KAKIDAMISHI -The Ultimate Karate Battle-

ジェド

文字の大きさ
5 / 131
第一章 初戦

第一章 初戦 3

しおりを挟む
「ああ、確かに世知辛い世の中だ」

守央と呼ばれた黒髪の男は、さんぴん茶を飲み干して茶碗を目の前に置く。

「さて、世璋せいしょう。そろそろくか」

「おう」

世璋と呼ばれた暗褐色の髪の男は、守央と共に立ち上がった。

すると突然、外から陶器が割れるような音に続いて男の怒鳴り声が聞こえてくる。

「おい! 何しやがんだ、このガキ!」

それに気づいた守央と世璋は、他の客たちと共に茶屋の出入り口の方に目を向けた。

「なんだ?」

「揉め事みてぇだな。行ってみようぜ」

「ああ」

守央と世璋は土間で草鞋を履き、他の客たちと共に外へ出ると、茶屋の出入り口に面した通りで人だかりを目の当たりにする。

「随分と人が集まってるな」

「ここだとよく見えねぇし、もうちょっとまえに行ってみねぇか?」

世璋が群衆の隙間から通りの様子を覗こうとしていると、そこへ2人の少年がやって来た。

少年の一人は少し体格が小さく、短い黒髪と大きな三白眼が快活さを感じさせ、赤い上衣と同色の細帯、白い長ズボン状の琉球袴を身に着けている。

「父上、世璋さん!」

一方、もう一人の少年は少し背が高く、短い黒髪と大きく穏やかな目が印象的で、青い上衣と同色の細帯、白い長ズボン状の琉球袴を身に着けていた。

「どうされたんですか、こんな所で?」

2人の少年に話し掛けられると、世璋と守央はそちらを振り向く。

「おう、守優しゅう守善しゅぜんじゃねぇか。奇遇だな」

「俺たちは仕事の合間に一息ついてたところだったんだが……2人ふたりこそ、東村まで来るなんて珍しいな」

守央がそう言うと、守優と呼ばれた少し小柄な少年は苦笑いを浮かべた。

「#今日__きょう__は兄上と一緒に闘鶏を見に行ってたんですけど、帰る途中ここを通ったら揉め事を見かけたんで、つい気になって……」

さらに、守善と呼ばれた少し背の高い少年も、守優に続いて口を開く。

「僕たちも今来たばかりなので詳しいことはわからないんですが、どうも割れた壺が原因でいざこざになってるみたいなんです」

守善の言葉を聞くと、守央と世璋は眉をひそめた。

「壺?」

「そいつは確かに気になるな。どれ、俺たちも見させてもらうとするか」

世璋たち4人は人混みの中へと分け入り、通りの様子に目を向ける。

通りでは、がっちりとした体格の髭面の男と幼い小柄な少年が、地面に置かれた深緑色の大きな風呂敷を挟んで対峙していた。

髭面の男は黒髪を頭頂部でカタカシラに結っており、萱草色かんぞういろの着物と同色の細帯を身に着けている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...