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第2章 戦乱の足音と不穏な空気
第1話 教会での地位と新しい侯爵への道
しおりを挟む学園長達の悪巧みを防ぎ、約半年が過ぎようとした頃、王様に招かれ王城に来ていた。
「人払いをせい!」
王様が大臣に促す。
「これより、機密情報交換となりますので一次各貴族の方は、控室にてお待ちください。」
大臣と執事、侍女により各位別に部屋に案内される貴族達は、一様に不満の色を表していた。
…何故、学生風情が国王と謁見して単独になり、【機密情報交換】等と我らの計り得ぬ密談を行うのじゃ?…
ザワザワとした貴族の中に苦虫を噛み潰すような顔のラインハルト・フォン・ラゲットの顔もあった。
あの事件から数刻後、国王に呼び出されユウマを戸籍から外す様に通達があった。勿論喜んで手続きしたら、ニコルとハイル達から授業の話を聞き、何やら高そうな武具を持っているらしいとの情報を得たのだ。やはり、あのクソ親父は、ユウマにお宝を渡していた。しかし、既に手続きを終わらせている。
「クッソー。ガャーン!」部屋に入るなりテーブルの上の飲み物を払い落とし、偉そうにシングルの椅子に座るラインハルト。
然し、この部屋は公爵・侯爵・教皇猊下・枢機卿が集まっている部屋であった。
「何事かね?」公爵が歩み寄り、腕を組みゴミを見るように尋ねる。ここは、どう考えても公爵か教皇猊下が座るシングル椅子。そこにこの中で一番格下の伯爵風情が座っているのである。しかも、飲み物を払い落とし…………。
「あっ…いえ、申し訳ございません。部屋を間違いましたようで…………。」
冷や汗を流し、ハンカチで拭うラインハルトだが案内されたのは、この部屋だ。
「間違いはございませんよ。ラインハルト卿。」
執事が魔法で片付けを行う。しかも、筆頭執事である。
益々、居場所がなくなり
「私がやっておきますので…。」
ラインハルトが申し出るが…
「国王の招いた客人にそんな事をさせれば私は、クビになります!!それに破片が残り他のお客様がお怪我をされたら貴方に責任が取れますかな?」
ジロリと見て黙らせる。
「貴殿は、軍事のトップでありながら何も知らんのだな?ピーターユリウスの裏帳簿を暴き出し、学園の教師に至るまでの不正帳簿・裏口入学、賄賂を示す書類を大臣に提供して内密に指示を受け捜査し、ほぼ全ての悪事を洗い出した神童じゃよ。お主の情報でも今頃、報告してるかもなアハハ。」
公爵以下全員が笑いものにしてる。
…不味いな!不味いぞ!もし、バレたらお家取り潰しどころでは、済まない。一家絞首刑の末晒し首だ。…
「然し、今回は教皇も大活躍ですな。ご神託があったとか?」
公爵が進める。
「ああ。今回ばかりは、女神もお怒りのようじゃ。伯爵家の籍を外したのも何かの考えがあってのことじゃろう。」
ニヤリとラインハルトを見る。
…………こうなったら、殺すしかあるまい。理由は、後から幾らでも付け足せる。行くか…………
「そういえば、ユウマ様にはお布施もいただきましたな。枢機卿の席が空いているので埋めてしまいましょう。」
教皇猊下がそう発言すると
「イクラだ!いくら払ったんだ!!」
血走った目をして脅すように話すラインハルト!
「白金貨30枚でしたな。ホッホッ。」
それを聞いて完全にキレた。
「アダマンタイトの剣で切り裂いてやる。」
「ん?これまた冗談をおっしゃる。ラインハルト卿の腰に挿してるのは、魔鋼ですよ。ユウマ様に教えて頂きましたが、アダマンタイトの剣は鉄の剣とぶつかっても凹みませんが、魔鋼は、同じ黒でも凹むそうです。何故、アダマンタイトの剣を売り魔鋼の剣を買ったのか不思議がっていました。ふふふ。」
筆頭執事がそう言うとラインハルトは、剣を引き抜き光に照らす。
すると、あちこち凹んでいた。(あの…商人騙しやがったのか!…)更に怒りが増してきた。
「まぁー、そう言ってやるな…。影で苦労しているのだろう。奥様は、あれ程の宝石を売り東帝国の色を付けたガラス玉に変えたのだから…もし、お金に困っているのであれば相談に乗ってやろうではないか!」
公爵がこう締めくくる。
…妻の宝石が人工のガラス玉に…俺達は、金を吸い取られたのか…
「プチ…プシュー…」
目、耳、鼻から血を吹き出し、ラインハルト卿は、倒れた。脳血管破裂だ。興奮がマックスに達したのだろう。
急ぎ、閲覧の間に執事が走る。
バタン!「ラインハルト卿!死去!!」
「間違いは無いのかね?」
王が尋ねる。
「教皇猊下の診断ですので間違いは有りません。」
「下がって宜しい!ユウマ様…」
国王は真剣に見る。
「人を殺すのに刃物は要らぬ。言葉で充分だ」
お茶を飲むユウマ。全ては、計画通り。
~~~~~~~~~~
「皆のものよく聞け。先程、ラインハルト伯爵が亡くなられた。彼には嫌疑が掛かっていたが不幸に不幸を重ねるのは失礼である。そこで、爵位剥奪の上、お家取り壊しとする。家財は、くれてやる。」
国王がこう宣言すると、貴族の中から
「嫌疑とは、一体…。なんでございましょう。」
「多額の不正に脱税、軍事情報の漏出だ。これより、戦争になるかも知れん。心してくれ!」
国王が立ち上がり、意思を述べると
「おぉー、国を護るぞ!!」
「おぉー!!」
一致団結したようだ。
「ここで、私から皆に提案がある。ユウマ殿は、大臣の指示の元、仕事をこなし報酬の白金貨30枚を全て教会に寄付し、また司祭より上の聖魔法(極)にて毎週、無料で治療に当たってくれている。そんなの彼に枢機卿の末端に加わって貰いたいと思う」
教皇猊下がそう発言すると
「異議なし!!」
「異議なし!」
とその場で取り決められた。
また
「今回、悪事を暴いたその手腕を買い、軍事の仕事を任せたい。ここに、ユウマを勲爵して侯爵に命ずる。ただし、一代侯爵として屋敷などは、与えないこととする。意義あるものは、申せ!!」
国王の意図は、タダ働きにしか聞こえない。
「異議なし!」
が多数を占め、これもその場で決まった。
「ユウマを侯爵として勲爵し、ユウマ・フォン・シャルルを名乗ることを許す!」
パチパチパチパチ…
えーと、侯爵になりました。アハハ。
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