『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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謹慎よ!  その1

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「ゴウキ、貴方はしばらく謹慎よ」


第1区の一等地に与えられた勇者パーティーの拠点に着いたゴウキにビシィッと効果音が鳴りそうなほど指を突き立ててこう言ったのは、リーダーであるクレアだった。
部屋では既にゴウキ以外の全員が集まっており、彼が拠点に辿り着く前に示し合わせたのだろうか誰もクレアの言葉に異を唱えることはしなかった。
リフトは残念だ、いったようにやや顔を伏せているが、僅かに口角が上がっているのがわかる。マリスは我関せずといったように無表情。ミリアは厳しい目を向けてはいるが、心なしか気まずそうな表情をしている。
そして唖然とするゴウキの向かいにいるクレアは無表情。淡々とゴウキにメンバーとの話し合いで決まった結果を伝えている。


「唐突過ぎるだろ。とりあえず意味がわかるように順序を追って話せよ」


ゴウキが第2区の酒場で仲間と飲んでから数日経過してのことだった。彼はあまりのも唐突に勇者クレアから謹慎を言い渡された。普段肝の据わったゴウキも流石にこのときばかりは動揺した。


「ここ最近、いろいろと問題行動が多すぎるわ。それに対する処罰だけはパーティーとして下しておかないと、世間体というものがあるの」


「問題行動・・・?」


心当たりがあるようなないような・・・とりあえずゴウキは黙って聞くことにする。


「まず第2区での酒場での飲酒だね。僕の知り合いがそこで飲酒している君を目撃したんだ」


椅子に腰を掛けていたリフトが立ち上がり、手に持つ紙を読み上げるようにしてそう言った。


「げっ」


見られていたのか。リフトに第2区を出歩くような知り合いがいるなんて思わなかった。選民意識が強い人間だから第1区の住民しか相手にしないと思っていたのに・・・とゴウキは己の迂闊さを嘆いた。


「それから買い出しはゴウキに一任していたが、その買い出しでも問題があることが発覚している。君はパーティー用の回復アイテムなどを冒険者ギルド認定の商店から購入せず、得体の知れない個人商店から購入したことが何度もあるね?」


「は?それの何が問題あるんだ」


理不尽な物言いに流石のゴウキもリフトに反論する。


「安価だからと、ギルドに認定されていない商店で素性のはっきりしていない回復アイテムを購入するなんて問題があるに決まってるじゃないか。これまで使ってたポーションだって問題がたまたま起こらなかっただけで、副作用が出たり感染症になったりした可能性がある。そういったリスクを排除するために認定店で安全の確保された回復アイテムを買うべきなんだ。それはゴウキにもわかっているだろう?」


「認定店はぼったくりだろうが。ギルドの認定だからって胡坐をかいて企業努力を全くしてないんだよ。それに認定されてない個人商店だって変なポーションは置いてないし、買うときだって一応俺は目利きはしてるぜ。リフトだって良質なポーションの目利きくらい出来るだろう?」


「そ、そういう問題じゃない!勇者パーティーなんだから、きちんとギルド認定店で購入するべきなんだ」


良質なポーションの目利きは、それなりの経験を積んだ冒険者は可能である。というか身に着けるべきスキルである。
それの出来ない慣れない初心者などは安いからと多少の博打に出てうさんくさいポーションに手を出すか、高くても品質保証書までついている安全な認定店の高いポーションを買うかのどちらかになるが、中級ほどになった冒険者は認定店で買わずに目利きして安価で良質なポーションを選んで購入する。
ギルド認定店で購入するのは目利きする手間を省けるくらい金を持つようになった上級冒険者か、目利きの身についていない半端者くらいである。

勇者パーティーはもちろん上級冒険者であるが、禁酒するほど清貧であるべきと律している以上は回復アイテムくらい目利きして経費を節約するくらいのことは当然だとゴウキは考えていた。

ちなみに目利きの経験の浅いリフトは、今だそのスキルが身についてはいなかった。なので自身のボロを出さないために理不尽な物言いで認定店での購入を訴えている。
そしてもう一つの理由、リフトはギルドとの関係を良好に保つことで自身の立場を築き上げることに躍起になっていた。なのでギルドの息のかかっている認定店での購入を推し進めているのである。

ゴウキは確証こそないがそれを何となく察していた。
だからこそ余計にリフトの言う通りに進めるのが嫌で、買い出しについては一任してくれと申し出たのである。
勢いでそこを追究してやろうかと一瞬思ったが、拗れて更に面倒になりそうなのでこの場は黙っていることにゴウキは決めた。
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