聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

反逆

暴露

カイによる音響ジャックが始まると、上層部と騎士団は上を下への大騒ぎとなった。


「一体どうした！？何の不具合だ！！」


重鎮が叫ぶと、アドルが冷静な顔でそれに答えた。


「直ちに調査します。まずは音響魔法装置の使用を直ちに中止してください」


そんなアドルの言葉に、重鎮は激昂する。


「馬鹿を言うな！降臨祭を中断するというのか！！」


「お言葉ですが、こうなってしまうともう既に円満な行事の続行などは不可能です」


「駄目だ！すぐに犯人を見つけ出し、降臨祭を再開させろ！！」


「いや、ですから」


アドルがどのように言おうと、サンクレア上層部はあくまで降臨祭の再開に拘った。
音響装置の使用中断をすることも出来ず、無駄に対応を遅らせた結果、最悪の事態を招くことになる。


『まず皆さまには知っていただきたいことがございます。サンクレアではユーライ国を制圧したと発表がされているでしょうが、それは事実と異なります。国王軍は健在ですし、既に首都を始め、各占領地も奪還されております』


この言葉をきっかけとして、一瞬にして神都全域に喧騒が広がった。


『繰り返しますが、ユーライ国は健在です。まだサンクレアには屈しておりません。それに加え、サンクレアの切り札である聖女アルマと、聖騎士クリスは私の手によって討たれました』


ゾワッと、重鎮達は背筋の凍るような思いをした。
絶対に知られてはいけないことが、よりによってこの降臨祭というタイミングで暴露されてしまったのだ。


「な、なんだって！？」


思わず大声を上げて驚愕するのはハルトだった。
ハルトにとって仲間である聖騎士クリスの死は完全に寝耳に水だった。信じられないといったように重鎮達に目をやると、彼らはスッとハルトから気まずそうに目を逸らした。
その態度が、まさにクリスの死が事実であると証明しているようなものであった。


「馬鹿な・・・」


ハルトは愕然として棒立ちになっていた。



『疑いになられる人もいるでしょうが、少し調べればわかることです。何度も繰り返しになりますが、ユーライは健在です。聖騎士と聖女を討った私が付いているだけに尚更です。これからユーライはサンクレアに対し反撃に出るつもりですが、断言しますがサンクレアは負けます。ここは廃都になるのです』


このカイの言葉が言い終えて一瞬は神都は静寂に包まれた。
だが、言葉の意味を理解した人々が我に返ると「どういうことだ！？」「本当のことなのか？？」と所々で声が上がり出していた。



「カイめ・・・やってくれおるわ」


顔面蒼白になっている重鎮達とは裏腹に、アドルは嬉しそうに口角を上げていた。