『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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ゴウキ・ファミリー

監視システム

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「3区の2丁目の河川敷で、泥酔している冒険者を取り囲んでいる手段がいますね。『半グレ』とやらだと思います」


リノアの言葉を聞き、ゴウキは「わかった!」と言い、瞬時に駆け出していく。
それはまるで突風のようで、既にリノアの視界にゴウキはいない。


「流石、すごいですゴウキ先輩。相変わらずの俊足ですね」


(凄いのはリノアだと思うが・・・)


呑気にゴウキのことを褒めたたえているリノアを見て、デニスは背筋に冷たいものを感じる。
ここは第2区のゴウキ・ファミリーの馴染みの酒場「カムシン」。リノアはここにいながらにして、今リアルタイムで王都の街の大半の状態を把握している。ゴウキが先ほど駆け出していったのも、リノアがそこで事件が起こっていることを察知したからだ。


「そのプライバシー侵害のコウモリ、自分につけられたら溜まったもんじゃねーけど、まさかこういう使い方もあるなんてなー」


スミレはヘラヘラ笑いながら感心しているが、「これはもうそれどころじゃないだろう」とデニスは呆れていた。



ーーーーー


リノアが以前ゴウキをストーキングした監視魔法仮称「コウモリ」。これを使ってゴウキが効率良く町を警備できないかと相談したところ

「まだあまり試したことはないですけど、数を増やせば理論上は可能です!」


「理論上は可能・・・(ドン引き)」


「っていうか多分可能です!」


あっけらかんと可能であるとリノアが返事をし、そして実際にそれをやってのけてみせた。


「今はまだ慣れないので255個が限界みたいです。がんばれば、いずれは65535個くらいまでは・・・」


「いや、とりあえずそこまでしなくていい」


既に超常的なのにこれ以上一度に更に超常的なものがやってこられても脳が処理できない。とりあえずゴウキは現状のリノアのその能力を試しに王都の全体の状況を把握できればと思った。


「では、やってみます」


リノアが255もの魔法で作られたコウモリを王都中に飛ばす。
コウモリを通じて見聞きしたものは全てがリノアの知るところとなる。


「なぁ、それ、全部のコウモリの情報がわかるのか?」


ゴウキは恐る恐る聞いた。


「いえいえ・・・流石にそこまで私も万能じゃないですよ。しっかり把握できてるのは八割くらいですかね・・・あとはぼんやりって感じになっちゃいます。これでも最初は脳みそが焼き切れるかってくらいきつかったんですよ。でも慣れれば・・・」


「あ、いや、もういい。無理しない程度で・・・」


ゴウキは聞いてて頭がおかしくなりそうだから聞くのをやめた。
だが、リノアの能力は今のゴウキの目的には必要なものだった。



「頼む。大変かもしれないが、少し力を貸してくれ!叩き潰したい奴らがいる!」


ゴウキがそう言ってリノアの肩を掴むと、リノアは顔を真っ赤にして頭から湯気を出しながら


「ぶ、物理の限界を超えてでもゴウキ先輩のお役に立ててみせます!!」


そう言って力一杯頷いたのだった。


「いや、これ以上超えなくていい」


ーーーーー



そして今に至る。
ゴウキが先日商会会長に対する追剥ぎを阻止できたのは、リノアの監視システムによって半グレの動きが把握できたからであった。




「スミレ先輩、2区の4丁目の酒場『マノス』周辺の路地裏で追剥ぎです」


「ん、あいよ」


スミレは返事をすると音もたてず、瞬時に姿を消した。


「デニス先輩。次は・・・」




こうしてゴウキ・ファミリーはチート的な監視システムを駆使し、王都の犯罪・・・特に半グレによる活動を徹底して封殺していった。
事件発生から解決まで時間かかっても15分。
リノアも大概だが、他のメンバー達も随分人外じみた活躍を見せていた。
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