元Sランク冒険者のお爺さんの残した遺品は、物凄い宝の詰まった指輪でした。

チョコクッキー

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第一章 始まりの数々

剣の授業

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「うっ…」
ゆっくりと目を開けるユウマ。

「モッフ。ここは?」

「養護室でやんす。おはようございます。主。心配したでやんす。無茶し過ぎでやんす。」

空中をクルクルと回るモッフを見つめながらユックリと思い出す。

「理事長に呼ばれてないか?」
ユウマはモッフに尋ねる。

「よく分かるでやんすね!確かに起きたら来るようにと伝言を預かってるでやんすよ」

「そうか…。よっと…ふぅー。身体がまだ重いな…。」

「当たり前でやんす。殆どゼロに近かったでやんすから…純度の高い魔力を還元出来ただけでも奇跡でやんすよ。もぅ…。」

「助かったよ。有難う。で?吸魔石は、どこに在る?」

「此処に在るでやんす。隠しといたでやんす。」
もっふは、結界を解く。中には、緑から紫に変わった石が入っているが

「早くしないと漏れてるでやんすよ!」
もっふの言う通り、ひび割れから魔力が霧散している。

ユウマは手を伸ばし、吸魔石を握ると一気に体内に取り込む。

金色の魔力が手から入り込み、血管のように枝分かれして流れ、臍に溜まる。

「6割だな…。後は盗られたか…。2割をマリアナさんとアラン。1割にも満たない位をキャンドラか…」

ガラッ…

「誰が盗ったって。言い方が悪いわさ。」
マリアナだった。

「ほら、手を出しな。全部とは行かないけど返すわさ。純度が高すぎて負担だわね。」
手を握り少しずつユウマの身体に流し込む。

「私は、朝に忠告したはず…。何故無視しただわさ…お馬鹿」
頭を軽く叩かれる。

「すみません。ちょっと感情がコントロール出来なくて…。」
ユウマがそう言うと

「あんたが、そんな状態になるなんて…。何があったのさ?」

「えっ、あっ、まーいろいろと」
顔を背け返答に困るユウマ。

「今は、いいわさ。だけど、来るよ!!」
頭をなでながらマリアナの目が鋭くなる。

「覚悟の上、まっ!計算上ギリですけど。」
ユウマが微笑む。

「ホッ。そうかい。勝てるんだね?じゃ、美味しい料理作って待ってるわさ」
腰を上げると手を離し、部屋を出てゆく。

振り返らず
「かなりの手練だよ…。気をつけな!」
そう言い残しドアを閉める。

ユウマは、ベッドから降りると軽く柔軟体操を行い魔力を浸透させる。


…本当なら一汗描きたいところだが理事長を待たせる訳にも行かないか…

「もっふ。行こうか…。」

「了解でやんす。」

本日二度目の扉の前で深呼吸してドアを叩く。

コンコン。

…………「入りたまえ。」…………

ユウマは、静かに入っていく。

そこには、縛られた先生がいた。

「さて、当事者が揃ったところで始めようか?」
理事長がそう言う。

「まっ、待ってくれ。あれは、ほんのイタズラだったのだ…。わかるだろう!冗談だと」
汗を垂らし、命乞いのように弁明する先生。

「理事長…記録は?」

「撮ってあるよ。あとは、国王に渡すだけさ」

「では、この件は、参謀本部長にお願いします。」
ユウマは、頭を下げて部屋を出てゆく。

「良いのかね。君には、見せたくない物では?」
理事長が確認する。

「王都爆発なんてことになってたら…。これで構いません。そこの豚の首一つで済むでしょう」
ユウマは、軽く話す。

「やめてくれ。頼む。」
両手をを組み、命乞いをする先生。

「アーサー先生でしたっけ?次は、もう無いので安心して逝ってください。」
ユウマは、無表情で部屋を出てゆく。

「昼食後は、確か剣術だったかな?」
理事長が嬉しそうに聞く。

「えぇ。理事長の方針が変わらなければ…ね」
ユウマは、それだけ言うとドアを閉めた。

「さぁ。ガッツリ食うか!」
ユウマは、少し元気を取り戻し午後の1番に賭ける。
心配なのは、キャンドラの事だ。手を差し伸べるべきか…放っておくか…だが、アランと当たる事になったら、手を差し伸べる!!

食事を終えるとグランドで軽く汗を流し瞑想にふける。
古代・仙人が用いたという仙法。その中でも、爆発的に魔力を回復させ、身体を昇華させる。
およそ、一刻…。静かに深く身を落とす。

カーン♫コーン♫カーン♫
予鈴だ。

「行くか!もっふ。」
「あいでやんす!」
ユウマの肩に乗り尻尾を振る。
ご機嫌みたいだ。

教室につくと、席に座り教師を待つ。
誰が来る?理事長か?いや理事長は、王宮のはず。すると、担任のルイザ先生か…。

ガラッ…。「移動するぞ」
来たのは、Aランク冒険者 ケビン・プラズム
「狂犬…か」ボソッとユウマが声に出す。

キャンドラが心配そうにユウマを見ながら席を立ち、アルミスと共に外へと向かう。

全員が校庭に集まり、説明を受ける。石盤の上で剣で戦い勝てば次戦へ、負ければ終わり。
要は、勝ち抜き戦だ。しかも魔法もありと来た。ここまでは計算通り、違うのは武器は、各自自由と言うことだ。

…不味いな…

「キャンドラ嬢。武器は?」
ユウマが尋ねる。

「こちらの国宝級 サンダースピアでございます」
ケースの中に、布に包まれたスピアが1本入っている。駄目だ…

「これを使ってくれ。初めは、馴れないかも知れないが必ず役に立つ。」
ユウマは、腰の剣をキャンドラに手渡す。
「とにかく、頭で考えるな。剣の声を聞いてくれ。」
それだけ言うと歩いて、人混みの中に消える。

奴は?居た…最悪だ。あれは、冥府のデスサイズ。
アランが肩にかけている大鎌は、不気味な妖気を漂わせ周囲の生徒も畏怖している。

「それを使うのか?」
ユウマが声をかける。

「あぁ。規定はなかったはずだ。」
目の下にクマを作り、少し疲れているように見える。魔力を吸われているのだろう…。

「ユウマ様は、ご自慢の剣は?」

「キャンドラに貸してある。」
笑顔で答え、その場を通り過ぎる。
寒気がするよ…。危ないな。この授業…。

「それでは、始める。キャンドラ対ズダン。初め!」

…何ですの?こんな鉄の剣を…
(左に避けろ)えっ!ビュン!
「危ない。キャンドラ様」

「チョット待って…」
(上からくる)

「もう!ガキン!」
剣を横にして防ぐ、キャンドラ。

(また、右からだ。ファイヤボールで牽制して上段切り)
「うるさいわね…ファイヤボール!えい!」
キャンドラが上段に振り被った所でカエル君が

「参りました。」
と剣を捨てる。

「勝者、キャンドラ!」
…ふぅ…やりましたわ…

「お嬢様、おめでとう御座います。」
アルミスが駆け寄ってくる。

「次、始めるぞ。キャンドラ対ビガン!」
…………………

「キャンドラの勝ち」

~~~~~~~~~
半ばを過ぎた辺りで

「キャンドラ対アラン!」

「来たわね!行くわよ!」
好調なキャンドラ。ニコニコしてる。

「無理しない方がいいよ…雑魚が…。」

「えっ…??」
(ファイヤウォール)

(おい…駄目だ。伏せろ!)

「ブン!!」

スパーン!空気が切れる…。

「何なんですの?」
(降参しろ!)

「冗談を…」
(やばい…クソ、ガキ…………)

剣が輝き電光石火の如くデスサイズを弾く!
(ガキ!降参しろ!死ぬぞ!)

「覚悟の上で…」「キャンドラ!そこまでだ」
「クッ!ユウマ様まで…参りました。」

剣を捨てる…キャンドラ…しかし、「きゃー、ズバッ!」「痛い!」右肩を切られ倒れる。

「死にな!」
尚も攻撃を続けるアラン!
「ヨイショ!キン!カン!男が情けないんだよ!」狂犬が止めに入るが…

「スバ!…………………ククク」

「クォー!このガキー!!」
狂犬すら左手を深く切られ、片膝をつく。

「ククク…ハハハ!俺が最強だ!」
アランは、目が飛んで狂っている!

仕方ないか…
「アラン!…シュパーン」
1本の矢が放たれ、2本になりアランに襲いかかる。
「フン。何?」
屋は、4本8本16本と分裂し何時までもアランを襲う。

この隙にユウマがキャンドラと狂犬・ケビンを救い出し【ポーション】を飲ませる。傷は、たちまち癒え、まるで怪我など無かったように…

そして、台上にたつユウマ!
「終わりだ!アラン」

銀色の剣とも槍とも弓にも見える…高機動変型武器 シュネイヴァルチャー

矢は、依然としてアランを追撃して脚や腕に刺さりつつある。

「クソッ。やはり邪魔なんだよ。お前はー!」
アランが狂ったように冥府のデスサイズを振り回す。然し、呪われた邪武器では、神器に勝てるはずもない。

両足を貫かれ、肩に背中に矢が刺さり、最早、生きているのさえ不思議であった。

「終わりだ。」銀の矢を構え射るユウマ。
一直線に心臓を貫き、倒れるアラン。

「お前は、暫く休みが必要だ…。人造人間アラン…………。」

「コブッ!そこ…まで知って…いたの…か」
矢を抜き、布に包むと抱きかかえ運んで行くユウマ。

皆んな、ただ無言で立ち尽くす。



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