聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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反逆

アドルの家での顔

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ハルトが大司教と話をしていた頃、アドルは法王城の敷地内にある自宅へと足を運んでいた。
アドルの家は歴代聖騎士団の騎士団長にあてがわれる屋敷であり、ここはセキュリティーも完備ながら買い出しも警護の騎士に頼むことができるという、騎士としては破格の待遇である。
法王城敷地内に住める騎士など騎士団長を除けば聖騎士くらいであるが、下手な神官や高位貴族よりもずっと優遇されていた。
聖騎士団団長という肩書は、サンクレアの国防にとって非常に重大なものである故に、身分が自体がそれほど高くなくても重用されている。


「父上!」


アドルが屋敷へ戻ると、彼の次男であるレイドが駆けてくる。


「はしたないぞレイド。屋敷の中を駆けるなど」


そう言ってレイドを咎めるのは長男であるラルフである。
ラルフは15歳、レイドは9歳。二人ともアドルに憧れ、騎士を目指している。ラルフはもう半月で実際に聖騎士見習いとして入団することが決まっていた。


「おかえりなさいませ」


そこへ僅かに遅れてやってきたのは、アドルの妻であるカトレア。


「うむ、今帰った」


アドルは最愛の家族を目の前にして、ようやく一息ついたと言わんばかりに頬を緩ませた。
アドルの屋敷には使用人がいるが、アドルが帰宅したときは誰よりも先に家族の顔が見たいという意向により、基本的に使用人がアドルを出迎えることはない。
騎士団長になる前の、使用人のいない生活を送っていたときからの『家族の顔を見て初めて帰ったきたという気分になれる』という感覚を尊いを思っていてのことだった。アドルはそれだけ家族のことを愛している。


「父上。これから一体どうなるのでしょう?」


レイドは不安そうな表情でアドルに問う。
絶対魔法障壁が展開され、城内も慌ただしくなれば流石に不安になるであろう。言葉には出さないが、カトレアもラルフも同じように不安を抱えているような表情であることにアドルは気付く。


「大丈夫だ。お前達は心配することなく、家にいなさい。私が全て終わらせるから、それまでは決して外に出ないことだ」


アドルがそう言うと、家族一同は安堵したような表情を浮かべる。皆、アドルのことを信頼していた。これまで彼が言った言葉を覆すようなことは一度も無かったからである。


「父上がそうおっしゃるということは、間違いなく大丈夫なのですね父上!」


レイドが念を押すように言うと、アドルは優しい笑みを浮かべながら頷いた。
カイが何をしようと、必ず家族たちを守ってみせる。決してカイの思い通りにはさせないと、アドルは心に誓ったのだった。
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