18 / 92
押しかけ
しおりを挟む
ウラエヌスに引っ張られるようにして、俺達は再び雪山の麓へと到達した。
俺とディオだけでは取り付く島も無かったが、近しい間柄であるウラエヌスがいれば勇者バリーも話を聞いてくれるだろうか?
「おぉ、なんじゃこれは」
ウラエヌスは何かを見つけて驚愕の声を上げた。
「あぁ、それは・・・」
ウラエヌスが見つけたものには心当たりがあった。
それは昨日に俺達が仕留めた白熊の死骸だった。
片付けろとバリーがいうので崖から投げ捨てたが、気付かなかったがどうやら麓まで落ちてきたようだ。
そのことについて話すと
「いやいや、最近は騎士団のレベルの低下が深刻だと聞いて嘆いておったが、やはり今の若者もやるではないか。こいつは中々強い猛獣じゃぞ」
そう言って褒めてくる。
確かに手ごたえのあったやつではあるが、かつての勇者にそう言ってもらえるとは嬉しいものである。
「こいつバラシて爪とか毛皮とか売ればそこそこの金になるぞい。帰りにやっておこうかのう」
・・・やはりウラエヌスはあまり僧侶には見えない。
雪山を登り始め、勇者の墓(偽)のところまで着いたときだった。
「やれやれ、わざわざ自分の死を偽装してまで世間から逃げようなど、かつての勇者の行いとは思えんわい」
そう言ってウラエヌスは墓にかぶった雪を払いのけた。
「しかもこんなところに立てるから雪ですぐ埋まって存在に気付かない人もおるでの。そうでなくてもここまで昇れる人間も限りがあってあまり目にも触れんし、あいつは昔からちょっと抜けたところがあるんじゃ」
まぁ確かに俺達も下山したときに気付いたし。
何かどんどん勇者に対するイメージが変わっていく気がする。
「そのくせ手先は器用で墓なんかちゃんと自作で丁寧に字まで・・・む?」
墓を見ていたウラエヌスが何かに気付いたようだった。
「どうしましたか?」
気になって訊ねると、彼は墓の横に雪と氷に埋もれた何かを引っ張りだした。
「これはーーー」
----------
そしてついに、俺達は勇者バリーの小屋まで再びやってきた。
「おいバリー。ここを開けんかい」
ウラエヌスは小屋の戸を乱暴に叩いた。
「おい開けろ。いるのはわかっておるんじゃ。はよ出てこんかい」
そうして声をかけ続けているが、その戸が開くことはなかった。
ウラエヌスでも駄目なのか・・・
俺は肩を落としたが
「カチャ」
音がして、戸にかけてあった鍵が外れたことがした。
「解錠の魔術じゃ。さっさと開けないなら仕方がないわい」
ウラエヌスの魔術によって無理矢理開けたようだ。
本当僧侶と思えない。
「な、なんだ一体!?借りた金ならもう返せないぞ!金目のものは何もないんだ!」
中からバリーの慌てた声が聞こえてきた。
これもまた元勇者と思えない。って、借金で身を隠していたとは本当だったのか・・・
どうやら俺達を借金取りだと思っているようだった。
「わしらは借金取りじゃないわい!わしの声を忘れたか?」
「お前はウラエヌス!?な、なんだ?どうしてこんなところに??」
やり取りが聞こえて来る小屋の中に、俺とディオはそっとお邪魔した。
小屋の中は確かに生活するための最低限のものがあるだけで、特に金になりそうなものは何もなかった。
「・・・君たちは昨日来た・・・」
バリーは俺達を見てキョトンとした表情を見せた。
久々に来たかつての仲間のウラエヌスと、昨日訪ねてきた俺達が結びつかなくて混乱しているのだろう。
「一体何をしに来たんだ?」
バリーの質問に対し
「のぅバリー。もう一度出直してみんか、わしら」
ウラエヌスはそう言った。
俺とディオだけでは取り付く島も無かったが、近しい間柄であるウラエヌスがいれば勇者バリーも話を聞いてくれるだろうか?
「おぉ、なんじゃこれは」
ウラエヌスは何かを見つけて驚愕の声を上げた。
「あぁ、それは・・・」
ウラエヌスが見つけたものには心当たりがあった。
それは昨日に俺達が仕留めた白熊の死骸だった。
片付けろとバリーがいうので崖から投げ捨てたが、気付かなかったがどうやら麓まで落ちてきたようだ。
そのことについて話すと
「いやいや、最近は騎士団のレベルの低下が深刻だと聞いて嘆いておったが、やはり今の若者もやるではないか。こいつは中々強い猛獣じゃぞ」
そう言って褒めてくる。
確かに手ごたえのあったやつではあるが、かつての勇者にそう言ってもらえるとは嬉しいものである。
「こいつバラシて爪とか毛皮とか売ればそこそこの金になるぞい。帰りにやっておこうかのう」
・・・やはりウラエヌスはあまり僧侶には見えない。
雪山を登り始め、勇者の墓(偽)のところまで着いたときだった。
「やれやれ、わざわざ自分の死を偽装してまで世間から逃げようなど、かつての勇者の行いとは思えんわい」
そう言ってウラエヌスは墓にかぶった雪を払いのけた。
「しかもこんなところに立てるから雪ですぐ埋まって存在に気付かない人もおるでの。そうでなくてもここまで昇れる人間も限りがあってあまり目にも触れんし、あいつは昔からちょっと抜けたところがあるんじゃ」
まぁ確かに俺達も下山したときに気付いたし。
何かどんどん勇者に対するイメージが変わっていく気がする。
「そのくせ手先は器用で墓なんかちゃんと自作で丁寧に字まで・・・む?」
墓を見ていたウラエヌスが何かに気付いたようだった。
「どうしましたか?」
気になって訊ねると、彼は墓の横に雪と氷に埋もれた何かを引っ張りだした。
「これはーーー」
----------
そしてついに、俺達は勇者バリーの小屋まで再びやってきた。
「おいバリー。ここを開けんかい」
ウラエヌスは小屋の戸を乱暴に叩いた。
「おい開けろ。いるのはわかっておるんじゃ。はよ出てこんかい」
そうして声をかけ続けているが、その戸が開くことはなかった。
ウラエヌスでも駄目なのか・・・
俺は肩を落としたが
「カチャ」
音がして、戸にかけてあった鍵が外れたことがした。
「解錠の魔術じゃ。さっさと開けないなら仕方がないわい」
ウラエヌスの魔術によって無理矢理開けたようだ。
本当僧侶と思えない。
「な、なんだ一体!?借りた金ならもう返せないぞ!金目のものは何もないんだ!」
中からバリーの慌てた声が聞こえてきた。
これもまた元勇者と思えない。って、借金で身を隠していたとは本当だったのか・・・
どうやら俺達を借金取りだと思っているようだった。
「わしらは借金取りじゃないわい!わしの声を忘れたか?」
「お前はウラエヌス!?な、なんだ?どうしてこんなところに??」
やり取りが聞こえて来る小屋の中に、俺とディオはそっとお邪魔した。
小屋の中は確かに生活するための最低限のものがあるだけで、特に金になりそうなものは何もなかった。
「・・・君たちは昨日来た・・・」
バリーは俺達を見てキョトンとした表情を見せた。
久々に来たかつての仲間のウラエヌスと、昨日訪ねてきた俺達が結びつかなくて混乱しているのだろう。
「一体何をしに来たんだ?」
バリーの質問に対し
「のぅバリー。もう一度出直してみんか、わしら」
ウラエヌスはそう言った。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる