聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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反逆

誤魔化し

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「騎士団長。君がカイが死んだと言わなければ、我々が判断を誤ることもなかったのではないか」


「なぜ不確かな事実を我々に報告した?」


重鎮達はよってたかってアドルにそう問い詰める。


「全て、私の短慮ゆえの失態でございます」


アドルは苦笑いを浮かべそうになるのを堪えながら、それでも沈痛な表情を浮かべながら頭を下げて謝罪する。

実際はアドルは「カイは」程度のニュアンスで報告したに過ぎない。それを重鎮達は勇み足で「死んだ」と解釈しただけなのだ。カイが反逆、そして死亡したという事実はユーライ国に対して侵攻をするための大義名分として必要だったとはいえ、結局は重鎮達の自業自得である。

だが、それをアドルが口にすることは勿論無い。立場が弱い故に、全て自分が悪い・・・と頭を下げる、これだけである。


「ともあれ過ぎたことは仕方がない。これからどうするかという話だ。一週間後には『降臨の儀』が行われる。それをどうする?」


頭を下げているアドルを視界にすら納めずに、一人の重鎮が切り出した。

『降臨の儀』とは、年に一度、サンクレアに女神ラビスが天上より降臨する日である。
ラビスが人々の前に姿を見せ、実際に神の声を聞かせるこの日には、世界中からラビス教徒が集まる。ラビスの有難いお告げを聞くという、ラビス教の一大イベントであるこれを控えている今、サンクレアにとってのスキャンダルは何が何でも避けたいところであった。


「こうなってはユーライのことが片付くまで、降臨の儀を遅らせるしかあるまい」


「そんなバカなことが出来るわけないだろう。既に一か月前から滞在して待っている教徒までいるくらいなのだ。ここで延期になどしたら、どれだけサンクレアの威厳が失墜すると思っているのだ」


「だがしかし・・・」


重鎮達はそれぞれに意見をぶつけ合うが、結局良い答えが出るはずもなく議論は空転した。
ある程度時間が経過した頃、一人がアドルに質問をした。


「騎士団長。最低でも降臨の儀の終わる一週間後まで、騎士団の総力をかけてユーライ国についての情報規制をすることはできるかね?」


「一週間・・・やってやれなくはございません」


アドルは少し考えた後に、そう答えた。


「ではユーライ国の制圧と並行して、それを何とかやってくれたまえ」


とりあえず降臨の儀までは凌ごうと重鎮達は考え、アドルにそう命じた。
降臨の儀さえ凌げればとりあえずどうでも良いと、議論に疲れた彼らが出した結論だった


「仰せのままに」


アドルはそう言って礼をし、退室した。
内心では重鎮達に呆れ返っていたが、それを表情に出すことはない。
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