『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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ゴウキ・ファミリー

更なる名声

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クレア達が王都に戻った頃、王都から徒歩二日ほどかかる位置にあるとある森では、冒険者による魔物の討伐が行われていた。




魔物の名はロッキーコング。

元はパワーコングという、腕力が非常に発達した大猿型の魔物の突然変異である。
どこで覚えてしまったのか、人間が興行でやっている拳闘のテクニックを駆使するロッキーコングは、元の腕力を効率よく生かしきる攻撃と防御のテクニックを身に着けており、当たれば即死とさえ言える強力なパンチを素早く打ってくる。
元の腕が長いので、槍などの長い武器を持ってもリーチの差は早々詰められず、慣れないスタイルで戦いを挑んでくるというのもあって、討伐に向かった冒険者が何人も犠牲になっている。

冒険者ビーンも討伐にやってきた一人だった。
パワーコングは既に何体も打倒してきたB級冒険者であり、亜種とはいえ元はパワーコングであるロッキーコングなど恐るるに足りないと考えて討伐依頼を請け負った。


だが甘かった。
ロッキーコングはパワーコングと見た目こそ変わらないが、動きが大きく違い、一瞬にして仲間はロッキーコングの拳の餌食になって戦闘不能になった。
残るはビーン一人。ビーンは死を覚悟した。


だが、そこへ他の冒険者達がやってくる。
それが巷で有名になりかけているゴウキ・ファミリーだったことをビーンが知ったのは後の話だ。


「ガアッ!!」


ロッキーコングはゴウキが現れるや否や、即座に反応してゴウキに立ち向かう。
ロッキーコングは強者を求め戦いを挑むという性質があるとされているが、ゴウキにその匂いを特に強く感じたのだろう。
ゴウキはロッキーコングの意を汲んだのか、仲間に手出しさせずに自分だけで相手をすることにした。

ロッキーコングの素早いジャブがゴウキに浴びせられる。
ゴウキはそれをガードすることなく、受けてなお前進を続けた。ジャブといってもロッキーコングのそれは一撃一撃が鉄球が飛んでくるそれよりも強力な攻撃だ。それを正面から受けているゴウキを見て、ビーンは足が竦む。

だが、ビーンが驚くのはそれだけではなかった。

ジャブを受けながらゴウキは大きく振りかぶり、拳をロッキーコングに叩き込む。
攻撃をいなすようにガードしたように見えたロッキーコングだが、ゴウキの一撃が重すぎていなしきれなかったようでバランスを崩し、そこを更にゴウキの拳が追撃してついに捕らえられた。


ゴキャッ


固い岩盤が破裂したような音・・・
それはロッキーコングの顎が砕かれた音だった。
それでもひるまずに攻撃を打ち込んでいくロッキーコング。しかしゴウキも正面から数発受けても怯まない。ガードする姿勢すら見せずに出血しながらも、ゴウキは拳で応戦する。


「ひっ・・・」


その鬼のようなゴウキの形相に、どちらが魔物かわからなくなるほどの恐ろしさをビーンは感じた。
スミレ達は黙ってその様子を見守っている。
ビーンにはとにかくそれらが異様な光景に見えた。

何十発と打ったロッキーコングは、結局ゴウキの拳を四発受けた頃には顔面を潰され、絶命していた。
圧倒的な破壊力と速度とテクニックを持つロッキーコングを、あくまで正面から素手で制したゴウキを見て、ビーンは彼に強い恐れと・・・そして憧れを抱いた。

ロッキーコング討伐の噂は一瞬で王都を駆け巡り、ゴウキ達の名はまた広まることになったが、同時にビーンが当時見た全てを新聞社に伝え、それが記事になるや更に彼らの名声は高まった。
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