新訳・親友を裏切った男が絶望するまで

はにわ

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新陳代謝  ~バリー目線~

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「すみませんがバリーさん、今のところバリーさんにお任せできるクエストはありません」

王都にある冒険者ギルドで私は受付にそう言われた。
時代は変わり、今冒険者を頼りに仕事を依頼したり請け負ったりする場合、冒険者ギルドを通して行われるのが主流になった。
私は冒険者ギルドでもここ数年、高難易度の仕事をいくつも受け、階級というものもSランクという上位にまで上げることが出来た。

だが、冒険者ギルドでは私に振る仕事は無いという。
クエストの張り紙はいくつもある。なのに、私に任せないとはどういうことなのだろうと思うのは当然だ。私は受付に問う。

「バリーさんが何でもかんでも引き受けてすぐに解決しちゃうから、若手の冒険者が全然育たないのです・・・」

受付の若い女は申し訳なさそうに言った。

「バリーさんが何でも一人でやっちゃうから、俺らも依存しちゃってたけどな。これじゃ駄目なんだわ」

すっかり顔なじみになったギルドマスターが説明を引き継いだ。

「あんたもそろそろ歳が歳だろう。隠居してもいいんじゃねぇか?」

「まさか!私はまだやれる。私はやるべきことを最後までやるつもりだ!」

隠居しろと言われ、ついカッとなってしまった私は怒鳴った。

だが、ギルドマスターは冷静に言った。

「だからそれじゃ駄目なんだよ。俺達はいつまでもに頼ってちゃいけねぇのさ。次の世代に繋げていかなきゃいけないんだよ。アンタが居座ったままじゃ、誰も引き継ぐ気になっちゃくれないんだ」

私は絶句した。


「これまでずっとアンタは勇者として人のためにがんばってくれたよ。けど、そろそろ勇気を出して次の世代に任せてもいいんじゃねぇか?」

なんと・・・
これまで勇者と私を称え、縋ってきた者が掌を返すと。
私は勇者と言われるうちに、勇者として死ぬまで国に、人々に尽くそうと思った。そんな私に退けと。

それは私の死を意味するも同然だ。
私は断固として冒険者で、勇者としてあり続けたいとギルドマスターに訴えたが、彼は取り合ってくれなかった。


「新陳代謝の時なのさ。俺だってこんなこと言うのはつらいんだ。だけど、アンタが頑張り過ぎるから若手が全然育ってないんだ!見ろ!」


ギルドマスターが指さす方向を見ると、そこには若手の冒険者がいた。

「あれはこの冒険者ギルドでも若手一番のパーティーだ」

じっくり見ているが、どうにも覇気がない。あまり腕が立つようにも見えない。


「あれは先日、スライムの集団に襲われ、あやうく全滅するところだった」

「えぇ・・・(困惑)」

「何度も言うが、アンタが頑張り過ぎた結果が若手が育たないって悲劇を生んだんだよ。あれを一流の冒険者にまで育成するのにどれだけの時間がかかることか・・・」


どうやら私の存在は次の世代の躍進の邪魔にしかならないようだ。
私は黙って冒険者ギルドを出た。




しばらく怠惰に暮らしていると、ウラエヌスが数年ぶりに帰ってきた。
久しぶりに私に連絡を取ってきたかと思うと、もう冒険者も何もかも引退して隠居すると彼は言った。

私達は次の世代に全てを譲り、表舞台から姿を消すことを決心した。
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