『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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賢者リノア

無邪気な悪魔

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「よぅ、兄ちゃん。金持ってそうだな。分けてくれねーか」


トマスはたくさんの物を積んだバッグを背負っていた。傍から見ると行商か何かのようであるくらいなので、人気のない場所に入り込めば、ゴロツキに追剥ぎのターゲットにされるのは当然だ。

トマスがいた町とは比較にならぬほど、今の王都は治安が悪い。それを知らぬトマスは迂闊にも地雷を踏んでしまったことになる。
しかし、当のトマスは取り乱すことなく冷静にゴロツキに対応していた。


「あぁ、もしかして君たちが話に聞く『強盗』ってやつ?初めて見るわ」


トマスのズレた発言に、ゴロツキどもは怒りで表情を歪める。


「なんだお前田舎もん?それとも馬鹿にしてんのか?」


「お前もしかしてまだ 自分が死なないと思ってるんじゃないかね」


「ここじゃあ何が起きたってバレねえし、誰も助けに来てくれねぇんだぜ?」


ゴロツキ達は元々王都でこうした強盗を含めた犯罪行為で金を稼いでいた。
だが、このところゴウキ・ファミリーが町を巡回するようになり、実入りが以前とは比較にならないほどに落ちていたのだ。

金が無くなり、食える物も質が落ち、飲める酒も減り、女を買うことも出来なくなり、ゴロツキ共は鬱憤が溜まり、ストレスが限界にまで達しようとしていた。
故にトマスのズレた無邪気な発言にも、彼らは過敏に反応する。


「さっさと持ってる物全部置いていきな。そうすりゃちょっと怪我させるくらいで済ませてやるぜ」


ナイフをちらつかせ、そう言うゴロツキに対して、トマスは臆する様子もなく、むしろ余裕そうに微笑を浮かべて答える。


「ここでは何が起きたってバレないのかい?誰も来てくれないって本当?」


「あぁ?」


トマスの質問に、ナイフを持ったゴロツキが怪訝な顔をしたときだった。


ボンッ


ナイフを持った男の体が突然発火し、一瞬にして黒焦げになったのだ。



「なぁっ!?」


他のゴロツキ共は驚愕して後退る。
トマスは黒焦げになった男を神妙な顔で見つけると、やがて満足そうに頷いて言った。


「うん、僕の作った火炎系魔法魔道具、良く出来てるじゃないか!」


ナイフの男が黒焦げになり絶命したというのに、彼には全く悪びれる様子はない。むしろ無邪気に笑いながら、懐から何かを取り出してゴロツキどもに向き合った。


「誰も来なくてバレないなら、いいテストの機会だ。もうちょっと試してみよう」
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