聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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反逆

決起

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夜明けにそれは起こった。

突然首都にいるユーライ国民が決起し、暴徒と化したのだ。
前日の戦の疲労も抜けきらないうちから数多の市民に襲われ、サンクレアの進駐軍はうまく抵抗することも出来ずに葬られていく。
足や腕を失った傷病兵が手当を受けている病院にも押しかけ、大して動けない傷病兵はほぼ一方的に全員が殺された。老婆から子供までもが、思い思いに武器を持ってサンクレアの騎士達に容赦なく襲いかかる。

これはユーライ国王軍の迎撃に失敗し、大敗したことを知っての決起だった。
占領時におけるユーライ国民の恨みは募りに募り、もはやサンクレア軍への殺意は爆発し留まるところを知らない。



「何だと!?馬鹿な!」


執務や軍議に追われ、2時間も寝てない状態で叩き起こされたジーミルは市民が決起した報告を受けて戦慄した。
籠城して当面は安全だと勝手に勘違いをしてしまっていたと気付いたが遅かった。前日に戦で消耗し、外に国王軍が来ているこの状況で、予め決起が促されていた市民が立ち上がれば壊滅的な被害を受けることになると、そんな当たり前のことが頭から抜け落ちていた。


「長官!指示を!!」


「長官!」


首都の各所から次から次へと指示を仰ぐ伝令がやってくる。
もはや首都は進駐軍にとって阿鼻叫喚の地獄絵図と言って良かった。今更何をどう指示したところで、この状況がひっくり返るはずもない。何しろユーライ国民の数はこの首都だけでも進駐軍の十倍以上もいるのだ。


「ここを捨てる」


こういうときに限り、ジーミルの判断は早かった。


「騒ぎに乗じてここより脱出し、周辺の進駐軍と合流する」


言うが早いか、ジーミルは速足で退路を進む。
部下の制止の声も無視した。もはやこうなっては反乱を起こしている市民たちも自分が死ぬまで戦うだろう。ジーミルはこんな異郷の地で殉じるつもりはなかった。


「門が内側から開かれました!」


そこへ新たに伝令兵がやってくる。
首都の外壁の門が暴徒化した市民によって開かれてしまったらしいことを察すると、ジーミルは顔を歪ませる。
門が開いたとなると、雪崩のようにユーライ国王軍が突入してくるだろう。時間をかければかけるほど、脱出できる確率が低くなっていく。


「各自の判断で迎撃せよ。逃げることは許されん。これは神が与えたもうた邪教に抗う試練なのだ。」


ジーミルは無責任にそれだけ言うと、こっそりと王城の裏口から出て、予め用意しておいた早馬に跨った。
だが、その瞬間・・・農具や包丁を持った市民が束になってジーミル達に襲い掛かった。
不意を突かれたジーミルは、桑で顔面を割られて絶命する。その場に残った騎士も応戦したが、数の力にはかなわずに数分しないうちに全員が殺された。

こうして首都を制圧していたサンクレア軍は、内外からの攻撃を受け全滅することになった。
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