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反逆

考え方の違い

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「ハルト!」


騎士団長室を出たハルトは、突然声をかけられた。
ハルトの婚約者であり、聖女であるマーサであった。


「マーサ。どうしてこんなとこに」


騎士団庁舎に聖女であるマーサが入ってくるのは珍しいことであった。
ハルトの問いに、マーサは焦っていう様子で答えた。


「ハルトがユーライ国に発つかもしれないって聞いて、慌てて来たの!・・・ねぇ、本当にユーライに発つの?」


恐る恐るといったようにマーサがそう訊ねる。
ハルトは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべ、地面に視線を落としながら答えた。


「いや、僕はユーライには行かないよ。ここサンクレアでカイが来るのを待つべきだーー そう言われてる」


ハルトの本心としては、カイが身を寄せているというユーライに今すぐにでも発ちたかった。
そして決着をつけたいーー そう思っていたが、それは叶わなかった。それがハルトには悔しくて仕方がなかった。


「そうーー 良かったわ」


だがそんなハルトとは対照的に、マーサは心底安堵したようにため息をついた。


「良かった?どうして?決着をつけるのがどんどん遅れることになるじゃないか」


ハルトが問うと、マーサは首を小さく横に振る。


「私は嫌よ。ハルトがこれ以上危険に身をさらすことになるなんて。今回は中止になっちゃったけど、私たちの婚約の儀だってもうすぐなのに・・・」


婚約の儀が終われば、ハルトとマーサは実施的に聖騎士と聖女として勤めることはなくなる。
サンクレアでは聖騎士聖女の座が空白となるが、魔族という最大の敵を壊滅させた以上、それは大きな国家不安にならないとされていた。


「それはそうだけど・・・けど、今は僕がやるしかないじゃないか。降臨の儀のときにも、僕は演説で教徒達に約束をした。なのに」


「なのにじゃないわ」


納得できないようにしているハルトの言葉を、マーサは遮った。


「私たちは、もう実質的には現場に出ちゃいけない立場なんだよ?わかるでしょう?危険に簡単に身を晒して良い身分じゃないの」


「・・・!」


マーサに言われ、ハルトは押し黙る。
既に自分達の動向には、様々な政治的な影響がついて回るようになっている。
唯一残った聖騎士であるハルトが動くことで、教徒達に対するイメージ的なメリットもあるが、既に未来の重鎮として道の開けているハルトを積極的に前線で運用しようという考えは上層部には無かった。


「私たちは、もう十分に戦ったわ。これからは、自分達の幸せのことも考えていきたいの・・・」


マーサの言葉を聞いて、ハルトはぐっと息を飲んだ。
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