聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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反逆

神国の蹂躙、聖騎士の迷い

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「ハルト・・・お疲れ様」


「マーサ・・・」


血だらけの鎧を着込み、虚ろな目で項垂れるハルトに、パートナーであるマーサが声をかけた。
ここは戦場。ついさっきまで、多くの騎士達がユーライ国の戦士と激しく交戦していた。
武器の質、数ともに勝るサンクレア騎士団はユーライ国の戦士を圧倒していたが、それでも被害が無いわけではない。激戦区ではハルトの敵の見方も大勢が彼の目の前で死んだ。そしてハルトも自身の手によって何人も、何十人も斬り殺してきた。
今この場はサンクレア騎士団の圧勝という形で終わっている。ここのみならずサンクレア軍はユーライ軍に連戦連勝、破竹の快進撃でもって首都の制圧も目の前というところにまで迫っていた。


「ハルト、怪我をしているわ」


ハルトの腕から血が流れているのをマーサが気付き、治療魔法で治療する。流れていた血は止まり、傷口は何も無かったかのように綺麗に塞がった。


「・・・」


ハルトはその様子を呆然と眺め、その状態のまま何を言うでもなく動きを止めていた。


「ハルト・・・?」


傷は癒えたが、ハルトの心は癒えない。敵国であるとはいえ、同じ人間を、それもサンクレアの一方的な事情で蹂躙することにハルトの心が悲鳴を上げていた。
サンクレアのユーライ侵行から数日・・・ハルトは既に百を超える人間を斬っていた。
聖剣も、鎧も血まみれだ。
戦ってみてわかったが、ユーライの戦士達は確かに変わった呪術でこちらの動きを止めようとしてくるが、人心を惑わすといったようなことはしてこない。そういった報告は一切上がってこない。

カイの心惑わし反逆を起こさせたというのは、本当にただの口実だったのだなとハルトは思い知り、その事がことさら彼の心を深く抉り傷つけていた。


「ハルト」


呆然とするハルトの手を、マーサが優しく包み込んだ。
そうするだけでマーサは何も言わなかったが、どうにか元気づけようとしてくれているのだとハルトは察し、どうにかマーサに笑いかけた。


「ありがとう」


マーサはただ頷いた。
そうだ、迷ってはいけない。自分は今、目の前にいる最愛の人のため、ラビス様の教えのためにただ剣を振るえば良いのだ。
そう自分に言い聞かせ、ハルトはまた次の戦場へと向かっていく。


ユーライ首都が陥落しサンクレアが戦争に勝利したのは、それから三日後のことであった。
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