聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

文字の大きさ
15 / 203
反逆

理不尽

しおりを挟む
「平民の出か・・・そういえば、はそうでしたね」


思い出したように、他の高官が続く。


「元より彼らは大役の務まらないはずの存在であったと言わざるを得ませんな。いかに体裁を繕っていても、心の底までは変わらない。故に容易く闇に飲み込まれる」


「だから私は彼らを大役に就かせることに反対だったのだ!」


「当時彼らは国民の支持が圧倒的に高かったので仕方がない一面もあります。ただまぁ、元はといえば不用意に逆賊カイを騎士団にに問題があったのでは?」



ジッ・・・



ここで一斉に高官達の視線がアドルの方へ向いた。
アドルは頭を下げたままだが、無言の圧で視線が自分に突き刺さっていることをひしひしと感じる。
カイはかつてアドルが目をつけ、騎士団に引き入れた平民の子であった。そのカイが反逆を起こしたことにアドルに責任があるという流れがいつの間にか出来上がっている。
ハルトは反論したいが、立場上それが許されないことに歯がゆさを感じていた。
アドルが騎士団長として務めを果たし、顔に消えない傷を負いもしたのに糾弾されるとはあんまりではないか、そう強く訴えたくて仕方が無かった。

しかし当のアドルが黙って耐えている以上、ハルトがここで暴走をするわけにもいかないのだ。ハルトは拳を強く握り締め、ただただ叫びたい衝動を抑え込んだ。


「私に先見の明が無かった・・・人の本質を見る目が無かった。その言葉に尽きます。いかようにも処分を受ける覚悟は出来ております」


アドルはそう言い、ゆっくりと顔を上げた。
屈辱に満ちているはずの心を抑え込み、微塵にもそれを表に出さないアドルの自制心にハルトは胸を打つ。


「かつての弟子の暴走を許し、重要各所へのテロ行為、そして封魔殿強襲による宝物の喪失。被害は決して軽くはない…しかし」


淡々と述べていたプレスケンはここで言葉を区切る。
そしてアドルの顔をじっと見ながら、再び口を開いた。


「歴代最強と言われた聖騎士カイを身を挺して止めてみせたこと。それについては敬意を表すべきだろう。よってアドル騎士団長には処罰を与えるまでするのは妥当ではないと考える。どうだろう?」


そう言ってプレスケンは同意を求めるように周囲を見回した。
法王ランスを含め、他の高官達も一様に頷く。


「ご慈悲をありがとうございます。身に余る思いです」


アドルは深々と頭を下げる。
ハルトは悔しさで目に涙が滲んでいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...