聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

文字の大きさ
14 / 203
反逆

神国の歪

しおりを挟む
「聖騎士ハルト。貴方も実際に反逆者であるカイと交戦し、深手を負ったと聞きました。それでもカイを足止めし、アドルの到着まで時間を稼いだことが結果的に事態の鎮圧へと繋がったのです。ご苦労様でありました」


「・・・っ!!ありがとうございます!」


法王ランスの言葉にハルトは弾かれたように即座に頭を下げ、感激のあまり言葉を詰まらせながらも感謝の言葉を述べる。



「しかし、聖騎士カイが反逆など・・・これは大問題ですな」


会議に参加している高官の一人、プレスケンが口を開いた。
アドルの顔がほんの一瞬だけピクリと引き攣る。


「救国の英雄ともされる聖騎士カイと聖女イリスの国への反逆。これは後々まで遺恨を残す事案となりましょう」


他の高官も続いた。
アドル達騎士の活躍を称えていたこれまでの場の空気が、一気に重苦しいものに変わるのを一同は肌で感じる。


「アドル殿。此度の貴方の活躍は確かに素晴らしいものがあるが、同時に責任も決して軽いものではないのではないか?」


高官の視線がアドルを射貫く。聖騎士の管理は騎士団のトップであるアドルの管轄だった。


「・・・面目次第もございません。全て私の不徳の為すところでございます」


アドルとハルトは鎮痛な表情で頭を下げる。
アドルは歯を食いしばり、屈辱に耐えていた。


「アドル殿の責任を問うは後で良かろう。問題はこれからどうするかだ」


そんなアドルに目もくれず、高官の一人が切り出した。


「事実を公表すべきではないんじゃないか?聖騎士と聖女の反逆など、許されるものではない」


「だがどうする?あの二人は既に討たれたのだろう?それをどう国民に説明する」


「だがしかし・・・」


ああでもないこうでもないと場が紛糾する。

サンクレアの聖女とは、女神ラビスの加護を受けた聖なる力のスペシャリスト。邪を祓い、怪我と病を癒し、国民の、果ては世界人類の平和を保つ者。そして聖騎士とは、その聖女の護衛にして共に邪を討つパートナーなのだ。
サンクレアの持つ軍事力・・・『聖なる力』の象徴であるのだ。その象徴である二人組が国に反旗を翻したことは、あまりに大きなスキャンダルとなるのは必須だった。

この事態に対しどのように対応するか。非常に難しい問題であり、簡単に結論が出ないのは仕方がないことであった。


「どうにもこうにも、これはもう正直に国民に話すしかありますまい」


最初に問題について切り出したプレスケンが言った。


「・・・これは認めたくはありませんが、やはり元より平民の出の者を聖騎士と聖女という大役に就かせることに無理があったのでしょう」


プレスケンの言葉にアドルは頭を下げたまま眉に皺を寄せ、ハルトは苦虫を噛み潰したような顔をした。

場の空気がまた変わった瞬間であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...