新訳・親友を裏切った男が絶望するまで

はにわ

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お墓の真相

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「さぁ行くぞい!」


ウラエヌスは何故か物凄く張り切って先頭を歩いていく。

「待ってください。バリーさんに話を聞きたいのは確かですが、無理に聞き出したいわけじゃないんです」

俺は慌ててウラエヌスに言った。

「彼はわざわざ自分の墓を作ってまで俗世と決別した。無理にそれを曲げさせてまで話をしようとは思いませんよ」


脳裏にゆうしゃの墓が浮かぶ。


「あれはそのようなものではないわい。借金取りから身を隠すためのダミーなんじゃ」

「いやですから・・・えっ?」

ウラエヌスの言葉に思わず思考が停止してしまった。

借金取り?

聞き違いか?と思わずディオと顔を見合わせてしまう。ディオもまた困惑した表情をしていた。


「あのような雪山に籠ったのはそもそも借金取りから身を隠すため。それでもなお追おうとしてくる者に対し、死を偽装して諦めさせようと作ったのがなんじゃ」


ウラエヌスの言葉に大きな衝撃を受けた。


「いや、まさか・・・冗談ですよね?」

信じられなくてつい聞いてしまう。


「冗談なものか。俗世と決別?違うわい。借金をそこらでこさえてしまって首が回らなくなり、普通社会で生きていくことが出来なくなっただけじゃ」

「はは・・・まさかそんな・・・」

乾いた笑いが湧いてでた。


「元々バリーは冒険者でな。宵越しの銭は持たぬ主義で、暮らしぶりはそれなりに派手だったのじゃ。王家からの特別年金でその生活を維持出来ていたが、あちらの都合で一方的に減額されてそれが叶わなくなった。それまでの生活を捨てきれずに借金を重ね、そしてついに取り立てから逃げて雪山に籠るようになった。あそこの野獣は狂暴だでの。あそこまで取り立てに来るやつはそうそういない」


ピシッっと、俺の中で勇者に対するイメージにヒビが入った音が聞こえた。
複雑な絡みがあって俗世と決別したのだろうと思っていたが、実情は単純なものだったようだ。

「・・・何かイメージと違いますね」

思わず正直に言ってしまう。厳密にはバリーだけでなくウラエヌスに対してもそうなのだが。

「勇者は特別清貧で完璧だと思ったかの?そんなことはない。君らと同じ人間じゃ。ただ、ちょっぴりだけ前に出ることが出来ただけの。わしらはそれを勘違いしておったのじゃ」

そう言うウラエヌスは鎮痛な表情を浮かべていた。
酒場でも愚痴っていたが、バリーだけではなく、ウラエヌスも苦い何かがあったようだ。

「わしが君らに協力したいのは、その辺の個人的な清算をしたいというのがあってのことなんじゃ」

「それって」


どういう?と聞こうとして俺のその声は遮られた。

「動くな!大人しくしていろ!!」

ふと見ると、野盗が数人俺達を取り囲んでいた。それぞれ剣や短刀など武器を持って俺達に向けている。

「無駄に死にたくなかったら金を置いていきな」

リーダーと思わしき男が言った。
やれやれ無駄死にしにきたのはお前たちだぞ、と戦闘に入ろうとした俺だったが


『邪魔をするなーーーっ!!』


耳をつんざくようなウラエヌスの一喝が辺りに轟いた。
なんちゅうでかい声だ!と顔をしかめたが、驚いたのはそれからだった。

バタリ


俺達を包囲していた野盗が全員その場で倒れたからだ。

「これは・・・」

どいつも耳から血を出して死んでいた。

「わしは僧侶じゃが、殺傷力を持つ一喝を放つことができるんじゃ。敵味方の区別をつけることもできる。便利じゃろ?ゴッドボイスでもボーズシャウトでも好きなように命名して良いぞい」


あっけらかんと言って先を歩き出すウラエヌスを見て思った。

この人あまり僧侶っぽくないなと。
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