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反逆

法王の弱み

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「もらうぞ」


カイはそれだけ言うと、法王の返事を待たずにテーブルの上に置いてあるワインの瓶を手に取った。
グラス一杯で聖騎士三か月分の給金に相当するだけの高価なワインである。


「ふぅ・・・確かに上等なワインだ。こんな良い酒を飲んで、自分の趣味の少女を抱けて、実に良い身分だな法王ってやつは」


カイはかつての自分では飲むことの出来なかったワインを飲んでから、嫌味ったらしくそう告げる。


「は、はぁ・・・いや、それほどのものでも・・・」


法王は恐縮するばかりで、特に怒りを表す様子はない。

どうして法王はカイに逆らうことができないのか。
それはカイは法王の弱みを握っているからだ。
かつて聖騎士としてサンクレアに仕えていたときから、彼はサンクレアの闇についてはいろいろと把握していたのだ。

何故把握していたのか?それは有事の際にこうして弱みを握るためではなかった。むしろ逆で、外敵にこうした弱みに付け込まれてサンクレアをコントロールされないよう、あえて先回りして目を覆いたいようなサンクレアの闇全てをカイは調べ上げ、付け込まれないように警戒してきた。

今代の法王であるランスには特殊な性癖がある。
それは性的興奮を覚える対象が10代前半のであるということ。そう、だ。
年齢が10代前半で、見た目がそれなりに整っていれば少年でも少女でもいけてしまう。そういう性癖があった。
オマケに白髪の生えた老人でありながらにして、性欲も食欲も旺盛であった。普段な虫も殺さないような顔をしていながらにして、人並み以上の欲というものを持っている。
特に性欲に関しては誠に旺盛であり、絶対魔法障壁を城に展開しているような非常事態であるにも関わらず、しっかりとお勤めの相手を部屋に呼んでいる。
言うに及ばず、こんなことが知れれば法王は・・・否、ラビス教ならびにサンクレアの威厳は地の底まで落ちる。
なので法王のこの特殊な趣味については、極秘事項としてラビス教の重鎮と一部の高位の神殿騎士しか知らぬことであった。

だが、カイはそれを知り、証拠を持っていた。
カイは今回のユーライ国軍襲撃の事前に、法王に独自に接触し、彼を味方につけていたのだ。
本来サンクレアを、法王を守るためにカイが独自に探った弱みを、まさかカイが自分で利用することになるとは皮肉なものである。
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