聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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反逆

崩される日常

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「帰ったぞ」


まるで何事も無かったかのようにアドルは自宅の玄関の扉を開いた。いつもなら自分のこの声を聞き、家族がやってくるはずだ。
カイの手紙の通りなら、今は異常事態が発生しているので誰もやってこないだろう。それはアドルもわかっていたが、それでもあえて彼はいつも通りに帰ってきた。あの手紙は脅しか何か、あるいは手違いがあってまだカイがこの屋敷に入っていない・・・この屋敷の日常はまだ脅かされてはいない・・・その僅かな可能性にかけてのことだった。

『父上、お帰りなさいませ』

息子がそう言って出迎えてくれる・・・アドルはそんなことはないだろうと思いつつも、そうあって欲しいと願いながら反応を待った。

だが、残念ながらアドル願いは叶わず、厳しい現実が彼を待っていた。


「お帰りなさいパパ」


お道化た調子でそう声を発して姿を現したのは、アドルの愛する息子ではなくカイだった。


「カイ!・・・なっ・・・!?」


カイの姿を見つけて睨みつけるアドルは、彼の傍らにもう一人いることに気が付いた。それは下の子であるレイドである。


「アドル団長。まずは変な気は起こしませぬよう。どうなるかはわかりますね?」


カイは腰元の剣に手を添えて言った。
思わず飛び掛かろうと体が動きそうになるのを、アドルはどうにか制する。


「レイド!」


レイドに向かってアドルは名を叫ぶが、レイドは怯える目でアドルのことを見返した。


「レイド・・・?」


レイドの視線が、カイに怯えて助けを乞う者の目でないことを察したアドルは、問いかけるようにレイドの名を呼ぶ。しかし、レイドはすぐに言葉を発さなかった。


「父上・・・」


やや間をおいて、ようやくレイドは口を開こうとする。
アドルはじっとレイドが言葉を発するのを待った。一体何を言うのか?アドルに緊張が走る。


「カイさんから聞きました。父上がイリスさんを殺したと。それは事実ですか?」


背筋が凍るほどの冷たい声で、レイドはそうアドルに問う。
瞬間、アドルは心臓を鷲掴みにされたように呼吸が止まった。
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