配置を終えたカルマがのぞき込んできたので説明する。

 「それは・・・おかしいな?」

   ◇カルマ視点◇

 どうしたんだろう?
 疑問に思ったのだが、『システム』さんが素っ気なく答えを教えてくれた。

 『魂を使い切ったのですよ』
 それが答えだ。

 苦痛や精神的ショックを与えるとことで魂を破断。
 この欠片を『ダンジョン』は『ソウルポイント』として収集している。

 この『魂の破断』によって魂が限界まで摩耗してしまっているというのだ。
 魂が『白化』した状態なのだと。
 感情も感覚もなくなり、漂白されている。
 だから、もう苦しむことがないのだ。

 『わかりやすく言うなら、転生時と同じです。死によって天へ還った魂が浄化され、まっさらになって再び地上に還る。その状態です』
 『システム』が説明を続けてくれる。

 『ただ、普通はそれでも『人』として生きた経験があるため高確率で『人』に転生します。救いがたい悪人の場合は粉々に砕かれて、破片一つ一つが動植物になったりもします。ですが、『白化』すると、確率はまるっきり0になる』
 『人』は無理で、動植物にすらなれない。
 なら、どうなる?

 『微生物からやり直しです』
 おお、生物としての原初からリスタートか。

 「次に生まれて来るときは真人間になるんだよ」
 こちらも無垢な心で語りかけた。
 いつになるか知らんけど。

 「あれ? この状態でも生きられる?」
 『普通なら不可能ですね。ですが、この場に限定するなら問題ありません。『ソウルポイント』はもう取れませんが、『マナポイント』は取り続けることが可能です』
 「なら、このままだな」
 魔力供給の機能は残るのだ。
 それなら、役に立ってくれるだろう。

 それはそうとして。
 『転生時と同じ』か。

 「詳しいんだね?」
 転生に。

 「いいえ!」
 なんか激しく否定された。
 感情的になった?
 
 「でも詳しいよね?」
 「お答えできません」
 今度は取り澄まして流された。

 追及はムダらしい。
 今は諦めよう。

 白くなった魂は、もう誰かの名前を思い出すことはない。
 それは、かつて誰かに呼ばれた声が、静かに消えていくということだ。

 ともかく、機能に支障はないわけだ。
 白くなった魂は、もう苦しまない=『ソウルポイント』は手に入らない。
 でも、『マナポイント』は今後も手に入る。

 機能を残しているものならば活用する。
 それが、ダンジョンの流儀だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...