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ルーチェ昔話その7 ~バリー目線~
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魔王を倒してから8年が経過した。
私ははるか前からだが、すっかり勇者としての威厳の持つために一人称が「私」で固定された。ウラエヌスと会うときくらいは「俺」と言っていたのだが、それをプレスにすっぱ抜かれそうになったため、いつでもどこでも勇者らしくあるべきと思いそうした。
ウラエヌスは一人称が「わし」になるくらい老けてきた。じいさんキャラとしてやっていくらしい。そこまでの年じゃなかった気がするが、僧侶で元勇者となるとそのほうが威厳が出るからそうしたいらしい。なるほどわからん。
だが、一つこの国で大きな変化が訪れ、それによって更なる変化を我々は強いられることになった。
「ナオール草?」
「左様。それが新しく発見された薬草の名じゃ」
私とウラエヌスが酒場で飲んでいたとき、彼から近頃ルーチェ国内でのみ発生する新種の薬草が発見されたと聞いた。名をナオール草というらしい。
「これまでにあった気休め程度の薬草ではなく、初級の回復魔法くらいの効能を持つ革新的な薬草じゃ。雑草のように強く、どこにでも生える。何度でも生える。群生地の再生力ときたら、全て採取してもふと目を離せばほとんどがまた生え直しているようだ」
「そんなバカな」
「それが本当にあるんじゃよ。ここ数年、ちらほら見かけた程度だったんじゃが、今はそこら中で見かけるようになった。ルーチェにしか存在しとらんから、もしかしたら魔王山からの瘴気の影響で育っているのかもしれんの」
「怖っ」
「実際に魔物の一種なのではないかという説もある。だが、怖いのは確かじゃな。今この国では回復術師の需要が無くなりつつある」
なるほど。確かにそこら中に生息する薬草が初級回復魔術ほどの効果があるのなら、中途半端な回復術師など必要ないということになる。そうして失職した回復術師が、今どんどん国外に職を求めて出ていっているらしい。
「採取してから時間が経つとどんどん薬草としての効果が失われてしまうようじゃ。だが、隣国くらいなら輸出してもまだ効能は半分弱ほど残るらしい。それでも需要はあるから、ルーチェ国としてはこれからどんどんナオール草を輸出して外貨を稼ぐそうじゃ」
国からしてみれば降ってわいた金の種、まさに神からの祝福であろう。
だが、回復術師として生計を立てていた者は職を追われることになった。皮肉な話だ。
「ならウラエヌスはどうなるのだ?」
ウラエヌスもなまぐさだが僧侶で回復術に長けている。それを生かして冒険者に随伴して指導するなどといった仕事をしていたはずだ。
「まだまだナオール草なんぞにはわしの仕事は奪われんわい」
ウラエヌスが怒る。
確かに彼の超がつく上級回復術は薬草などでは代用できないだろう。
「じゃがのぅ・・・まぁ、ちょっと思うところもあるので、しばらく隣国の冒険者に交じってみようかのぅ」
「えっ?」
「そんなわけでバリー。ルーチェのことは頼んだぞい。わしはちょっと国を出る」
そう言った翌日にウラエヌスは本当に国を出ていった。
それから数か月しないうちにナオール草は知らぬ者はおらぬほど爆発的にルーチェ国に普及した。これによって腕の半端だった医者、回復術師が職を失い、国を出ていくか転職をすることになった。
だが私はあくまで無関係だとタカをくぐっていた。
しかしそんなはずはなかったのだ。
私ははるか前からだが、すっかり勇者としての威厳の持つために一人称が「私」で固定された。ウラエヌスと会うときくらいは「俺」と言っていたのだが、それをプレスにすっぱ抜かれそうになったため、いつでもどこでも勇者らしくあるべきと思いそうした。
ウラエヌスは一人称が「わし」になるくらい老けてきた。じいさんキャラとしてやっていくらしい。そこまでの年じゃなかった気がするが、僧侶で元勇者となるとそのほうが威厳が出るからそうしたいらしい。なるほどわからん。
だが、一つこの国で大きな変化が訪れ、それによって更なる変化を我々は強いられることになった。
「ナオール草?」
「左様。それが新しく発見された薬草の名じゃ」
私とウラエヌスが酒場で飲んでいたとき、彼から近頃ルーチェ国内でのみ発生する新種の薬草が発見されたと聞いた。名をナオール草というらしい。
「これまでにあった気休め程度の薬草ではなく、初級の回復魔法くらいの効能を持つ革新的な薬草じゃ。雑草のように強く、どこにでも生える。何度でも生える。群生地の再生力ときたら、全て採取してもふと目を離せばほとんどがまた生え直しているようだ」
「そんなバカな」
「それが本当にあるんじゃよ。ここ数年、ちらほら見かけた程度だったんじゃが、今はそこら中で見かけるようになった。ルーチェにしか存在しとらんから、もしかしたら魔王山からの瘴気の影響で育っているのかもしれんの」
「怖っ」
「実際に魔物の一種なのではないかという説もある。だが、怖いのは確かじゃな。今この国では回復術師の需要が無くなりつつある」
なるほど。確かにそこら中に生息する薬草が初級回復魔術ほどの効果があるのなら、中途半端な回復術師など必要ないということになる。そうして失職した回復術師が、今どんどん国外に職を求めて出ていっているらしい。
「採取してから時間が経つとどんどん薬草としての効果が失われてしまうようじゃ。だが、隣国くらいなら輸出してもまだ効能は半分弱ほど残るらしい。それでも需要はあるから、ルーチェ国としてはこれからどんどんナオール草を輸出して外貨を稼ぐそうじゃ」
国からしてみれば降ってわいた金の種、まさに神からの祝福であろう。
だが、回復術師として生計を立てていた者は職を追われることになった。皮肉な話だ。
「ならウラエヌスはどうなるのだ?」
ウラエヌスもなまぐさだが僧侶で回復術に長けている。それを生かして冒険者に随伴して指導するなどといった仕事をしていたはずだ。
「まだまだナオール草なんぞにはわしの仕事は奪われんわい」
ウラエヌスが怒る。
確かに彼の超がつく上級回復術は薬草などでは代用できないだろう。
「じゃがのぅ・・・まぁ、ちょっと思うところもあるので、しばらく隣国の冒険者に交じってみようかのぅ」
「えっ?」
「そんなわけでバリー。ルーチェのことは頼んだぞい。わしはちょっと国を出る」
そう言った翌日にウラエヌスは本当に国を出ていった。
それから数か月しないうちにナオール草は知らぬ者はおらぬほど爆発的にルーチェ国に普及した。これによって腕の半端だった医者、回復術師が職を失い、国を出ていくか転職をすることになった。
だが私はあくまで無関係だとタカをくぐっていた。
しかしそんなはずはなかったのだ。
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