聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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反逆

悪魔のような

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これはユーライ国軍がサンクレアとの国境近くに展開される少し前の話ーーー


「さて、いよいよですな」


戦場に向けて歩を進めるユーライ国王の横をカイが歩いていた。


「ここまで巻き込んでしまったことは、本当に申し訳ないと思ってます」


笑みを浮かべながら軽い口調でそう言うカイからは、本当に申し訳なく思っているのか少しばかりわからないところがあった。しかし、ユーライ王は首を横に振って答えた。


「元より失われたはずの命じゃ。消え去るはずだった国じゃ。それを救われた。チャンスをくれた。もはや貴殿にはどれだけ感謝の言葉を重ねても足りないくらいだ」


ユーライ王の言葉に同感なのか、周囲にいる近衛兵達も皆が同時に頷いた。


「この命、貴殿の好きなように使うと良いだろう」


ユーライ王の言葉にカイは少しばかり苦笑いを浮かべながら


「ではお言葉に甘えて」


そう答え、進軍を続ける。

ユーライにいたサンクレアの進駐軍をほぼほぼ一掃したという報が上がると、ユーライ国はサンクレアへの進軍を開始した。
これはカイののためのものであった。
これのためにカイはサンクレアがユーライへの侵略を完了させるために待っていたのだ。ユーライ国王に近づき、恩を売り、軍を自分の思うままに使えるようにするために。

これから始まる作戦は、ユーライ国王軍に大きな戦死者を出す可能性があるものだった。
死地に向かえと、そう言われて素直に軍を進めてくれるかは正直なところカイにとって賭けではあったが、それでも拍子抜けするくらいあっさりとユーライ王も兵も、カイの言う通りに動いてくれた。

ユーライ国は礼を重んじる国。
恩を受けた相手には、それが誰であれ礼を尽くすのが国民性であった。そこには身分も民族も関係がなかった。
だから、カイが自分の目的のために軍を展開してくれと願えば、迷わずそれに従った。


(さしづめ、俺は善良なユーライ国民性に目を付け、利用している悪魔というところか)


カイは自分の行いを鑑みて、自嘲気味に笑った。
これから多くの血が流れることになる。いくらそれはカイに対する恩に対する報いだとしても、カイが手引きして引き起こされる戦ということは拭いようのない事実であった。

カイにも自責の念はあった。
だが、それ以上に目的を達したいという思いが勝った。

愛する女、イリスを救うためーー

そのためにも、カイはこれからやる悪魔のような行動も迷いなくやり通すーー そう考えていた。
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