『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第39話 63階層の戦い 決着編 ~最後の一撃~ 前編

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 戦いの帰趨は決した──そう思ったのも束の間。  
 人間側は、しぶとく戦線を持ち直していた。

 「ああ。谷垣涼香か」
 筋肉質な大剣使い。  
 戦術面では脆いが、彼女には災害級のスキルがある。

『扇動者』。  

 劣勢下で混乱した味方を強制的にバーサーカー化させる凶悪な能力。  
 使用禁止とされていたが、今は誰も止められない。

 誘導された者は、いわゆるバーサーカー状態となり戦力が上がる半面、物を考えられなくなってただひたすら暴れることになる。
 あまりに強力であるため、使用を禁止されたスキルだが・・・。
 
「クソ! バカにできんな」
 ものすごい勢いで、モンスターがやられていく。

 誘導された者たちは、もはや人間ではなかった。

 右腕が吹き飛んだ剣士が、血を撒き散らしながら左腕だけで剣を振るう。
 いや、剣が折れた後は、そのまま拳で殴りかかっていた。

 魔法を誤爆し、両腕を失った女魔法使いがいる。
 オニヤンマにのど元を狙われながら、逆に口を開けて噛みつこうとしていた。

 叫び声も、悲鳴もない。
 あるのは、ただ『殺す』という衝動だけ。

 それは、もはや戦術ではなかった。

 ただの暴力。
 ただの執念。

 だが、それが強い。
 モンスターたちが、次々と押し潰されていく。

「・・・狂ってやがる」

 それでも、止められない。
 いや、止める者がもういないのだ。

 あとは少しずつ削るだけ。
 そんな消化試合になるかと思っていたのに、しのがれてしまいそうだ。
 
 つまり、戦力が途切れそうってこと。
 作ればいいって言えば、そうなのだがここはレベルアップを優先したい。
 新たに『戦力』を作るとなると『ダンジョンポイント』の消費が大きすぎるのだ。

 「もう一度、レベルアップだ」
 『無限魔力』のゴリ押しで、50へと到達させる。
 魔力生産器が増えているおかげで、蓄積はそこそこあった。
 そこへ上乗せすれば・・・。

 「『ダンジョンレベル』が50となりました。レベル50までのモンスターを作成可能です。また、このレベル帯のモンスターの配置位置を変更できます』
 システムの声が頭に響く中、50階層までの全モンスターを63階層へ再配置。
 戦線へ投入する。

 それだけではない。
 50階層以降となれば、63階層まで13階層。
 自力で移動させても、それまでの距離だ。
 
 「50から62までの全モンスターに63階層への移動を指示する!」
 配置変更での召喚ではなく、階段を使っての物理移動だ。
 50までのモンスターがやられたら、即戦線に出せるよう63階層入り口周辺で待機させておく。

 50階層までのモンスター。
 主力は『ヒラタクワガタ』、『コカブトムシ』、『カナブン』、『オオスズメバチ』となる。
 
 全体的に機動重視の軽量タイプが揃っている布陣だ。
 これで引っ搔き回して、さらなる戦力の抜き取りを行う。

 もう一息で、敵陣地の『人間』は50を切る。
 そうなれば、最後の戦力である50から62までのモンスターで片付けられるはずだ。
 魔力も体力も、もうそろそろ底をつくだろう。

 50から62までのモンスターは、『カブトムシ』、『オオクワガタ』、『アゲハチョウ』。
 そして、最終戦力62階層ボスの『大百足』と重量級が揃っている。
 畳み掛けられるはずだ。

 だが、カルマは気づく。  
「アゲハチョウなんていたか?」
 トンボはときおり見かけることもあったが、チョウの類は見たことがない。
 
 システムが答える。  
『いましたよ。63階層のボスですから。職務放棄していただけで』

 『いましたよ。63階層のボスですから。職務放棄していただけで』
 システムさんがなんてことないように教えてくれた。
 
 いや、それ『いた』って言わないだろ?!

 「そもそも、職務放棄ってなに?! モンスターだよね?!」
 『ダンジョン』——盤上——のコマに自我があるとでもいうのか?!
 そう思って気付く、そういえばこの『システム』もたいがい人間臭い。

 『ダンジョンのサブマスターです。モンスター扱いですが、思考力を持っています』
 サブマスもいたのかー。

 「先代の『ダンマス』が作っていたのか」
 『いいえ。ダンジョン起動時にデフォルトでマスターとサブマスターは一体ずつ付属されています。どちらかが、どちらかを作るという関係性ではありません』
 作られたわけではないと。
 なら、敵討ちとかされたりはしないかな。

 『起動』とか『付属』という単語は、気が付かないふりで流した。

 「呼べるかな? 一度話しておきたいんだけど?」
 『呼べます』
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