『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

文字の大きさ
133 / 327
レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第15話 末路① ~音の消えた闇~

しおりを挟む
  

 64階層を進む主力の様子を確認し終えたカルマは、すかさず63階層に居座る者たちの排除に動いた。
 排除とはいうが、命を奪ってしまえばいいともいかない。
『ダンジョンレベル』を上げなくてはならないのだ。

 まずは、騒ぎを起こして『マナポイント』を貯めたい。
 魔力を存分に使っていただく必要があった。
 そのためには工夫が必要となる。

  ◇

「退屈ね」
 女性戦士が、頬杖をついて呟いた。

 だだっ広い空間である63階層。
 安全地帯にありながら、しっかりと組まれた野営陣地の片隅だ。
 手近の石に座り、上へと向かって伸びる穴を見ている。
 肘は膝にあり、とてもお行儀がいいとは言えない。

 「必要なことでしょ」
 女性剣士が、長剣の刀身を拭う傍ら、面倒そうに答えた。

 彼女たちは『見張り』だった。
 63階層の入り口に拠点を構え、万一にも上の階層からモンスターが下りてこないか警戒するのが役目である。

 『入口の』見張りは全員で18。
 4人パーティが2組、5人パーティが2組だ。
 
 彼女たちは女性ばかり四人でパーティを組んでいる。
 残りのメンバーは回復役と魔法使いだ。
 
 その二人は、後方で瞑想中。
 他の見張りは仮眠中だった。
 6時間ごとのローテーションで役目に従事している。

 この見張りが、カルマのしようとしていることには邪魔だった。
 62階層からのモンスターの出入りを監視されるわけにはいかないのだ。
 

 さて、ここで確認をしよう。
 この『ダンジョン』は『蟲』系統を表題としている。

 『蟲』すなわち『虫』の持つ『コワさ』とは何か?

 むろん、これにはいろいろとある。
 固い外骨格だったり、強靭な筋組織だったり。
 空を飛び、地を這い、水の中でも生息する環境適応力もしかりだ。

 しかし、ここでいう『コワさ』で言えば、それらはすべて的外れである。

 『虫』の本来あるべき『コワさ』とは・・・。
 その小ささと、なによりも『数の暴虐』である。

 わかりやすい例を挙げればスズメバチの大群だろう。
 数百、数千の群れが一斉に周囲を取り囲んできたとき、人間になにができる?
 
 なにかに隠れるか?
 わずか数センチの隙間でもあれば入ってこられるのに?
 
 車に逃げ込んだとしても、エンジン部の下から入り込まれればエアコンの吹き出し口から顔を出すぞ?
 家の部屋まで逃げ切るか?
 あんなに早く飛べるものを振り払って走る脚力があるとでも?
 逃げ込めたとしてもエアコンや換気扇の隙間から必ず侵入してくるぞ?

 戦う?
 相手からは一刺しされれば終わりで、こちらは全部倒さない限り安全ではないのに?

 『虫』の『コワさ』それは、『小ささと数』。
 ここでも、それはいかんなく発揮されることとなる。
 
『虫』の本当の恐怖とは──見えないこと。
 止まらないこと。
 どこにでもいること。

 一匹なら、ただの異物。
 百匹なら、ただの不快。

 だが、千匹を超えたとき、それは『災厄』に変わる。


 「ねぇ、なんか変じゃない?」
 疑問を呈したのは、瞑想から戻った回復役だった。
 視線が『見張り』の男性陣用テントに向けられている。
 
 「どこがよ? 静かでいいじゃない?」
 不思議そうに魔法使いが首を傾げた。

 「え?」
 「あら?」
 途端に、戦士と剣士が顔を見合わせた。

 「確かに」
 「変ね」
 頷き合う。

 「な、何がよ?」
 自分だけが『変』と思っていないと知り、魔法使いがおどおどとする。

 「いびきが」
 「はぎしりが」
 「聞こえてこないのよ」
 3人の視線が、同時にテントへと向かう。

 そこは、いつもならうるさいほどの『生活音』が漏れているはずの場所。

 今は──何も聞こえない。

 風の音すら、遠ざかっていた。

 「ああ」
 そういえば、と頬に手を当てる魔法使い。

 見張り18人中12人が男子だ。
 12人も仮眠をとっているにしては静かすぎる。

 とはいえ・・・。
 
 「男子が寝てるテントを覗く?」
 回復役が、困ったように問いを投げる。

 気になるのは確かだ。
 解決法も簡単。
 だけど、それをやるのには抵抗がある。

 「・・・あの子ら、にやらせましょう」
 少し考えた戦士が、親指で反対側、女子用のテントを示した。

 ああ。
 全員が、声を合わせて頷いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...