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4章 人生おしまい……回避?
73話 逃避行
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「はぁっ……はぁっ……! 白鳥ちゃん、腕大丈夫!?」
「え、ええっ、黒木さん、軽いから! ……でもなんで私たち、追いかけられてるんですか!?」
「なっ、ぞっ、みっ……にゅっ……!?」
「とりあえず黒木さんはしゃべらない方がいいよ、舌噛んじゃうよ」
ただでさえHPが心許ないんだ、自分でベロ噛んで自爆とかありえるよ?
こういうのには多少慣れてる僕とは違って、すっかり息の上がってる2人と併走しながら、交差点のたびに道を指示する。
……後ろから追われてるのに、この子たち、よくパニックにならないで言うこと聞いて走ってくれるね。
やっぱり君たちは、賢くて良い子だ。
「ふっふっ……白鳥さん。 あの痴漢してきたおじさんのこと、覚えてる?」
「はぁっ、はぁっ……え? え、ええ……怖かったからあまりはっきりとは……」
「そっか。 なら、分からないのもしょうがないかぁ」
まぁそうだよねぇ、あのとき彼をはっきり見ていたのは挙動不審の大学生の彼と僕で、白鳥さんは近くの女の人たちに預けたからね。
「はっはっ……その人がどうしたの?」
「紅林さんも黒木さんも、その人とは直接面識は無い。 ――けども」
夕暮れを過ぎた――まだそこそこの繁華街から抜けきっていない道を、女子高生としては全力に近い速度で走る僕たちを見て、ぎょっとしつつも道を空けてくれる人たち。
こういうとき、女の子ってだけで警戒心が薄くなってくれるのは助かるね。
全力で走ってても、まず最初はほぼ必ず「あの子たち、追いかけられてるのかも」って発想になるから。
これが男だと「ふざけてるのか」とか「不良か」とか「悪いことして逃げてるのか」ってなるからね。
男女差別反対。
……いやまぁ見た目もそうだけども、女子は男より身長と体重がひとまわり違うから、走ってこられてもそんなに恐くないってのもあるんだろうけども。
まぁね、女子高生が走ってきてかつあげとか暴力ってまずないからね。
それで――この状況だけども。
「ごめん。 僕、恨まれてたっぽい。 あのおじさんのターゲットは――僕だ」
「え、なんで」
「で、でも、それなら私のことを……」
「どうやらそうじゃないらしいね。 今日、紅林さんと別れてから着替えて、君たちのところに向かってたときに――」
振り返ると、まだ遠くだけども煙幕を抜け出した男たちが、追いかけてきている。
「おら、待ちやがれ!」
「しばくぞアマァ!!」
怒号。
足音。
平和な町並みに、あり得ない音が響く。
「ひぃっ……!」
「大丈夫、まだ遠いよ。 ……でさ、あのおじさん――居たんだよね。 さっきの駅前に」
「……マジで?」
「うん、まじまじ。 で、どうやら僕のこと観察してたみたいでさ――君たちも巻き込んで、誘拐しようとしてたんだ」
おじさんを駅員さんたちや有志のリーマンたちに任せたあとのことを、ちらりと聞いたときに知った。
彼は、前科がかなりあるらしい。
つまりは札付きのワル。
更生できないタイプの人。
だから、痴漢冤罪とかはないだろうし悪質だからって、僕たちの証言が全面的に信用されて問答無用でしょっ引かれたらしい。
だから僕も、そんなに悪いやつなら気にしなくて良いよねって忘れてたんだ。
――だけど、前科があるとは言え痴漢は痴漢だ、そんなに重い罪じゃない。
しかも、白鳥さんに聞いたところ、ほんの1分程度――まだ「品定め」の段階で僕たちに捕まったんだってことだし。
そうじゃなかったら僕も、こんなにあっさりと忘れなかったし、白鳥さんもこんなにすぐ元気になれなかっただろう。
それは良かった。
良かったんだけども……。
白鳥さんの家の人と示談が成立したのかとかは聞いてないけども、あの程度で刑務所行きもないだろうし、仮にそうでもずっと出てこられないとかはないだろうってのはなんとなく思っていた。
けども。
「ごめん、あの人がこんなに悪い人で、しかもしつこいとは思わなかったんだ。 思ってたらもっと穏便な方法で白鳥さんを救出したし、その後も身辺に気をつけられたはずなんだ」
「……まさか」
「うげ、逆恨み?」
「そ、そんなの……」
「紅林さん。 僕、前に言ったよね。 人を、怒らせちゃいけないって」
「……うん。 あたしが男たちに捕まったときに」
「それを言った僕が、どうやら彼の逆鱗に触れちゃったっぽいんだ。 ……本当にごめん」
「アキノちゃん……」
僕は、今世で1番に後悔している。
そう――恨みは、買うもんじゃない。
よっぽどの不可避で理不尽なそれ以外は、回避すべきだ。
この平和な国での切った張ったのほとんどが怨恨なんだから。
げに恐ろしきは、人の世。
ああ。
『……女子からの恨みで刺されそうになった貴様が言うのか』
『これこそ「おまいう」ッス』
『馬鹿は死んでも治らない……魂が、汚れている』
「え、ええっ、黒木さん、軽いから! ……でもなんで私たち、追いかけられてるんですか!?」
「なっ、ぞっ、みっ……にゅっ……!?」
「とりあえず黒木さんはしゃべらない方がいいよ、舌噛んじゃうよ」
ただでさえHPが心許ないんだ、自分でベロ噛んで自爆とかありえるよ?
こういうのには多少慣れてる僕とは違って、すっかり息の上がってる2人と併走しながら、交差点のたびに道を指示する。
……後ろから追われてるのに、この子たち、よくパニックにならないで言うこと聞いて走ってくれるね。
やっぱり君たちは、賢くて良い子だ。
「ふっふっ……白鳥さん。 あの痴漢してきたおじさんのこと、覚えてる?」
「はぁっ、はぁっ……え? え、ええ……怖かったからあまりはっきりとは……」
「そっか。 なら、分からないのもしょうがないかぁ」
まぁそうだよねぇ、あのとき彼をはっきり見ていたのは挙動不審の大学生の彼と僕で、白鳥さんは近くの女の人たちに預けたからね。
「はっはっ……その人がどうしたの?」
「紅林さんも黒木さんも、その人とは直接面識は無い。 ――けども」
夕暮れを過ぎた――まだそこそこの繁華街から抜けきっていない道を、女子高生としては全力に近い速度で走る僕たちを見て、ぎょっとしつつも道を空けてくれる人たち。
こういうとき、女の子ってだけで警戒心が薄くなってくれるのは助かるね。
全力で走ってても、まず最初はほぼ必ず「あの子たち、追いかけられてるのかも」って発想になるから。
これが男だと「ふざけてるのか」とか「不良か」とか「悪いことして逃げてるのか」ってなるからね。
男女差別反対。
……いやまぁ見た目もそうだけども、女子は男より身長と体重がひとまわり違うから、走ってこられてもそんなに恐くないってのもあるんだろうけども。
まぁね、女子高生が走ってきてかつあげとか暴力ってまずないからね。
それで――この状況だけども。
「ごめん。 僕、恨まれてたっぽい。 あのおじさんのターゲットは――僕だ」
「え、なんで」
「で、でも、それなら私のことを……」
「どうやらそうじゃないらしいね。 今日、紅林さんと別れてから着替えて、君たちのところに向かってたときに――」
振り返ると、まだ遠くだけども煙幕を抜け出した男たちが、追いかけてきている。
「おら、待ちやがれ!」
「しばくぞアマァ!!」
怒号。
足音。
平和な町並みに、あり得ない音が響く。
「ひぃっ……!」
「大丈夫、まだ遠いよ。 ……でさ、あのおじさん――居たんだよね。 さっきの駅前に」
「……マジで?」
「うん、まじまじ。 で、どうやら僕のこと観察してたみたいでさ――君たちも巻き込んで、誘拐しようとしてたんだ」
おじさんを駅員さんたちや有志のリーマンたちに任せたあとのことを、ちらりと聞いたときに知った。
彼は、前科がかなりあるらしい。
つまりは札付きのワル。
更生できないタイプの人。
だから、痴漢冤罪とかはないだろうし悪質だからって、僕たちの証言が全面的に信用されて問答無用でしょっ引かれたらしい。
だから僕も、そんなに悪いやつなら気にしなくて良いよねって忘れてたんだ。
――だけど、前科があるとは言え痴漢は痴漢だ、そんなに重い罪じゃない。
しかも、白鳥さんに聞いたところ、ほんの1分程度――まだ「品定め」の段階で僕たちに捕まったんだってことだし。
そうじゃなかったら僕も、こんなにあっさりと忘れなかったし、白鳥さんもこんなにすぐ元気になれなかっただろう。
それは良かった。
良かったんだけども……。
白鳥さんの家の人と示談が成立したのかとかは聞いてないけども、あの程度で刑務所行きもないだろうし、仮にそうでもずっと出てこられないとかはないだろうってのはなんとなく思っていた。
けども。
「ごめん、あの人がこんなに悪い人で、しかもしつこいとは思わなかったんだ。 思ってたらもっと穏便な方法で白鳥さんを救出したし、その後も身辺に気をつけられたはずなんだ」
「……まさか」
「うげ、逆恨み?」
「そ、そんなの……」
「紅林さん。 僕、前に言ったよね。 人を、怒らせちゃいけないって」
「……うん。 あたしが男たちに捕まったときに」
「それを言った僕が、どうやら彼の逆鱗に触れちゃったっぽいんだ。 ……本当にごめん」
「アキノちゃん……」
僕は、今世で1番に後悔している。
そう――恨みは、買うもんじゃない。
よっぽどの不可避で理不尽なそれ以外は、回避すべきだ。
この平和な国での切った張ったのほとんどが怨恨なんだから。
げに恐ろしきは、人の世。
ああ。
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