新訳・親友を裏切った男が絶望するまで

はにわ

文字の大きさ
54 / 92

逆転裁判  ~ウラエヌス目線~

しおりを挟む
裁判があると聞いてから数日で裁判が始まった。
わしとディオはそれぞれ別の日で、まずはわしが最初に裁判にかけられるようだ。


「被告人、ウラエヌス前に出なさい」


わしはおずおずと前に出る。まさか自分の人生で裁判にかけられる日が来るとはのぅ。女絡みならあり得たかもしれないが。

「じっ・・・」


「?」


一瞬、裁判長がわしのことを睨んだ気がした。
はて、見たことのあるようなないような顔だ。どこかで会ったことがあっただろうか。裁判官に知り合いはいないはずだが。



「ウラエヌス、貴方は以前にも魔王がルーチェ国に現れた際、勇者バリーとともにそれを討伐した。それから冒険者として居住地を転々としながら過ごし、そして最近になって再び復活した魔王を討伐した。これに間違いはありませんね?」


「ありません」


「ですが討伐から戻ってきた夜、王城に宿泊したところ次期国王候補なるディオが現国王を殺害している場面を目撃。そして参考人として拘束された・・・それが貴方の言い分ですが、これに間違いはありますか?」


「ありません。わしは無実です」


「ふむ、魔王を討伐するという偉業を達成しておきながら、自らの関わっていないという国王の殺害の嫌疑をかけられるとは災難でした。極めて遺憾であります」


うん?これは想像を遥かに超えて裁判長はわしに同情的なのか?もしかするとあっさりわしは助かるかもしれんぞ。


「被告ウラエヌスが国王の殺害に手を下していないことは明白です」


おぉっ!これでもう無実が認められて終わりか。







「よって死刑だ」


カ~~~~ン


しーんと静まり返った法廷に木槌の音が響いた。


・・・うん?今死刑と言ったか?流れ的におかしくない?聞き間違えかな?


「あの、今死刑と聞こえましたが・・・」


「そうです死刑です。直接手を下してはいなくとも、あなたの仲間がやったこと・・・共犯であると考えられましょう。目の前にいながらにして止められなかったのも重罪です」


「んなアホな!そんな裁判があるか!!」


元より普通の裁判にはならんと思っていたが、ここまで滅茶苦茶なものになるなんて思ってもみなかった。


「死刑の執行は三日後とする。これにて閉廷!」


「ちょ、待てよ!」


わしは取り押さえにくる憲兵を振りほどきながら訴える。



「お主は裁判官じゃろう!こんな目茶苦茶な裁判なぞ認められていいと思っているのか!?」


わしはダメ元で裁判官の良心に語り掛けてみた。
だが、そんなわしに裁判官が見せた顔はゾッとするほどの冷気を感じるほどの、何の温かみも感じぬものだった。


「私はね、昔隣国のリーン国にいたのです。そこでウラエヌスさんに会っているのですよ」


「えっ?」


わしには相手の顔に覚えがなかった。


「そのとき私は冒険者パーティーのリーダーを務めていました。そのときメンバーにいたのがウラエヌスさん、貴方です」


「なんじゃと!?」


元パーティーメンバーだというのか。何がどうしてルーチェの裁判官になったんじゃろう。


「ならば元仲間として助けてくれても・・・」


わしが言うと、裁判官は途端に表情を豹変させた。その顔は怒りに満ちていた。


「私は同じ仲間でありながら好いていた幼馴染の女性を、貴方に寝取られております」


アチャー!やらかしちゃったときの恨みを買っている相手だったか。


「私はあれ以来、その手の寝取られというシチュエーションでしか興奮できなくなってしまい、まともな人生を送れていないのです」


「それはわしのせいだけというわけじゃないんじゃ・・・」


「ともかく!これで私の溜飲が下がりました。貴方を死刑にすることができた」


「こんな目茶苦茶な・・・」




なんだか知らんが、わしは良くわからんうちに自業自得で死刑という判決を受けてしまった。助かると思ってからの逆転死刑とはひどすぎる話だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...