『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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馬鹿は来る

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「よう兄さん、ちょっと待ってくれよ」


気持ちの整理をつけたゴウキが気を取り直して歩いていると、突然裏通りで声をかけられた。
通せんぼするようにゴウキよりも少し年下の三人の少年が前に立っていた。


「いい服着てるじゃん。金あるんでしょ?ちょっと分けてくれよ」


そう言って少年の一人がナイフを見せつける。
第4区は多くの人間が集う。ゴウキは5年前は同世代の仲間とともにそれなりに4区で幅を利かせていたし、勇者パーティーとして活躍していることもあって有名人だが、中には彼のことを知らない者もいる。生きることに精いっぱいで、周囲のことに無関心な者だっているのだ。
ゴウキのことを知っていれば、彼に追いはぎをしようなんてことを考える馬鹿なことはしない。


(服・・・?あぁ、そういや1区で買った服だったか)


ゴウキは言われて自分の今の身なりを思い出した。第1区で適当な店で買った服だったが、4区の住民からしてみると高級品である。自分は金持ちですとアピールして歩いているようなものだ。


「大人しくしてりゃ怪我はさせねぇよ」


そう言ってナイフを突きつける少年の顔を見て、ゴウキはフッと口角を上げた。


(懐かしいなぁ。昔はこんなんばっかり相手にしていたっけ・・・)


クレアに推薦され王立学園に通うようになってからは第1区の住人となった。当然だが治安の良い第1区での生活にはこんな追いはぎなど現れるはずもない。ゴウキはむしろ懐かしい気持ちになりながらも微笑ましい気持ちで少年たちを見ていた。


「てめぇ、なんだその目はふざけてんのか!?」


ゴウキの態度に馬鹿にされたと思って激昂した少年が、ナイフを突き立てようとする。
だがその瞬間


「滅殺!!」


ゴスン、と

大きな鈍い音がしたかと思うとナイフを持っていた少年は頭から地面に突き刺さっていた。
ゴウキの拳が少年を打ちのめしたのだ。

(あぁ、少しすっきりした・・・)

どうやら心の整理をつけたはずのゴウキも、やはりストレスが相当量あったようで、ここぞとばかりにそれを発散してしまっていた。


「お、お前っ!」

焦ったように残り二人のうちの一人も慌ててナイフを取り出す。
だが、ゴウキの目はその少年ではなくもう一人のほうに向いていた。ナイフを持たぬほうの少年の口元が動いており、魔法の詠唱をしていると気付いたからだ。


ガシィッ


「!?」


ギリ・・・

詠唱をしていた少年の口元をゴウキの右手が鷲掴みにする。詠唱をしようとした少年の口は止まり、あまりの握力による激痛にそのまま気絶をする。


「ひいっ・・・」


そのゴウキの剣幕に魔物のような恐ろしさを感じた少年は、手にナイフを持ったままそれをゴウキに向けることなく、全力で逃げ出してしまった。


「引き際だけは弁えてるんだな」


勝てぬと思った相手には全力で逃げる。それなりの判断力は持っているんだなとゴウキは感心する。
気絶した少年を放してやると、ゴウキは「あれ?謹慎中だったけど暴れて良かったのかな?」と途端に不安になった。どうしよう、誤魔化せるかなとソワソワしていると


「よう、相変わらずだなゴウキ」


そんなゴウキに同年代の男が声をかけた。
両腕にそれぞれ女を抱いたその男は、ゴウキの顔を見て嬉しそうに笑っていた。


「ディックか・・・久しぶりだな」


ディック。彼は5年前、ゴウキが4区で幅を利かせていたときに一緒につるんでいた仲間だった。
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