502 / 508
賢者リノア
仲間はフォローしあおう (言い訳)
しおりを挟む
スミレの懸念通り、彼女が囚われた先から戻ってきた頃には全てが終わっていた。
リノアのストーカーは制裁を受け、抵抗勢力は一掃。裏でこそこそやっていたセントラルギルドの職員はファミリーの手下どもが見つけて制裁。
そしてリノアは救出され、ゴウキと良い雰囲気になっている。
「出番・・・なかったな」
後からやってきたデニスが苦笑いを浮かべて言った。
「アタシは少しはやることやっ・・・いや、なんでもない」
目に涙を浮かべながら、スミレは館に近づくまでの罠の解除で貢献したわ!と抗議したかったが、トマスが仕掛けた罠に気付かずに全員を巻き込んでしまうという失態を犯したので、悔しそうに歯噛みしながらも口を閉ざした。
「ちっ、それにしてもとんでもねーもん仕掛けてたんだな・・・」
スミレはそう言って悔しそうに俯く。
館周辺全てを吹き飛ばす爆発魔法が作動する仕掛けがあることを知ったスミレは、それに気づけなかった自分を恥じていた。
もしかしたらゴウキ達全員がその仕掛けで死んでいた可能性もあっただけに、スミレからすれば悔いても悔いても悔い切れない。忍者は罠のエキスパート。罠にかかって死ぬなど恥以外の何物でもない。スミレは忍者としてのプライドを深く傷つけられていた。
そんなスミレを気遣うようにデニスが言う。
「罠を作ったやつのスキルが高かったんだ・・・仕方がない」
「でも・・・」
それでもトマスにしてやられたという気分は晴れないスミレ。
そんなスミレにデニスは続けた。
「スミレは確かに脅威を見落とした・・・でも、結果としては全員無事だった。・・・アイツらのお陰だ」
そう言ってファミリーの手下たちをデニスは親指で指し示す。
手下たちはゴウキ達に命令されたわけでもなく、何か助力になればと思って後からついてきた者達だった。
「なんでも一人で背負わなくて・・・良いんじゃないかな・・・?仲間がいれば、フォローしあえば・・・」
「デニス・・・」
スミレはファミリーの手下たちのことを、心の底では急に増えた仲間程度にしか考えていなかった。
いや、いつ離反してもおかしく無い分、仲間という括りにして良いかすら迷うレベル・・・つまりは軽んじて見ていたのである。
だが、今回スミレは彼らにむしろ助けられた。
彼らを見る目を変え、傲慢だった自分を見つめなおさなければならないなとスミレは猛省した。
「・・・って、デニスは自分にそう言い聞かせてるんだな?」
「・・・」
スミレの指摘に、デニスは黙っているだけだった。良く見ると冷や汗をかいている。
スミレへの慰めは、一周回って実のところデニス自身のフォローでもあった。
何しろデニスは今回、本当に何も活躍できなかったのだから。
リノアのストーカーは制裁を受け、抵抗勢力は一掃。裏でこそこそやっていたセントラルギルドの職員はファミリーの手下どもが見つけて制裁。
そしてリノアは救出され、ゴウキと良い雰囲気になっている。
「出番・・・なかったな」
後からやってきたデニスが苦笑いを浮かべて言った。
「アタシは少しはやることやっ・・・いや、なんでもない」
目に涙を浮かべながら、スミレは館に近づくまでの罠の解除で貢献したわ!と抗議したかったが、トマスが仕掛けた罠に気付かずに全員を巻き込んでしまうという失態を犯したので、悔しそうに歯噛みしながらも口を閉ざした。
「ちっ、それにしてもとんでもねーもん仕掛けてたんだな・・・」
スミレはそう言って悔しそうに俯く。
館周辺全てを吹き飛ばす爆発魔法が作動する仕掛けがあることを知ったスミレは、それに気づけなかった自分を恥じていた。
もしかしたらゴウキ達全員がその仕掛けで死んでいた可能性もあっただけに、スミレからすれば悔いても悔いても悔い切れない。忍者は罠のエキスパート。罠にかかって死ぬなど恥以外の何物でもない。スミレは忍者としてのプライドを深く傷つけられていた。
そんなスミレを気遣うようにデニスが言う。
「罠を作ったやつのスキルが高かったんだ・・・仕方がない」
「でも・・・」
それでもトマスにしてやられたという気分は晴れないスミレ。
そんなスミレにデニスは続けた。
「スミレは確かに脅威を見落とした・・・でも、結果としては全員無事だった。・・・アイツらのお陰だ」
そう言ってファミリーの手下たちをデニスは親指で指し示す。
手下たちはゴウキ達に命令されたわけでもなく、何か助力になればと思って後からついてきた者達だった。
「なんでも一人で背負わなくて・・・良いんじゃないかな・・・?仲間がいれば、フォローしあえば・・・」
「デニス・・・」
スミレはファミリーの手下たちのことを、心の底では急に増えた仲間程度にしか考えていなかった。
いや、いつ離反してもおかしく無い分、仲間という括りにして良いかすら迷うレベル・・・つまりは軽んじて見ていたのである。
だが、今回スミレは彼らにむしろ助けられた。
彼らを見る目を変え、傲慢だった自分を見つめなおさなければならないなとスミレは猛省した。
「・・・って、デニスは自分にそう言い聞かせてるんだな?」
「・・・」
スミレの指摘に、デニスは黙っているだけだった。良く見ると冷や汗をかいている。
スミレへの慰めは、一周回って実のところデニス自身のフォローでもあった。
何しろデニスは今回、本当に何も活躍できなかったのだから。
1
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
親友に恋人を奪われた俺は、姉の様に思っていた親友の父親の後妻を貰う事にしました。傷ついた二人の恋愛物語
石のやっさん
恋愛
同世代の輪から浮いていた和也は、村の権力者の息子正一より、とうとう、その輪のなから外されてしまった。幼馴染もかっての婚約者芽瑠も全員正一の物ので、そこに居場所が無いと悟った和也はそれを受け入れる事にした。
本来なら絶望的な状況の筈だが……和也の顔は笑っていた。
『勇者からの追放物』を書く時にに集めた資料を基に異世界でなくどこかの日本にありそうな架空な場所での物語を書いてみました。
「25周年アニバーサリーカップ」出展にあたり 主人公の年齢を25歳 ヒロインの年齢を30歳にしました。
カクヨムでカクヨムコン10に応募して中間突破した作品を加筆修正した作品です。
大きく物語は変わりませんが、所々、加筆修正が入ります。
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる