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プロローグ
起死回生
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イリスを抱きしめた状態のまま、カイは虚ろな目でアドルを見据えるだけだったが、やがてゆっくりと口を開いた。
「アドル団長。貴方の持つその剣は聖剣ではない。聖剣を持つ私に貴方が勝てますか?年寄りの冷や水はほどほどにしたほうが良いでしょう」
一瞬、それを聞いたアドルの眉が釣り上がる。
「腐っても私は聖騎士です。聖騎士になれなかった貴方とは格が違うのですよ、アドル団長」
カイの目は虚ろだったが、それでも放たれる言葉には棘がある。
アドルは余裕そうな態度を崩しはしなかったが、それでも内心は酷く腹を立てているのだろう。怒りを抑え込むためか、すぐには反応を返さなかった。
「安い挑発だ」
少しの間を置いて、漸くアドルが口を開いた。
「お前こそ知っていよう、聖騎士の聖剣は、パートナーの聖女の魂と祈りによって出来ている。お前の聖女であるイリスがその様子では、もう聖剣は本来の力を持ってはいまい。だから私はイリスを狙った」
イリスを仕留めることで、カイの弱体化を図った。それを聞かされてなお、カイは激昂することはなかった。強大な怒りを抑えに抑えるだけの目的があったからだ。
「聖騎士だからと、私の上位に立っているつもりでいる場合ではないのではないか?」
聖騎士は聖剣というその個人に見合った剣を持っている。
それはパートナーとなる聖女の力と魂によって形成され、決まった形を持たない。ハルトは長剣と短剣の二刀、カイは曲刀といったように、潜在的にその個人に合った姿となって形成される。
カイの曲刀は今だその姿を留めているが、聖剣を作ったパートナーであるイリスが瀕死である今、聖剣もこの世から消滅しようとしている。
アドルの指摘を受けてもなお、カイは落ち着き払った表情のまま、静かに言った。
「力が落ちようと、聖剣は聖剣です。貴方が持つような有象無象のナマクラとは違います。俺の持つ剣の力が落ちたからと言って、貴方の持つ剣が強くなったわけではないでしょう?」
そう言い放ち、フッと小ばかにしたように笑う。
「ふっ、このような状況で良くもまぁ口が回る・・・」
カイは明らかに挑発している。何か狙いがある。それを認識しているアドルは冷静だった。いや、冷静であろうとしていた。
だがカイはアドルのことを良く知っている。
何が彼の心を乱すか、良くわかってしまっている。
「おや、教皇より賜りし栄えある己の剣を侮辱され、何とも思いませんか。あれほど誇りにしていた剣なのに、いくら聖剣に劣るナマクラだとしても、己の誇りを傷つけられてなお平気でいられるとは、貴方の騎士としての矜持も大したことはありませんね。だからこそ聖騎士になれなかったのか・・・」
ブツン
冷静に、あくまで冷静にギリギリまで怒りを堪えていたアドルの忍耐が切れた。
「減らず口ばかり叩きおって!今すぐ二人まとめて送ってくれる!!」
耐えていた分、解放された怒りの爆発は大きかった。
アドルは先ほどのハルトと同じように、カイに誘いこまれて不用意に間合いに入る。
「っ!!」
気付いたときには遅かった。アドルは接近して剣を振ろうとした瞬間、カイの手に持っている物に気が付く。
爆炎魔法の護符。
カイがここ封魔殿を強襲する際に、目くらましで王都の要所を爆撃した際に使った物である。
カイはその爆炎の護符を発動させ、辺りは大きな爆発に包まれた。
「アドル団長。貴方の持つその剣は聖剣ではない。聖剣を持つ私に貴方が勝てますか?年寄りの冷や水はほどほどにしたほうが良いでしょう」
一瞬、それを聞いたアドルの眉が釣り上がる。
「腐っても私は聖騎士です。聖騎士になれなかった貴方とは格が違うのですよ、アドル団長」
カイの目は虚ろだったが、それでも放たれる言葉には棘がある。
アドルは余裕そうな態度を崩しはしなかったが、それでも内心は酷く腹を立てているのだろう。怒りを抑え込むためか、すぐには反応を返さなかった。
「安い挑発だ」
少しの間を置いて、漸くアドルが口を開いた。
「お前こそ知っていよう、聖騎士の聖剣は、パートナーの聖女の魂と祈りによって出来ている。お前の聖女であるイリスがその様子では、もう聖剣は本来の力を持ってはいまい。だから私はイリスを狙った」
イリスを仕留めることで、カイの弱体化を図った。それを聞かされてなお、カイは激昂することはなかった。強大な怒りを抑えに抑えるだけの目的があったからだ。
「聖騎士だからと、私の上位に立っているつもりでいる場合ではないのではないか?」
聖騎士は聖剣というその個人に見合った剣を持っている。
それはパートナーとなる聖女の力と魂によって形成され、決まった形を持たない。ハルトは長剣と短剣の二刀、カイは曲刀といったように、潜在的にその個人に合った姿となって形成される。
カイの曲刀は今だその姿を留めているが、聖剣を作ったパートナーであるイリスが瀕死である今、聖剣もこの世から消滅しようとしている。
アドルの指摘を受けてもなお、カイは落ち着き払った表情のまま、静かに言った。
「力が落ちようと、聖剣は聖剣です。貴方が持つような有象無象のナマクラとは違います。俺の持つ剣の力が落ちたからと言って、貴方の持つ剣が強くなったわけではないでしょう?」
そう言い放ち、フッと小ばかにしたように笑う。
「ふっ、このような状況で良くもまぁ口が回る・・・」
カイは明らかに挑発している。何か狙いがある。それを認識しているアドルは冷静だった。いや、冷静であろうとしていた。
だがカイはアドルのことを良く知っている。
何が彼の心を乱すか、良くわかってしまっている。
「おや、教皇より賜りし栄えある己の剣を侮辱され、何とも思いませんか。あれほど誇りにしていた剣なのに、いくら聖剣に劣るナマクラだとしても、己の誇りを傷つけられてなお平気でいられるとは、貴方の騎士としての矜持も大したことはありませんね。だからこそ聖騎士になれなかったのか・・・」
ブツン
冷静に、あくまで冷静にギリギリまで怒りを堪えていたアドルの忍耐が切れた。
「減らず口ばかり叩きおって!今すぐ二人まとめて送ってくれる!!」
耐えていた分、解放された怒りの爆発は大きかった。
アドルは先ほどのハルトと同じように、カイに誘いこまれて不用意に間合いに入る。
「っ!!」
気付いたときには遅かった。アドルは接近して剣を振ろうとした瞬間、カイの手に持っている物に気が付く。
爆炎魔法の護符。
カイがここ封魔殿を強襲する際に、目くらましで王都の要所を爆撃した際に使った物である。
カイはその爆炎の護符を発動させ、辺りは大きな爆発に包まれた。
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