75 / 203
反逆
崩壊の序章
しおりを挟む
「あら、この店も閉めたのね」
降臨の儀での一件以来、神都では世界で一番の都市である中心街ですら店を閉める者がポツポツ現れた。
カイによるサンクレア滅亡の宣言を聞き、我先にと逃げ出した者達である。
「聖騎士であるハルト様に任せれば恐れることなど何もないのに」
「ラビス様のお膝元であるこの神都が本当に滅ぶと思っているんだろうか?」
「後で後悔したって、この中心街で出た空きスペースはすぐに埋まるから戻ってくることなんて出来ないのに、馬鹿なもんだよ」
中心街にいる敬虔なラビス教徒は店を閉めた者達を蔑んでいた。
彼らはハルトが、騎士団が本気で討伐に乗り出せば、カイによる脅威などすぐに排除できると本気で考えていたのだ。
一方で、逃げ出した者達は違った。
ハルトにはカイの脅威を祓うことは不可能であると考えていたのだ。ある者は人類最強と呼ばれたカイを称えていたし、ある者はハルトのことをどこか頼りないと感じていた。いずれにせよ、この神都にいれば巻き添えを食らって死ぬことになるーー そう考えてこの神都を離れる決断をした。女神ラビスが降臨しておきながら、カイ一人どうにも出来ないではないかーーと、その事実を見せつけられたこともその判断を下す者達に拍車をかけていた。
中心街ですらそうであるので、比較的信仰の薄い郊外エリアにいる住民は尚更だった。
郊外エリアでは既に多くの住民が移住を開始していた。
ある者はユーライへ、またある者は別の国へ・・・いずれにせよ、サンクレアを離れる者が後を絶たなかったのである。
上層部はこれを止めようとはしなかった。やれば更なる混乱を招くことになるからである。
栄えある神都から移住する者が大量に現れるなど面子の潰れる話であるが、それでもカイの一件からようやくいくらか教徒たちの混乱を抑え込めた今、再び刺激するようなことを避けたいと考え、結局大量移住に関してはなすが儘の状態にするしかなかった。
「・・・本当、腹が立つわ」
法王城の見晴台から転移する元住民達を見て、マーサは苛立たし気に呟いた。
神都から逃げようとしている連中は、聖騎士ハルトによる庇護より、逆賊のカイの脅威のほうが大きいと恐れている。自分のパートナーであるハルトが下に見られている状況に、マーサのストレスは極限に達しようとしていた。
「せっかく消えたと思ったのに、どこまでもしつこい」
降臨の儀での一件以来、神都では世界で一番の都市である中心街ですら店を閉める者がポツポツ現れた。
カイによるサンクレア滅亡の宣言を聞き、我先にと逃げ出した者達である。
「聖騎士であるハルト様に任せれば恐れることなど何もないのに」
「ラビス様のお膝元であるこの神都が本当に滅ぶと思っているんだろうか?」
「後で後悔したって、この中心街で出た空きスペースはすぐに埋まるから戻ってくることなんて出来ないのに、馬鹿なもんだよ」
中心街にいる敬虔なラビス教徒は店を閉めた者達を蔑んでいた。
彼らはハルトが、騎士団が本気で討伐に乗り出せば、カイによる脅威などすぐに排除できると本気で考えていたのだ。
一方で、逃げ出した者達は違った。
ハルトにはカイの脅威を祓うことは不可能であると考えていたのだ。ある者は人類最強と呼ばれたカイを称えていたし、ある者はハルトのことをどこか頼りないと感じていた。いずれにせよ、この神都にいれば巻き添えを食らって死ぬことになるーー そう考えてこの神都を離れる決断をした。女神ラビスが降臨しておきながら、カイ一人どうにも出来ないではないかーーと、その事実を見せつけられたこともその判断を下す者達に拍車をかけていた。
中心街ですらそうであるので、比較的信仰の薄い郊外エリアにいる住民は尚更だった。
郊外エリアでは既に多くの住民が移住を開始していた。
ある者はユーライへ、またある者は別の国へ・・・いずれにせよ、サンクレアを離れる者が後を絶たなかったのである。
上層部はこれを止めようとはしなかった。やれば更なる混乱を招くことになるからである。
栄えある神都から移住する者が大量に現れるなど面子の潰れる話であるが、それでもカイの一件からようやくいくらか教徒たちの混乱を抑え込めた今、再び刺激するようなことを避けたいと考え、結局大量移住に関してはなすが儘の状態にするしかなかった。
「・・・本当、腹が立つわ」
法王城の見晴台から転移する元住民達を見て、マーサは苛立たし気に呟いた。
神都から逃げようとしている連中は、聖騎士ハルトによる庇護より、逆賊のカイの脅威のほうが大きいと恐れている。自分のパートナーであるハルトが下に見られている状況に、マーサのストレスは極限に達しようとしていた。
「せっかく消えたと思ったのに、どこまでもしつこい」
0
あなたにおすすめの小説
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる