新訳・親友を裏切った男が絶望するまで

はにわ

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逃せないビッグウェーブ

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浮かれていた俺は、アリス様に俺のことを知ってもらおうといろいろなことを話した。

ディオと幼馴染であること。子供の頃からディオとはいろいろと競っていたライバルだったこと。

そして、アリス様を一目見たときに恋焦がれ、彼女との婚約を賭けた武闘会では死ぬ気で特訓して臨んだことなど、気が付けば一時間以上も俺自身のことについて語ってしまっていた。
アリス様は話の全てを相槌を打ちながら笑顔で聞いてくれていた。正直これだけで俺はもう満足だと思った。夢のような時間を堪能することが出来た・・・心からそう思っていた。


「まぁ・・・それほどまでに想って頂いていたなんて、何だか照れてしまいますわ・・・」


全てを聞き終わった後、アリス様は顔を赤らめてそう言った。
そう言ってもらえただけで・・・俺の中にあったディオを出し抜いてきたことの罪悪感は消し飛んでいた。
そして、俺は天まで届かんばかりに上がったテンションに任せ、とんでもないことを口走っていた。


「私は!ディオが想う気持ちのそれよりも、深く強くアリス様をお慕いしております!!」





・・・やらかした。

言い放った直後に、僅かに残る理性的な部分の俺がそう思った。
今俺が言ったことは、アリス様への無礼のみならず、暫定次期国王であるディオに対する不敬でもある。
合わせ技で極刑になることは火を見るより明らかだった。
この後アリス様をルーチェ城へ連れ帰ったとき、アリス様がここであったことを告げれば俺は直ちに牢に繋がれ、時を置かずして死刑となるだろう。慈悲はない!


「・・・まぁ」


アリス様の反応は「呆気にとられる」。まさにそれであった。驚いた顔のまま硬直してしまっているように見える。
きっと心の中では「この人何言ってるのかしら」「とりあえず今は適当に流して刺激しないでおこうかしら」「ディオ様を侮辱したわね許せないわ」などと思っているに違いない。
それだけ俺は失態を犯したのだ。いや、今更だが。
だがディオと比較してしまったのはもう駄目だろう。不敬だ。死刑だ。

顔はキメ顔のまま、俺は心の中でそんなことをずっと考えていた。

だが、アリス様は


「そんな・・・どうしましょう・・・そんなこと言われたの初めてだわ・・・」


そんなことを言いながら、顔を赤らめてもじもじしている。
か、可愛い・・・じゃない!
これは・・・もしかしてディオへの裏切りを誤魔化すどころか、ワンチャン姫様のことを狙えるのでは?


このままただ帰してはいけない。俺の中の悪魔が囁いていた。
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