新訳・親友を裏切った男が絶望するまで

はにわ

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裁判じゃと?  ~ウラエヌス目線~

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「わしは何もしていないんじゃ!牢から出してくれんか!」


国王がディオの手によって殺されてから連日、わしとディオは代わる代わる取り調べを受けていた。
あの日以来、戒厳令が敷かれているらしくルーチェ国は騎士団が掌握した状態であり、わしの顔が利く高官に縋っても全く力になれないと言われてしまった。
・・・流石に今の騎士団にわしの顔は利かない。それどこか聞くところによると騎士団長は元々国王の座を狙っていた野心家だと聞いた。もしこれを機にクーデターしてでも彼が王位に就くつもりだというのなら、邪魔者であるディオを排除しようとするだろう。おまけに仲間であるわしもそうするだろう。
もう逃げることなどできぬかもしれん・・・そう思っていた。

だが、状況は変わった。


「なぬ?裁判?」


ある日取り調べの際、わしはディオとともに裁判にかけられることがわかった。


「戒厳下なのに裁判か。いくらでも合法的にわしらを絞首台に送ることは出来るだろうに」


「二人は一応魔王を倒した勇者だからです。いくら戒厳令が発令されているとしても、勇者を勝手に騎士団が処刑しては国民が黙っていないでしょう。対外的にも面倒なことになることが予想されます。後々の憂いを絶つためにも、裁判で二人を裁くことにしたのではないでしょうか」


取り調べを続けるうちに仲良くなった女騎士がわしに親切に教えてくれた。先日は歳をとってすっかり駄目になったと自分を卑下したものだが、まだまだわしもやるもんじゃないかと自分のことながら感心してしまう。


「とは言っても形だけの裁判ですよ?結果は同じことでは・・・」

女騎士が心配そうに言う。


「大丈夫じゃ。わしは口が回るんじゃ。実際に何もしていないわしを共犯にするには相当に無理をしなければならないはず。無理を通せぬほどわしの弁が立てば、まともな裁判長ならまずわしを極刑にはできまい」


戒厳下で騎士団がその権限でもって一方的に処刑してくるなら抗いようがない。しかし形だけでも裁判をするとなると騎士団は後々の事を考えて行動せねばならなくなる。騎士団長が次期国王を狙っているならなおのことだ。無理をしてわしとディオを処分をしておきながら国王の座につけば、単なるクーデターとして他国から干渉を受けることになるだろうし、国民による蜂起とてあり得る。そんな愚かなことはすまい。


「良い情報ありがとな女騎士ちゃん。まだわしの取り調べの時間は残っておるよな?それじゃ、今度はわしが君を取り調べしてみようかの」


「あぁ・・・そんな、いけませんわ・・・」



こうしてわしは束の間の快楽にふけていた。
だが終わりの時は迫っていたのだ。
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