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反逆

降臨祭 その1

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神国サンクレアの大行事である降臨祭の日がやってきた。

サンクレア上層部はユーライ国の戦況などは一切国民に知られないよう箝口令を敷き、徹底して情報を秘匿した。
その甲斐あってかユーライのことは今だに国民で話題になることはなく、戦勝ムードのままサンクレアでは降臨祭が行われようとしている。
世界中からラビス教徒が集まり、サンクレアは多い賑わった。


「どうにかこうにか、こうしてこの日を迎えることが出来ましたな」


ユーライの戦況を知る高官が、法王城から見渡せる下界の人混みを眺めながら言った。


「今日さえ凌いでしまえば、とりあえず最悪の事態は防げるだろう」


別の高官が同調する。
降臨祭のように教徒が集まる予定があるときに、サンクレアの大恥を晒すようなことはどうしても避けたかった。降臨祭の失敗は、サンクレアの権威の失墜に繋がる。そうなれば高官である彼らの立場が危うい。
どうせ不都合な事実が露呈することになるのなら、降臨祭の後に露呈したほうが断然マシなのだ。


「で、肝心のユーライの方はどうなってる?あちらの対処も同時にやっておくように言ってはおいたが・・・」


「芳しくない状況らしい。事態は進展どころか悪化の一途とも言われている。極力騒ぎにならないように兵の動員もひっそりやっているのが仇となってる感じだな」


サンクレアはユーライの制圧に派手に動かないようにしていた。
既にユーライに勝ち、統治していることになっているはずの国に露骨に兵を増員させれば、国民に疑惑を抱かせてしまうと、降臨祭が終わるまでは極力派手に動かないようにしていたのだ。
それがユーライ制圧の大きな足かせになり、既にサンクレア騎士団による占領地は全てが奪還されてしまってすらいた。


「ちっ、騎士団どもは普段無駄飯食らいしているくせに、肝心な時に役に立たないな。あまり時間がかかるようなら来年度の予算を削るか」


「そうだな。魔族を殲滅した今、騎士団にそこまで無駄な予算を回すこともないだろう」


彼ら教会の高官は、騎士団を野蛮な猿程度にしか思っておらずとことん見下していた。
サンクレア上層部の都合だけで降臨祭までに兵を大きく動員できぬようになってしまっていることで、国王軍の反撃によりユーライにいる進駐軍がどれだけの犠牲を出しているか知らなかったし、興味もなかった。
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