新訳・親友を裏切った男が絶望するまで

はにわ

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ルーチェ昔話

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もう一度・・・出直す?

俺はウラエヌスの言っていることの意味を理解しかねた。

「今一度やり直してみんか。昔のように」

「やり直す・・・だと」

バリーとウラエヌスは見つめあう。
見つめあいながら「やり直そう」などと話していると、ホモのカップルなのかと思いそうになってしまう。

「昔のように・・・」

バリーが呟いて、どこか目が遠くを見るそれになった。

・・・あれ、もしかしてこれ勝手に回想に入るパターンか?





~~~21年前~~~~ ウラエヌス目線



「バリー。悪いが今日限りで君にはパーティーを辞めてもらう」

私が酒場で一人チビチビ飲んでいると、隣のテーブルについていた冒険者パーティーの打ち上げが始まるや否や、断罪が始まっていた。どうしてわざわざこんなところで?そう思っていたときが私にもありました。

私はほぼ毎日のように酒場に通うことで、実際にはむしろ冒険者パーティーの決裂は酒場でこそ発生しやすいということがわかった。酒を飲んでタガが外れて本心が口から出やすくなると、当然対人トラブルが発生する確率は比較的に上がる。
冒険者の多くは一仕事終えると酒場で打ち上げをする。で、その日あったことや日頃を鬱憤などがふとしたことで酒の力の暴走で発散されてしまうのだ。酒場では実際それが見飽きてしまうくらい散見されるのである。

やれやれ、今度はどんなパーティーかなと私は酒を飲みつつ横目で流し見る。

まずは20代前くらいの若い男、中々のイケメンでキリッとした表情をして綺麗な身なりをしている。これは勇者か。
雰囲気的にどうやらこの勇者が告知をしたようだと察する。

次に女。まだあどけなさの残る少女のようだが、恰好を見るに回復術師か。何やらテンパっていてどうしたものかと困っているようだ。勇者の目線は彼女にはないので、告知されたのは違う人間らしい。

次は・・・これまた女。さきほどの回復術師の少女と違って、少し色気のある大人になったばかりといった感じの女。何だか気まずそうにしている。服装を見るに、どうやら魔術師か。彼女にも勇者は視線を向けていないので、追放者は別にいるようだ。

最後に・・・なるほど、これが追放者か。
無精ひげを生やした20代後半くらいの男が勇者の対面に座っていた。勇者とは対照的に少し小汚さを感じる印象だ。腰元に剣を下げているので、どうやら剣士のようだ。

「ほう、俺を追放するだって?一応理由を聞いてもいいか?」

剣士はあまり慌てる様子もなく、堂々たる態度でビールを口に運びながら勇者に聞いていた。それを聞いて勇者のほうがたじろいでいる。これではどちらが追放する側なのかわかりませんなと私はつい苦笑いしてしまう。

「理由だって?わざわざ言うまでもないだろう!君の数多の蛮行は非常に目に余る。このまま君をこのパーティーに置いたのでは、仲間である僕たちの品性を疑われてしまうんだ。だから君を追放することにしたんだよ」

勇者は一気にそうまくし立てた。
なるほど、潔癖症タイプの勇者かな?この手の人間は割といる。
勇者という立ち位置を意識するあまり、自分と行動を共にする仲間にまである程度の清潔性を求めるのだ。
きっと追放される剣士の普段の行いにどうしても許容しがたいものを感じたのだろう。
それか・・・あの仲間の二人の女を独占したくなって邪魔者を追放したいのかもな。

・・・だが、残念かな。あの勇者の目はふし穴のようだ。多少のことには目を瞑ってでも、手放していい男ではなさそうだぞあの剣士は。

「オッケー。わかった」

「駄目だ!これまで僕は何度も忠告をしてき・・・え?」

「今日で追放だろ?んじゃ、俺はこれで帰るわ。ここの払いくらいはしてくれるんだろうな」

そう言って剣士は答えを聞かずに席を立った。
まさかすんなり辞めると思わなかっただろう勇者は「え、あ・・・」と茫然としていた。
剣士は悠然と酒場から出て行った。
私は急いで彼の後を追いかけた。




「・・・何か用かオッサン」

酒場から出て、まだそう遠ざかってない剣士の背中を追うと、彼はこちらを見ずにこう言った。
む、オッサンだと?確かに君よりははるか年上だが・・・

「酒場からずっとこっち見てたよな。俺に何の用だ?」

そしてこっちを振り向いた。
八方目というやつか。ただ酒を飲んでいたり、仲間から叱責を受けているようでいても、きちんと全方位に意識を集中してる。私がじっと見ていたことも察していたようだ。
これだ。こうした男が欲しかったのだ私は。今丁度フリーになったようだし、まさに千載一遇のチャンスと言えよう。

「バリーと言ったかな。今フリーだろ?どうだ、私と勇者になってみないか?」

「あぁ?」

怪訝な顔で私を見るバリーの目の前に、私は「勇者求ム!」と書かれたルーチェ王のお触れを広げてみせた。

「はっ、なんだこのオッサン」

バリーは今だ警戒を緩めぬ眼光を放っていたが、口元は少し緩んでいた。
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