『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

文字の大きさ
81 / 327
全年齢対応・表現マイルドバージョン

第80話 妖怪制作 七人みさき

しおりを挟む
 

 役目を持って出ていた『霞』。
 一仕事終えて帰ってきた彼女に、カルマは『おかえり』と言った。
 カルマの側にいた妖怪たちも、ちょっと戸惑ったように『おかえり』と口にする。

 「・・・ただいま」
 『かすみ』が答えてくれて、風が柔らかくなった。

 たったそれだけのこと。
 それでも、きっと大きなことだった。
 少なくとも、妖怪たちの『カルマ』を見る目は優しさの度合いを深めている。



 「がんばっているな」
 残戦力――ラストチームの快進撃を、カルマは見ていた。

 「決戦は69階層の最奥としようか」
 「わざわざ待つのには、何か理由があるの?」
 『河童』仁科悠が問いかける。
 沢辺みどりとなってから、少しだけ、心の距離が近づいていた。

 「アイテムを消費させたい。魔力もね」
 中級モンスターとの戦闘で、徐々にアイテムが減っていく。
 アイテム整理をさせられていたことから、彼らの保持アイテムの種類や数はカルマが把握していた。
 魔力の減り方や残量なら、カルマは本人たち以上に熟知している。

 「我が校の最高戦力だ。腐っているとしても、侮るわけにはいかない」
 最大限弱くしてから、終わりを強制する。

 カルマの意志は固く冷徹で、苛烈。容赦がなかった。
 冷静に、できることを全て実行したうえで、確実に仕留める。
 その気迫に妖怪たちは息を呑み、押し黙った。

 カルマがため込んでいた怒り、憎しみ、そして、哀しみ、その深さを思い知らされている。
 それは、妖怪となった彼女たちにとっても他人事ではない。

 「途中で休憩も入れるだろうし、数時間は先のことになる。待っている間、手に入れた『素材』で仲間を増やしておこうか」
 何気ない一言。
 だけど・・・。

 「・・・はい」
 悠の返事に、わずかな間があった。
 その言葉が、空気を少しだけ柔らかくした。

 それはカルマが『モンスター』を『仲間』と表した最初だった。
 カルマの中で、抑圧され、凝縮され、硬く、巨大に育っていた『ナニカ』がわずかにではあるが、解け始めた。

 そんな、『兆し』だったかもしれない。
 本人に自覚はなかったが・・・。
 
 ◇

 ダンジョンの階層を増やして70階層とした。
 それに伴い、カルマたちは拠点を70階層に移していた。
 『三途川中学校』の校長室という位置づけである。

 そこに、シデムシたちによって『素材』が続々と運び込まれていた。
 今回カルマが使おうとしているのは、そのうちの『一山』だ。

 後詰C班。『マップ埋め係』である。
 生きたまま連れ出すことができず、その場で死亡した者たちだ。

 「『レア』ではなく、通常モンスだな」
 最高でもAランク。
 ネームドのSランク以上にはならない・しないという意味だ。

 「シデムシさんたちの上位互換とする」
 『学園祭』がテーマで、『妖怪』が属性のダンジョンだ。
 シデムシさんが活躍しているのは、おかしいだろうということ。

 採取が得意だった彼女たちだ。
 『素材』集めも頑張ってくれるものと思う。
 彼女たちの存在の残り香を、システムに取り込ませ、モンスターとして再構築していく。
 
      ◇妖怪化(後詰C班視点)◇

 ──静寂の中、魂は目を開ける。
 肉体はもうない。
 でも、『自分』はまだここにいる。

「・・・これって、夢?」
「そうかも。だって、痛みがない」
「でも、寒い。空気が、冷たい」

 空気——彼女たちを取り巻く異質な空間――が、彼女たちの記憶を撫でる。
 再構築の作用が、彼女たちの心を静かに変えていく。

「私たち、死んだんだよね」
「うん。でも、終わってない」
「だって、見えるもん。自分たちの姿が」

 ──肉体が、再構成されていく。
 制服が、色褪せていく。
 髪が、風に溶けるように揺れる。
 目が、光を失い、代わりに『何か』を宿す。

『システム』の働きにより、魂の保持者たちにも『何が』起きているかは知らされていた。
『復活』でも『再生』でも、ましてや『蘇生』でもない。
『再構築』、『再定義』、そして『再誕』。
 彼女たちはいま、生まれ変わる。

「これが、妖怪になるってこと?」
「でも、私たちの中身は変わってないよね?」
「・・・ほんとに?」

 ──『役割』が与えられる。
 先導、囁き、守護、斬撃、囮、癒し。
 そして、空位。

「名前がある。役割がある。じゃあ、私たちは『誰か』になるんだ」
「でも、それって『私』じゃないかもしれない」
「・・・それでも、消えるよりはいいのかな」

 記憶が、彼女たちの頬を撫でる。
 このまま、ただ終わるのかと問いかけている。

 感情が、胸の奥で小さく鳴る。
 まだ生きていたい、生きていた世界が、共に生きた人たちが、どうなるのかを見届けたい。

「ねえ、大人になる前に死ぬかもっては思っていたよね?」
「うん。でも、こんなことがあり得るって、誰も教えてくれなかった」
「でも、もう戻れない。だったら──」

 ──魂は、肉体に戻る。
 それは、かつての自分とは違う『器』。
 でも、記憶が残っている。
 感情が、脈打っている。

「だったら、せめて綺麗に動こう? 名前があった頃の自分が、羨むくらい綺麗に。前の自分が、恥じるくらい。今度こそ、誰かの隣に立てるように」
 今度こそ、自分に正直に。
 嫌なことには抗う者でいたい。

「誰かの記憶に残るように」
 今度は、忘れ去られる名無しにはならない。

「七人目を探す、その旅が、私たちの『生』になるのなら」
 今度こそ、全うしたい。

 彼女たちが、現実を受け入れたとき、『システム』の声が流れた。
 彼女たちには『役割』と『名前』が与えられる。

 ──『能力』が、囁く。

「あなたは、先導」
 一影は、目を閉じる。
 かつて、『お宝』を探していた目と耳が、『素材』探しに使われる。

「道を探すのは、かわらない。探すモノが少し変わるだけ」
 彼女は、通路の先に耳を澄ませる。
『探知』が、彼女の足を導く。

 ──『立場』が、鳴る。

「あなたは、囁き」
 二影は、口を閉じたまま、声なき声を響かせる。
 かつて、冗談を言って場を和ませ、厳しいことを言って叱咤していた彼女。
 今は、敵の心に『迷い』を植えつける。

  「言葉はもういらない。ただ、揺らせばいい」
 仲間たちの精神的支柱だった彼女が、今度は敵の支柱を折りに行く。

 ──盾が、立つ。

「あなたは、守護」
 三影は、腕を広げる。
 かつて、仲間の盾となっていた彼女。
 今は、六影を守る殻となる。

「痛みは、私が受ける。それが、私の意味」
 守りの意志が、ダンジョン内に眠る『守護』の素材を見つけ出す。

 ──剣が、裂く。

「あなたは、斬撃」
 四影は、剣を握る。
 かつて、誰よりも早く敵に飛び込んでいた彼女。
 今は、影の刃となって敵を断つ。

「切ることが、私の言葉。それでいい」
 敵を斬る意思が、『武器系素材』を見つけ出す。

 ──風が、揺れる。
「あなたは、囮」
 五影は、笑う。
 かつて、敵の注意を引き、回避することで仲間を守った彼女。
 今は、敵の目を引き、仲間を守る。

「見られるのは慣れてる。でも今は、見せるために立つ」
 風が、彼女の髪を揺らす。
 敵の魔力は、彼女を無視できない。

 ──杖が、灯る。

「あなたは、癒し」
 六影は、手を差し出す。
 かつて、誰かの傷と痛みを気にしていた彼女。
 今は、影の中で痛みを和らげる。

「触れることが怖かった。でも、今は違う」
 癒しの力が、彼女の胸に灯る。
『薬品・治癒素材の採取』。

 ──闇が、沈黙する。
「あなたは、空位」
 七影は、まだいない。
 彼女たちは、探し続ける。

 誰かが『ここにいたい』と願った瞬間、七影は生まれる。
 それは、誰かの祈りかもしれない。誰かの涙かもしれない。
 それは、誰かの死かもしれないし、誰かの喪失かもしれない。

 ──迷廻七影、誕生。
 魂は、影に乗って歩き出す。
 影は、彼女たちの足元に連れ添う。

 そして、彼女たちはもう『人間』ではない。
 でも、『誰かの隣』にいたいという願いだけは、まだ残っていた。

    ◇

 「完成だ」
 七人と言いながら6人しかいない。

 七人目を求めてダンジョンを彷徨い続けている・・・設定だ。
 学園祭風に言うと・・・美化係?
 校内を回って掃除をするイメージ。
 
 「掃除する一番の対象は『お客様』だけどね」
 カルマは、微笑んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

処理中です...