『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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ゴウキ・ファミリー

女の戦い その9

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その感情はクレア自身にも未知なるものだった。
ただただ目の前にいる相手をに対する暴力的な衝動が抑えられなかった。
リノアが与えた魔法による小ダメージは、平時なら痛覚によって動きが鈍り、攻撃をためらわせるはずだったが、今のクレアは痛みなど意にも解さない。
体が動くなら、目の前にいるリノアを倒す。そのためにできることはする。考えるのはその一点だけだったのだ。


(私が、私がしたくてもできないのに、どうして貴方はゴウキの隣にいるのよ!!)


親の仇でも見るような目で、クレアはリノアを睨む。
体を縛る糸が肌に食い込む痛みなど彼女にはなかった。あるのはリノアに対する破壊衝動だけ。


「こ、こいつこんなにやべーやつなん?」


スミレが珍しく冷や汗を流す。
これまでどのような敵に対しても焦りを感じず、冷静に対処してきたスミレだが、目の前にいるクレアに対して初めて戦いの中で戸惑いというものを感じていた。


「ゴウキに会いにいく邪魔をするな!!どれだけ私を怒らせるんだぁぁ!!」


ギギギギギ・・・


突然激しく叫び、全身から血を吹きながらクレアが激しく体をばたつかせる。
それは猛獣の力を持った子供の癇癪のようであった。


「まじかよ!」


クレアはスミレが拘束のために張り巡らせた糸をついに緩めさせた。
動きを止めるために凍らせた体もバキバキと氷を割りながら、力ずくで体の自由を取り戻す。


「あはは・・・何だかあの女ゴウキ先輩みたい・・・」


「言ってる場合かよ・・・」



顔を引きつらせ、カラ笑いしながらそんな呑気なことを言っているリノアの言葉に、スミレは「確かにな」と内心同意した。
ゴウキの力を始めて見た者はいつだって顔を引きつらせている。今、自分達も同じような顔をしているのかなとスミレは思った。


「~~~~!!」


獣のような唸り声を上げながら、クレアは一瞬でリノアに間合いを詰め、自由になった腕で剣を振り上げる。


「っ!?」


ドォォォォン


最初の最初にクレアがくらったものと同じ罠魔法が発動した。
それはクレアが迫る前に、念のためにとリノアが仕掛けていたものだった。

突如発動した爆発魔法により、再び同じように吹き飛ばされるクレア。このときにクレアの手から剣が離された。


「今だっ!」


吹き飛ばされたクレアを追撃するようにスミレが動く。
リノアの攻撃が入った今、再びクレアを拘束するにはこの機会しかないと思ってのことだ。
体勢を立て直されたら、剣が手になくてももう二度と拘束されてはくれないのではないかとスミレは考えたのだ。


「なっ!?」


スミレは目を見開いた。
クレアは剣を手放しはしたものの、最初のときのようには吹き飛んでいなかった。吹き飛んでいる最中に体勢を立て直し、既に地に足をつけて立っている。
一度受けた攻撃だったためか、そこから立ち直るのも早かったのだ。


(まずい!)


接近の体勢に入っていたスミレは、ここで転身しようと動きを止める。今クレアに正面から接近してはならない。そんな直感があった・・・

だが、わずかにスミレは後れを取ることになる。


「っ!!」


クレアが力いっぱい握りこんだ拳が、スミレの頬に命中した。
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