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反逆
降臨祭 その2
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「随分と厳重な警備ですね」
人でごった返す城下町。
それをじっと見守っている、こまめに配置された騎士。
降臨祭は重大行事故に警備が厚くなるのは必然だが、今年のそれは例年に比べて倍以上の騎士が動員され、厳重に厳重を重ねたような警備であった。
それを見たハルトは、感嘆して声を洩らした。
「上からの要望で、今回は遊ばせている騎士はいないほど厳重にしてある。何か考えがあるんだろう」
そう答えるのはアドル。
ユーライのこともあり、降臨祭は何があっても失敗があってはならない。故に神経質になった上層部のリクエストに応えるべく、アドルは全てを騎士を動員させて警備に当たらせていた。鼠一匹入られないほどであると自負しても良いくらいであった。
「それなら、本当は僕も・・・」
「お前にはお前のやるべきことがある」
言葉をアドルに遮られ、ハルトは顔を曇らせる。
アドルは騎士の鎧を着込んでいるのに対し、ハルトは白を基調としたラビス教団の正装を身に着けていた。腰元に下げてある二本の聖剣だけがかろうじてハルトが騎士であることを証明しているようなものだ。
ハルトは警備から外されていた。
何故ならパートナーである聖女マーサとの婚約の儀を、今回の降臨祭の後で執り行うことになっているからである。
ハルトとマーサが婚約者であることは周知の事実だが、それでも正式にこうして形にするのはこれが初であった。
婚約の儀を執り行えば、もう後戻りは出来ない。不可逆のレールが敷かれ、ハルトはそのレールを一生進み続けることが強いられることになる。
多分に政治的思惑が絡みつく聖騎士ハルトと聖女マーサの婚約。
降臨祭も大事であるが、婚約の儀もまたその次に大事なものであった。それだけサンクレアの今後を占うことに繋がるイベントなのだ。
だからこそ、彼のそんな大事な役目を放棄させないためにユーライ国の現状についてやクリス達の死については、一切ハルトには話していなかった。
知れば必ずハルトは聖剣を取ってユーライへ赴く。どれだけハルトの立場の重要性を説いたところで「こんなところで大人しくしている場合ではない」と突っぱねるのが目に見えた。ハルトの情報はサンクレアがユーライに勝った、というところで止まっているのだ。だから今もこうして大人しくしているし、警備が厳重になっている理由についても知らないのである。
(まぁ、この男にはこれがお似合いか)
アドルは内心そう思った。
人情に熱く、世情に疎いハルトには全てを知らせず、適当に神輿を担いでやるくらいが丁度良い。難しいことを考えるのは他の人間がやるべきだと。
そんなこんなで、降臨祭は複雑な事情を抱えたまま始まろうとしていた。
人でごった返す城下町。
それをじっと見守っている、こまめに配置された騎士。
降臨祭は重大行事故に警備が厚くなるのは必然だが、今年のそれは例年に比べて倍以上の騎士が動員され、厳重に厳重を重ねたような警備であった。
それを見たハルトは、感嘆して声を洩らした。
「上からの要望で、今回は遊ばせている騎士はいないほど厳重にしてある。何か考えがあるんだろう」
そう答えるのはアドル。
ユーライのこともあり、降臨祭は何があっても失敗があってはならない。故に神経質になった上層部のリクエストに応えるべく、アドルは全てを騎士を動員させて警備に当たらせていた。鼠一匹入られないほどであると自負しても良いくらいであった。
「それなら、本当は僕も・・・」
「お前にはお前のやるべきことがある」
言葉をアドルに遮られ、ハルトは顔を曇らせる。
アドルは騎士の鎧を着込んでいるのに対し、ハルトは白を基調としたラビス教団の正装を身に着けていた。腰元に下げてある二本の聖剣だけがかろうじてハルトが騎士であることを証明しているようなものだ。
ハルトは警備から外されていた。
何故ならパートナーである聖女マーサとの婚約の儀を、今回の降臨祭の後で執り行うことになっているからである。
ハルトとマーサが婚約者であることは周知の事実だが、それでも正式にこうして形にするのはこれが初であった。
婚約の儀を執り行えば、もう後戻りは出来ない。不可逆のレールが敷かれ、ハルトはそのレールを一生進み続けることが強いられることになる。
多分に政治的思惑が絡みつく聖騎士ハルトと聖女マーサの婚約。
降臨祭も大事であるが、婚約の儀もまたその次に大事なものであった。それだけサンクレアの今後を占うことに繋がるイベントなのだ。
だからこそ、彼のそんな大事な役目を放棄させないためにユーライ国の現状についてやクリス達の死については、一切ハルトには話していなかった。
知れば必ずハルトは聖剣を取ってユーライへ赴く。どれだけハルトの立場の重要性を説いたところで「こんなところで大人しくしている場合ではない」と突っぱねるのが目に見えた。ハルトの情報はサンクレアがユーライに勝った、というところで止まっているのだ。だから今もこうして大人しくしているし、警備が厳重になっている理由についても知らないのである。
(まぁ、この男にはこれがお似合いか)
アドルは内心そう思った。
人情に熱く、世情に疎いハルトには全てを知らせず、適当に神輿を担いでやるくらいが丁度良い。難しいことを考えるのは他の人間がやるべきだと。
そんなこんなで、降臨祭は複雑な事情を抱えたまま始まろうとしていた。
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