デスらば! ~かわいい死神少女が言い寄ってくるけど、OKしたらオレ、即死亡らしい~

夏のスイカ太郎

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エピソード1 タイムリミットは44週

12、友達から始めましょう

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 翌日の朝は、雲一つない快晴の空だった。

桔平はいつもと同じように学校への道を歩いていた。

 基本的に一人で登校するのが桔平の日課だったのだけど、この日は違っていた。

 隣には、古河岸高校の制服姿のリムルの姿があった。

「だけど本当に良かったです。わたしの消滅刑が取り消しになって」

 改めて、リムルが自分の幸運を噛み締める。

「なあ、オレ昨日から疑問に思ってたんだけどさ。あの、カテジナって死神」

「カテジナちゃんですよ。そう呼ばないと怒られちゃいます」

 ピンチを救ってくれたこともあり、すっかりカテジナに親近感を覚えてしまったようだ。

 苦笑しつつ、桔平は訂正する。

「カテジナちゃんって死神、何者なんだ? 
収拾課ってのはそんなにすごい部署なのか?」

「そこなんですよね。わたしも少し不思議に思ったんですよ」

 リムルもう~むと考え込む。

「収拾課は、死神界の秘密が人間に知られてしまった時に動く課なんです。主な任務は死神魔術で秘密を知ってしまった人間の記憶を封じることです。でも、一度下された監査室の決定を覆すような権限を持ってるはずがないんですけどね」

 しばし悩むリムルだけど、すぐにニッコリと微笑む。

「まあでも、細かいことはいいじゃないですか。きっとカテジナちゃんが独自のツテか何かを持ってたんですよ。うん、きっとそうです」

 リムルは能天気に納得してしまう。

 死神であるリムルが知らないことを桔平がいくら考えても分かるはずがない。釈然としない部分もあるも納得するしかなかった。

 それに、カテジナの登場がなければリムルはおそらく目の前でヘルハウンドに食べられてしまっていただろう。そんな光景を見ずにすんだことは純粋にありがたかった。

「とにかく、消滅刑も解除されたんです。わたしは刈り取り任務を続けることができます! 桔平さん、覚悟しちゃってくださいね! いつか絶対必ず、桔平さんの魂を刈り取っちゃいますから!」
 リムルの死神らしい言葉に、桔平は苦笑する。かつてのような嫌悪感はもう湧いてこなかった。

 おそらく、こういったリムルのまっすぐさに多少なりとも好感を覚えているのだろうと桔平は思った。

 でも、だからと言って彼女にするかと言ったらそれはとんでもない話だ。

 この年で人生を終わらせるつもりなんて、桔平にはサラサラない。

「リムル、これだけはハッキリ言っておくぞ」

 そんな前置きをし、桔平は宣言した。

「お前が何をしようと、オレがお前を彼女として認めることはない。絶対にだ。執行期限とやらが終わったらお前は手ぶらで死神界に帰るんだ」

「それは無理なお話ですよ。だって、刈り取りを行えないまま期限を迎えてしまった死神はその場で…」

 何かを言いかけたリムルだけど、その口を閉じる。

「何だよ?」

「何でもありません」

 すぐにまたいつもの笑顔に戻った。

「桔平さんってば強情ですね。だけどそれぐらいじゃないとわたしも面白くありません、俄然ファイトが湧いてきました!」

 リムルは拳を握りしめる。

「まだあと44週もあるんです! わたし、絶対に諦めませんから!」


「さあ、どーぞどーぞ」

 朝から続く快晴の空の下、リムルは自慢気に重箱の蓋を開く。ぎっちりと詰められたごちそうに、隼人とこずえが感動の息を漏らす。

「うわっ、昨日にも増してうまそうだな」

「アタシもう我慢できない!」

 遠慮なんて言葉をどこかに置き忘れてきてしまったような二人は、渡された割り箸を弁当へと伸ばす。

「う、うまい」

「こんなのがこれから毎日食べられるなんて…アタシ超幸せ!!!」

 時は昼休み、古河岸高校の屋上だった。

 桔平、海人、こずえといういつもの集まりに、ごくごく自然にリムルが加わってしまっている。

「あ、そうそう。言い忘れてたわ」

 おかずを頬張りつつ、行儀悪くこずえが言う。

「桔平、璃夢瑠っち。カップル成立おめでと~」

「えっ、そんな風に見えちゃいますか? 嬉しいです」

 喜ぶリムルの隣で桔平が吠えた。

「馬鹿、違うよ! 別に付き合い始めたわけじゃない!」

「えっ!? そうなの」

 こずえがキョトンとした顔になる。

「桔平が普通に璃夢瑠っち連れて屋上に来たからアタシてっきり」

「勝手な想像をするなって。そんなんじゃないんだ。ただ…」

 口をモゴモゴと動かしてから、ぶっきらぼうに呟く。

「友達に…なったってだけだよ」

「そうか、俺のアドバイスを実行してくれたってことか。嬉しいぜ」

上機嫌な様子で海人が言う。

「それに、これでお前も命拾いしたってことだしな」

「えっ!?」

 命という言葉に、桔平は過敏に反応する。

(海斗の奴、ひょっとしてオレの置かれた状況を知ってるんじゃ?)

 だけど、考えすぎだなと失笑する。もし本当に知っていたならば、リムルとの仲が進展することは決して『命拾い』なんかではないからだ。

「で、命拾いってどういうこと?」

 改めて尋ねる桔平に、海斗は説明をした。

「いや昨日お前があんまりにも璃夢瑠ちゃんを邪険にするもんだから、クラスの男子達が怒り狂ってたんだ。朝の、彼女になる宣言のこともあって、お前に対する敵意が燃え上がり、『今市桔平抹殺計画』まで囁かれてたとこなんだぜ。とりあえずお前が璃夢瑠ちゃんに冷たく当たらなくなったから最悪の事態は免れたよ」

 クラスの男子達の怒りのエネルギーに、桔平はややゾッとした。

 ついでに、男子達の心の狭さにもゲンナリだった。

「ま、昨日の言ったように。友達から仲を進展させてけばいいよ。もっとも、案外早くカップル成立になるような気もしないでもないけど」

「リムルはあくまで友達、それ以上にはなるつもりはない!」

 桔平はキッパリと言い切った。

「桔平、あんた何様のつもりよ。璃夢瑠っちほど魅力的な女の子そうそういないわよ」

 こずえが桔平を非難する。

「まず、こんなにも料理が上手じゃない!」

 とにもかくにもこずえが最初に推すのはそのポイントだった。

「それに、いつもニコニコして明るい性格だしな」

 海斗が続く。

「J組でだって話題になるぐらい可愛いのよ!」

「第一に、桔平に対して一途だしな」

 最後、二人は同時に呟いた。

「もったいないわ!」

「もったいないぜ」

(こいつら、人の事情も知らないで好き勝手いいやがって)

 一から説明したい衝動にかられるも、思いとどまる。そんなことをしたってどうせ信じてもらえない。それに、カテジナにも釘を刺されている。話したら最後、命を奪うと。

「放っといてくれよ」

 憮然として言うと、桔平は弁当に入っていた俵型のハンバーグを手づかみし口に放り込む。中にうずらのゆで卵が入ったハンバーグ。言うまでもなく桔平の大好物だった。

(う…うまい…)

 昨晩はリムルの申し出を断っていたら、彼女の手料理を食べたのはこれが初めてということになる。

(確かに料理は上手みたいだな。いつもニコニコして前向きだし、可愛いし、オレのことステキだって思ってくれてるし、本気でオレのこと好きなる自信があるとまで言ってくれたし…)

 隣のリムルをチラリと見る。それに気づきリムルがニッコリと微笑んだ。少しだけ胸がドキドキした。

(ああ、オレが特待死者なんかじゃなくて、こいつが死神でなかったら………オレは…すぐにでも…)

 そこで桔平はハッとする。

(オ、オレは今何を考えてたんだ! これは危険だ! 危険な思考だぞ!)

 強く首を振り、桔平は自分を戒めた。
 そして、改めて決意を固め直したのだった。

(こいつは死神、人間じゃない、オレはこいつを本気の本気で好きになったりしない、ましてや彼女になんてしないからな!)
 って。


 特待死者 今市桔平の死の執行期限まで
残り44週。
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