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9章 「綾咲こはね」
112話 しめんそか
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「あばばばばば……」
どうして。
「こ、こはねちゃん……?」
なんで。
「……兄さん、もしかして……」
こんなことに……!
「強引に入れた甲斐があったかも……!」
「うん、これは最大級のチャンス……」
「入ってしまった私も私ですが……こ、困りましたねぇ……」
……なんで僕、女子同士の温泉に一緒に入ってるの……?
「あばばばばば……」
そうだよ――優花、ひより先生、はるなさん、みなみさん、如月先生とかいう女子100%に、異物である男――僕が混じってるんじゃん……!
顔が熱い。
体が熱い。
――なんで、どうして。
僕は、なんの疑いも抵抗もなくついてきちゃったんだ……!
「ひぃぃぃぃぃ……」
「いろんな感情が一気に戻ってきた」っていう変な感覚になって、体じゅうがぞわぞわする。
なにこれ、なにこの感覚……!
「……初心な男の子って……良いわよね……」
「出た、はるなちゃんのショタを堕とす夢」
「……退行したときも、強いストレスのせいで……なら、今回は……?」
どうしよう……この空間は全部、女体に支配されている……!
「……こはねさん? のぼせていませんか?」
「ゆ、ゆうかぁ……」
僕は、勇気を出して優花の声のする方へ向き直る。
「!?」
「あっ……ひ、ひよりさんが」
「ひ、ひゃぁぁぁ……」
――それをすぐに後悔した。
……なんでひより先生と並んでるの!?
いや、おかしくはないんだけども……!
ひより先生は背が低い=座高も低いってことで、僕と同じく首元まで浸かっている。
……でも、お湯は透明だから普通に見えちゃったんだけどぉ……?
「 」
「あばばば……はっ!?」
僕は目を急いで閉じる。
「み゛っ!?」
そのせいでまつげが目に入って痛いけども、今は我慢しておく。
「かわいい」
「かわいい……」
「見ちゃったけど見なかったことにするために必死に目を閉じる子って……良いわよねぇ……」
「いい……」
我慢だ、我慢。
体が熱くなってお湯が熱すぎる気がしてきたけども、今は我慢。
「ふ――……」
ひとまず、事態は最悪だけども視界を物理的にゼロにすることで難局は脱出できたはず。
あとは、退路だけだ。
「……!?」
待って?
これ、目をつぶってたら被害無しでの脱出は不可能じゃない?
だって、みんなに囲まれる形になってるもん……確か。
ていうか僕、なんで違和感も疑問も羞恥もなしに、みんなと脱いですっぽんぽんになって……!?
「食べたい……だめ? ちゃんと事後の許可は取るからぁ」
「駄目。こはね様は、そういうのをすっごく気にするタイプ。きちんとした合意がないと、ずっと引きずるタイプだから」
「あーん……」
「温泉と言っても、ただのお湯……あとは女性と入浴が鍵……いえ、優花さんとは……でも彼女は家族で……それとも、好みのプロポーションが……? 交際したことがないと言っていたから、家族以外の女性の裸体が……」
「つまりはどんどん見せつけるってことね、如月ちゃん!」
「はるなちゃん、ステイ、はるなちゃん」
他の3人は楽しそうに何事かを話しているけども、悟られるわけにはいかない。
ていうか、そもそもだけど。
優花は家族だし、もう何回も介抱のために裸を見て見られる関係になってるけども。
いや、それは本当は良くないし、僕だって好きで一緒に入るわけじゃ――
「!? あばばばばば……」
――入ってたじゃん!
何日か前、僕が優花のとこに乱入してぇ!?
僕、変態になってたの!?
妹のおふろに乱入して、洗いっこする変態に!?
「ばばばばばば……」
それに――事情を知らないだろう、はるなさんとみなみさんはともかく……如月先生まで入ってきてるの……?
僕のこと、ちゃんと成人男性だって認識してるはずだよね、先生は……!
ていうか、まずい。
先生までは良いとしても――良くないけども――あの2人とひより先生は、僕のこと男って……あれ?
みんな、僕のことどこまで知ってるんだっけ?
「?」
首をひねってみる。
………………………………。
……分かんなかった。
「……良かった」
「ふぇ?」
あ、変な声出た。
なにもかも、この幼すぎる体が悪いんだ。
「最近の兄さん……様子が少しおかしかったので」
「うん……そうみたいだね……」
「? もしかして……覚えているんですか?」
「うん……全部じゃないけど、たぶん……お酒を呑みすぎた日の記憶みたいにあやふやだけど……」
「お酒……くすっ。深酒は駄目だと言っていますのに」
「その前の話だよぉ……僕がこうなる前の……」
ちらりと目を開けると、ひより先生は視界の隅に移動してくれていた。
良かった……いや、良くないけども……ひとまず視界は確保だ。
「具合の方はどうですか?」
「えーっと……特になにも」
そういやこの温泉、入り口からがらがらで、わずかな従業員の人たちもことごとくが配信の視聴者――の中でも「僕の介護班」とか不名誉すぎる呼び名だっけ――だったよね。
あの人たちが優花を急いで送ってくれたり炎上を防いでくれたりといろいろしてくれているのは知っていて、だから僕たちが出かけた先のここに居るのも――優花も居るんだから不思議はない。
……けど、なんで働いてるの?
臨時って言ってたからバイト?
でもなんで――ああだめだ、まだまだ頭が働かない。
「……こはねちゃんさん」
「なん――――――」
普段通り過ぎる声に、ついうっかり目を向けちゃった先。
「………………………………っ」
浴槽の中で両手両脚をぎゅっとしているから、ぎりぎり危険なところが見えない――や、さっきとか見ちゃってたし、その前まででもばっちり見ちゃってたけども――ひより先生が、僕を真正面から見ている。
「えっと、その……っ」
僕は、覚悟を決めた。
――どんな罵倒でも、吐いたりしないでしっかり受け止めるって。
「――わ、わたしの幼児体型でも興奮できますかっ!」
「でき――――――……えっ」
え、なんだって?
「きゃーっ! きゃーっ!」
「ステイステイ。乙女の覚悟……」
「ここでひよりさんが踏み込むのね……!? も、もうちょっと見てから……」
「……こはねちゃんさんっ!」
「は、はい」
ぎゅーっと体を縮めていた彼女が――ばしゃっ。
両手を水面に上げて――胸元に下腹部が、
「!? か、体! 体隠して!」
「お返事を聞くまでは……か、隠しませんっ!」
「なんでぇ!?」
慌てて優花の方を見て安心しようと試みるも、
「兄さん」
「優花!?」
いつの間にかににじり寄ってきていたらしい優花が――僕の真横でぴたりと体をくっつけ、
「――女の覚悟から、目を逸らしてはいけません」
「ちょっ!?」
――両手で頭を固めてきた。
こ、こうなったら別の方向へ目を逸らせば――
「!?」
「はーい♥ おっぱい見ますぅ?」
「AカップとGカップ……よりどりみどりです……」
「わ、私のような年増で良いのなら……うぅ、恥ずかしい……」
「……!? ……!?!?」
右、左。
なんだかばしゃばしゃやってるって思ってたら――てっきりじゃれ合ってるだけかと思ってたら、まさか、ひより先生の左右が3人で固められている。
「でも、こはねさ――ん、配信で言って……ました。『男は好みもあるけども、基本は雑食なんだ』って」
「こうも言ってたわねぇ。『えっちなのとかはそんなに見ないけど、目に映れば反射的にでも見ちゃって嬉しくなるのが男なんだ』って」
なんだかどこかでしゃべった気がしないでもない発言が、僕を刺してくる。
「――『男はちょろいから、意中の女の子を堕とすには膨大な時間とお金と手間と覚悟が必要なのに、女の子は脱ぐだけなんだよね』……そう言っていましたよね」
優花が――耳元で、低い声でささやいてくる。
「でも――兄さん。ひより先生から、目を逸らさないで」
「ひゃいっ!?」
「きゃあぅ……」
その声にひより先生を見ると、僕たちは同時に変な声を出す。
「兄さんが、まだ男のつもりだと言うのなら。――『まずは』ひより先生の覚悟に応えてあげてください。女が、男の前で脱ぐという――男が女を堕とすためにかける、膨大な労力と同じくらいの覚悟に……です」
どうして。
「こ、こはねちゃん……?」
なんで。
「……兄さん、もしかして……」
こんなことに……!
「強引に入れた甲斐があったかも……!」
「うん、これは最大級のチャンス……」
「入ってしまった私も私ですが……こ、困りましたねぇ……」
……なんで僕、女子同士の温泉に一緒に入ってるの……?
「あばばばばば……」
そうだよ――優花、ひより先生、はるなさん、みなみさん、如月先生とかいう女子100%に、異物である男――僕が混じってるんじゃん……!
顔が熱い。
体が熱い。
――なんで、どうして。
僕は、なんの疑いも抵抗もなくついてきちゃったんだ……!
「ひぃぃぃぃぃ……」
「いろんな感情が一気に戻ってきた」っていう変な感覚になって、体じゅうがぞわぞわする。
なにこれ、なにこの感覚……!
「……初心な男の子って……良いわよね……」
「出た、はるなちゃんのショタを堕とす夢」
「……退行したときも、強いストレスのせいで……なら、今回は……?」
どうしよう……この空間は全部、女体に支配されている……!
「……こはねさん? のぼせていませんか?」
「ゆ、ゆうかぁ……」
僕は、勇気を出して優花の声のする方へ向き直る。
「!?」
「あっ……ひ、ひよりさんが」
「ひ、ひゃぁぁぁ……」
――それをすぐに後悔した。
……なんでひより先生と並んでるの!?
いや、おかしくはないんだけども……!
ひより先生は背が低い=座高も低いってことで、僕と同じく首元まで浸かっている。
……でも、お湯は透明だから普通に見えちゃったんだけどぉ……?
「 」
「あばばば……はっ!?」
僕は目を急いで閉じる。
「み゛っ!?」
そのせいでまつげが目に入って痛いけども、今は我慢しておく。
「かわいい」
「かわいい……」
「見ちゃったけど見なかったことにするために必死に目を閉じる子って……良いわよねぇ……」
「いい……」
我慢だ、我慢。
体が熱くなってお湯が熱すぎる気がしてきたけども、今は我慢。
「ふ――……」
ひとまず、事態は最悪だけども視界を物理的にゼロにすることで難局は脱出できたはず。
あとは、退路だけだ。
「……!?」
待って?
これ、目をつぶってたら被害無しでの脱出は不可能じゃない?
だって、みんなに囲まれる形になってるもん……確か。
ていうか僕、なんで違和感も疑問も羞恥もなしに、みんなと脱いですっぽんぽんになって……!?
「食べたい……だめ? ちゃんと事後の許可は取るからぁ」
「駄目。こはね様は、そういうのをすっごく気にするタイプ。きちんとした合意がないと、ずっと引きずるタイプだから」
「あーん……」
「温泉と言っても、ただのお湯……あとは女性と入浴が鍵……いえ、優花さんとは……でも彼女は家族で……それとも、好みのプロポーションが……? 交際したことがないと言っていたから、家族以外の女性の裸体が……」
「つまりはどんどん見せつけるってことね、如月ちゃん!」
「はるなちゃん、ステイ、はるなちゃん」
他の3人は楽しそうに何事かを話しているけども、悟られるわけにはいかない。
ていうか、そもそもだけど。
優花は家族だし、もう何回も介抱のために裸を見て見られる関係になってるけども。
いや、それは本当は良くないし、僕だって好きで一緒に入るわけじゃ――
「!? あばばばばば……」
――入ってたじゃん!
何日か前、僕が優花のとこに乱入してぇ!?
僕、変態になってたの!?
妹のおふろに乱入して、洗いっこする変態に!?
「ばばばばばば……」
それに――事情を知らないだろう、はるなさんとみなみさんはともかく……如月先生まで入ってきてるの……?
僕のこと、ちゃんと成人男性だって認識してるはずだよね、先生は……!
ていうか、まずい。
先生までは良いとしても――良くないけども――あの2人とひより先生は、僕のこと男って……あれ?
みんな、僕のことどこまで知ってるんだっけ?
「?」
首をひねってみる。
………………………………。
……分かんなかった。
「……良かった」
「ふぇ?」
あ、変な声出た。
なにもかも、この幼すぎる体が悪いんだ。
「最近の兄さん……様子が少しおかしかったので」
「うん……そうみたいだね……」
「? もしかして……覚えているんですか?」
「うん……全部じゃないけど、たぶん……お酒を呑みすぎた日の記憶みたいにあやふやだけど……」
「お酒……くすっ。深酒は駄目だと言っていますのに」
「その前の話だよぉ……僕がこうなる前の……」
ちらりと目を開けると、ひより先生は視界の隅に移動してくれていた。
良かった……いや、良くないけども……ひとまず視界は確保だ。
「具合の方はどうですか?」
「えーっと……特になにも」
そういやこの温泉、入り口からがらがらで、わずかな従業員の人たちもことごとくが配信の視聴者――の中でも「僕の介護班」とか不名誉すぎる呼び名だっけ――だったよね。
あの人たちが優花を急いで送ってくれたり炎上を防いでくれたりといろいろしてくれているのは知っていて、だから僕たちが出かけた先のここに居るのも――優花も居るんだから不思議はない。
……けど、なんで働いてるの?
臨時って言ってたからバイト?
でもなんで――ああだめだ、まだまだ頭が働かない。
「……こはねちゃんさん」
「なん――――――」
普段通り過ぎる声に、ついうっかり目を向けちゃった先。
「………………………………っ」
浴槽の中で両手両脚をぎゅっとしているから、ぎりぎり危険なところが見えない――や、さっきとか見ちゃってたし、その前まででもばっちり見ちゃってたけども――ひより先生が、僕を真正面から見ている。
「えっと、その……っ」
僕は、覚悟を決めた。
――どんな罵倒でも、吐いたりしないでしっかり受け止めるって。
「――わ、わたしの幼児体型でも興奮できますかっ!」
「でき――――――……えっ」
え、なんだって?
「きゃーっ! きゃーっ!」
「ステイステイ。乙女の覚悟……」
「ここでひよりさんが踏み込むのね……!? も、もうちょっと見てから……」
「……こはねちゃんさんっ!」
「は、はい」
ぎゅーっと体を縮めていた彼女が――ばしゃっ。
両手を水面に上げて――胸元に下腹部が、
「!? か、体! 体隠して!」
「お返事を聞くまでは……か、隠しませんっ!」
「なんでぇ!?」
慌てて優花の方を見て安心しようと試みるも、
「兄さん」
「優花!?」
いつの間にかににじり寄ってきていたらしい優花が――僕の真横でぴたりと体をくっつけ、
「――女の覚悟から、目を逸らしてはいけません」
「ちょっ!?」
――両手で頭を固めてきた。
こ、こうなったら別の方向へ目を逸らせば――
「!?」
「はーい♥ おっぱい見ますぅ?」
「AカップとGカップ……よりどりみどりです……」
「わ、私のような年増で良いのなら……うぅ、恥ずかしい……」
「……!? ……!?!?」
右、左。
なんだかばしゃばしゃやってるって思ってたら――てっきりじゃれ合ってるだけかと思ってたら、まさか、ひより先生の左右が3人で固められている。
「でも、こはねさ――ん、配信で言って……ました。『男は好みもあるけども、基本は雑食なんだ』って」
「こうも言ってたわねぇ。『えっちなのとかはそんなに見ないけど、目に映れば反射的にでも見ちゃって嬉しくなるのが男なんだ』って」
なんだかどこかでしゃべった気がしないでもない発言が、僕を刺してくる。
「――『男はちょろいから、意中の女の子を堕とすには膨大な時間とお金と手間と覚悟が必要なのに、女の子は脱ぐだけなんだよね』……そう言っていましたよね」
優花が――耳元で、低い声でささやいてくる。
「でも――兄さん。ひより先生から、目を逸らさないで」
「ひゃいっ!?」
「きゃあぅ……」
その声にひより先生を見ると、僕たちは同時に変な声を出す。
「兄さんが、まだ男のつもりだと言うのなら。――『まずは』ひより先生の覚悟に応えてあげてください。女が、男の前で脱ぐという――男が女を堕とすためにかける、膨大な労力と同じくらいの覚悟に……です」
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