『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

ゴウキ・ファミリー

ワザマエ

ズシャリ・・・


大男が倒れ伏し、ビクンビクンと痙攣する。



死～～ん・・・


立ち上がっていた者達を含め、襲撃者達は静まり返った。
頭が悪そうではあるがガタイが良くタフそうな大男が、一瞬にして床に伏した状況に驚き、声も出せないでいる。
皆が恐る恐るデニスに目を向ける。

手元に刀を持っているが、鞘から抜いてはいない。
では、大男は刀によって倒れたわけではない？
この場にいた襲撃者達はそう考えていたが、実際はデニスの居合いによって大男が頭を打ちのめされたに過ぎない。居合いでみね打ちというトリッキーな動きでありながら、抜刀、攻撃、納刀までの動きのあまりの速さに誰もがデニスが刀を抜いていないと勘違いをしていた。


「ま、まさか一喝で気を失ったのか・・・？」


デニスが刀を使っていない以上、大男が気絶したのはデニスは直前に張り上げた叫び声のせい？などと変な勘違いをし出す襲撃者達。


「なんだアイツ大男、見かけ倒しで実際は一喝されただけで気を失う気の弱いやつかよ・・・」


既に立ち上がっていたこれまた頭の悪そうな男は、目の前で起きたことをこのように解釈した。
倒れ伏した大男の頭にはデニスの刀の窪みの跡がくっきりついており、鼻、耳、口から血を出しているにも関わらず誰もデニスが刀を使ったとは気づいていなかった。かなりの馬鹿である・・・と言いたいが、実際にデニスが抜いているところを目で捉えられていない彼らには、仕方がないことなのかもしれない。


「なんだこいつ急に叫びやがって。ビビってる証拠じゃん？」


馬鹿な男が完全に舐めくさり、先ほどの大男と同じようにデニスに近寄る。

バタン・・・

だが、その男も一瞬にして床に倒れ伏す。


「あれ・・・？」


ここで流石に皆がおかしいと思った。
今度はデニスは一喝すらしていない。もちろん、今回も先ほどと同じように見えない速さの居合い抜きを見せただけなのだが。


「あれ・・・？こいつ・・・まさか・・・強い・・・？」


見えないが何かをしたのだろう、デニスに向かって歩いていた者達は流石にここにきてそれに気付いたがもう遅い。


「かかって来いや三下ぁぁ！！」


またもデニスの一喝。
次の瞬間、竜巻のような風が巻き起こり、一人がデニスの一振りによって宙を舞う。舞った男は体の腕と足があらぬ方向へ曲がっていた。

「ぶべっ！？」

更に次にもう一人がまたもきりもみするように宙を舞う。
二秒とかからず、二人の男が打ちのめされた。


「ひぃっ！」


魔法使い女が思わず手から炎の魔法を発する。
無詠唱でも使える簡易的なものだが、直撃すれば火傷を負う程度には使えるだけの大きさの炎が発生した。


「ふんっ！」


だがその炎も、デニスの一振りで真っ二つになり・・・


「ふんふんふんふんふんっっっ！！」


その後も剣を振り、二つに割れた炎はみじん切りにされ、やがて粒になって目に見えなくなるまで剣撃によって消失した。
興の乗った少しデニスは遊んでいる。



「ワザマエ！」


それを見た襲撃者達から歓声が上がる。
そして次の瞬間には、魔法使いの女も一刀により肩を砕かれ倒れ伏した。


「安心しろ、みね打ちだ」


デニスは最後にそう言って刀を納めるが、当の剣を食らった者は皆が失神、痙攣していて聞いてはいなかった。

もはや誰もデニスに歯向かおうなどと、愚かなことを考える者は誰もいなかった。


（何あの人・・・剣を持つと人が変わる・・・怖い）