聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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反逆

邪魔者

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ハルトは騎士として実直な男だった。
剣を手に取った時から自分の体は騎士団、ひいては国、そしてラビス教のためにあると考え、自分の命は、力は、全てはそれらのために捧げたものとして考えていた。
だから、ハルトは聖女マーサとの結婚が決まっている今となっていても、自分はラビス教のために剣を振るうべきと考えていた。
それによって命を落とすことになったとしても、それは本懐であると。彼は本気でそう考えていた。


一方で、ハルトのパートナーであるマーサの考えは違った。
彼女は目の前にある危機への対処よりも、自分達の将来のことについて考えていた。そして、自分達は既にただの聖騎士と聖女という枠組みから外れ、高度な政治的事情の絡む存在になっているということを自覚していたのだ。

ハルトが思うように本当に死んでしまっては大きな混乱も起こるし、サンクレアの損失は計り知れないものになる。そのことをしっかりと自覚し、軽はずみな行動はすべきではないと考えていた。


「もう私達には自分の立場というものがあるわ。軽はずみに動いていいものじゃないのよ」


カイの討伐など、現場の人間に任せてしまえば良いーー 極端に言えばマーサの考えはそれであったし、実際ハルトの立場的にはそうするのが正解である。アドルがカイに対しの体勢を取るように指示したのも、つまるところそういう思惑が動いているからだ。
そこではハルトの意思など関係ないのである。


「わかってるよ。わかってる・・・」


ハルトはそう言うが、本心ではそうでないことはマーサにもわかった。どこまでも現場主義の人間であるハルトには、本当は今にでもユーライにすっ飛んで行きたいのが本音であった。ハルトはまだ大人になり切れていないのである。


「心配しなくても、僕は動くことはない。僕だって自分の立場は理解してる」


ハルトはそう言って、暗にこの話は終わりだとばかりにその場を去って行った。
その姿を見送ったマーサは、僅かに顔を顰める。


「カイ・・・どこまでも邪魔をするのね」


そう吐き捨てるマーサの言葉を、聞いた者はいなかった。
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