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反逆
仕立て上げられた英雄
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「おお、よくぞ戻られました!」
ユーライ国首都を制圧し、サンクレアとユーライの戦争は概ねサンクレアの勝利という形で幕を閉じようとしていた。
まだユーライ各地で国王を含め軍の一部が抵抗をしているが、それでもほぼサンクレアの勝利という形になっている。ハルトは一足早くの帰還を命じられ、こうしてサンクレアに街宣した。都の門からサンクレア城までの道までは全てがハルト達の帰りを待ちわびた大衆で埋め尽くされ、ハルトは英雄として民から口々に称えられていた。
「国の英雄だ!」
「サンクレアの名が世界に轟くことになった功労者だ!」
「聖騎士様!」
事前にハルトには何の説明もなかったが、騎士団の・・・というよりハルトの街宣パレードが始まっていた。
ハルトは馬上から片手を挙げ、笑みを浮かべて大衆の声援に応える。大衆は英雄の帰還に熱狂している。
「邪教国は聖騎士カイ様を操って、このサンクレアを滅ぼそうとしたんだろう?」
「ハルト様がカイ様の異常に気付き、それを阻止することができたらしい」
「やっぱりハルト様は素晴らしい!救国の英雄だ!!」
「サンクレア万歳!」
大衆はサンクレア法王の発表である、聖騎士カイが邪教国ユーライの手によって操られ、傾国の危機に晒されていたという事実を信じていた。そしてそれを防いだのがハルトであるということですらも、全てを疑いなく信じている。
「・・・っ!」
ハルトは表面上は笑顔を浮かべていたが、内心は苦々しい重いでいっぱいだった。
違う、何もかも違う。
カイは操られてなどいない。
ユーライは人心を惑わすような術は使わない。
そして何よりハルトは救国の英雄なんてものじゃない。
ユーライとの戦争だって本当はまだ終わってはいない。ハルトは本来帰ってきて良い身ではないのだ。
そう叫びたかったが、当然ながらそれについては匂わす発言すら一切口にするなとアドルから釘を刺されていた。
ハルトは既にマーサの夫としてふさわしいように、相応の地位と名声が築かれていたのだ。
ハルトは邪教ユーライから国を救った英雄で、悪であるユーライを討つ「聖戦」から帰還した英雄なのだ。
「ハルト、受け入れろ」
いつの間にか隣に移動していた騎士団長アドルが当人にだけ聞こえる声で言った。
「この歓声が、この視線が、この熱気が、これからお前に向けられ続けることになる。これがお前がこれから歩み続ける道なんだ」
ハルトは表情を変えず、民の熱気を受け入れていた。
だが、その目は曇っていた。
ユーライ国首都を制圧し、サンクレアとユーライの戦争は概ねサンクレアの勝利という形で幕を閉じようとしていた。
まだユーライ各地で国王を含め軍の一部が抵抗をしているが、それでもほぼサンクレアの勝利という形になっている。ハルトは一足早くの帰還を命じられ、こうしてサンクレアに街宣した。都の門からサンクレア城までの道までは全てがハルト達の帰りを待ちわびた大衆で埋め尽くされ、ハルトは英雄として民から口々に称えられていた。
「国の英雄だ!」
「サンクレアの名が世界に轟くことになった功労者だ!」
「聖騎士様!」
事前にハルトには何の説明もなかったが、騎士団の・・・というよりハルトの街宣パレードが始まっていた。
ハルトは馬上から片手を挙げ、笑みを浮かべて大衆の声援に応える。大衆は英雄の帰還に熱狂している。
「邪教国は聖騎士カイ様を操って、このサンクレアを滅ぼそうとしたんだろう?」
「ハルト様がカイ様の異常に気付き、それを阻止することができたらしい」
「やっぱりハルト様は素晴らしい!救国の英雄だ!!」
「サンクレア万歳!」
大衆はサンクレア法王の発表である、聖騎士カイが邪教国ユーライの手によって操られ、傾国の危機に晒されていたという事実を信じていた。そしてそれを防いだのがハルトであるということですらも、全てを疑いなく信じている。
「・・・っ!」
ハルトは表面上は笑顔を浮かべていたが、内心は苦々しい重いでいっぱいだった。
違う、何もかも違う。
カイは操られてなどいない。
ユーライは人心を惑わすような術は使わない。
そして何よりハルトは救国の英雄なんてものじゃない。
ユーライとの戦争だって本当はまだ終わってはいない。ハルトは本来帰ってきて良い身ではないのだ。
そう叫びたかったが、当然ながらそれについては匂わす発言すら一切口にするなとアドルから釘を刺されていた。
ハルトは既にマーサの夫としてふさわしいように、相応の地位と名声が築かれていたのだ。
ハルトは邪教ユーライから国を救った英雄で、悪であるユーライを討つ「聖戦」から帰還した英雄なのだ。
「ハルト、受け入れろ」
いつの間にか隣に移動していた騎士団長アドルが当人にだけ聞こえる声で言った。
「この歓声が、この視線が、この熱気が、これからお前に向けられ続けることになる。これがお前がこれから歩み続ける道なんだ」
ハルトは表情を変えず、民の熱気を受け入れていた。
だが、その目は曇っていた。
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