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仕方ないのだ ~ウラエヌス目線~
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ワシとイライザは教団の同期。
偶然にも二人とも希代の天才として頭角を現した。
高位僧侶の法術は努力も必要だが、それ以上に素質が物を言う。どれだけ自然界から聖の力を集め使いこなせるか・・・それと、どれだけ自身の生命力から効率よく法術に必要な力を引き出せるか、である。
法術は自然界から集める聖の力も使うが、それ以上に使い手の生命力が消費されて発動する。
この生命力を効率良く消費する素質と術式を組まないと、どれだけ大きな法術を使えようとアッという間に生命力を使い果たして死人になる。
ワシもイライザもその点はピカ一で、長きに渡り高位法術を使いながらも教団に栄光を呼び寄せてくれるだろうと期待されていた。そしてそのためにもワシらは教団による半強制的な命令により婚約をさせられた。子が才能を引き継ぐことを期待されてのことだった。だがワシらはそう満更でもなかった。少なくともワシはそうだったし、イライザもそう見えた。
だが、ワシは教団の在り方に疑問を常に感じていた。
「おかしいではないか。どうして教団は癒しの術をかける相手を選んでいるのだ?今日も私の元に癒しを求めてきたのは高位貴族ばかりだ。平民などほとんど来ないではないか」
ワシらは大怪我や難病を抱える患者を法術で治すことを教団に命ぜられた。
当初こそ名誉なことであるとワシは意気込んだが、次第に一つの疑問が湧き上がってくることになった。
教団は寄付金を多く収める貴族を優先的にワシ達の診療相手にあてがったのだ。救いの手を求める者なら、誰にでも平等に手を差し伸べるが教団の方針ではなかったのか。
ワシは憤った。
しかしイライザは違った。
「私は誰であろうと診療するわ。それに、困った人が訪れるのは教団よ。教団に任せてここで待っていたほうが、一人でも多くの人を効率よく救えるわ」
あくまで教団の方針に倣って人を救うという。
法術は自分の命を少なからず削る。
それで人を救うことには抵抗はなかった。だが、その相手はある程度は選びたかった。
ワシは金に物を言わせる貴族ばかりを救いたいわけではなかった。
そしてワシは教団への当てつけもあって、いろいろと不本意なやらかしを繰り返した。特にシモ関連。・・・本当に不本意だったんだぞ?
そうすることで教団はワシに失望し、ついには破門を言いつけた。これが狙いだった。ただワシが飛び出しただけでは、教団の総力を挙げて連れ戻されてしまう。
こうしてあえて破門されることで、ワシは自由の身となった。
「私は救いが必要だと思う相手を自分で見つけて救いたい。勝手を言ってすまないと思っている」
イライザとの最後の別れのとき、ワシはそう言った。
「道は違えど、行く先は同じ夢ですわ。私は教団で、貴方は外で、救うべき人を救うことになるんですね。私にそれを止めることはできませんわ」
イライザは笑顔でワシにそう言って送り出してくれた。
そしてワシはイライザと離れ離れになり、今の今まで一度も会うことはなかった。
ワシが悔いに思っているのは、送り出してくれたときのイライザが、笑顔でありながら瞳が涙で揺れていたのが忘れられなかったからだった。
それからどれだけ他の女に手を出そうとも、新たな仲間に出会うとも、そのとき以来胸に空いた寂しさが埋まることはなかった。ワシがシモの悪さばかりしていたのは寂しさからだ。仕方なかったのだ。
偶然にも二人とも希代の天才として頭角を現した。
高位僧侶の法術は努力も必要だが、それ以上に素質が物を言う。どれだけ自然界から聖の力を集め使いこなせるか・・・それと、どれだけ自身の生命力から効率よく法術に必要な力を引き出せるか、である。
法術は自然界から集める聖の力も使うが、それ以上に使い手の生命力が消費されて発動する。
この生命力を効率良く消費する素質と術式を組まないと、どれだけ大きな法術を使えようとアッという間に生命力を使い果たして死人になる。
ワシもイライザもその点はピカ一で、長きに渡り高位法術を使いながらも教団に栄光を呼び寄せてくれるだろうと期待されていた。そしてそのためにもワシらは教団による半強制的な命令により婚約をさせられた。子が才能を引き継ぐことを期待されてのことだった。だがワシらはそう満更でもなかった。少なくともワシはそうだったし、イライザもそう見えた。
だが、ワシは教団の在り方に疑問を常に感じていた。
「おかしいではないか。どうして教団は癒しの術をかける相手を選んでいるのだ?今日も私の元に癒しを求めてきたのは高位貴族ばかりだ。平民などほとんど来ないではないか」
ワシらは大怪我や難病を抱える患者を法術で治すことを教団に命ぜられた。
当初こそ名誉なことであるとワシは意気込んだが、次第に一つの疑問が湧き上がってくることになった。
教団は寄付金を多く収める貴族を優先的にワシ達の診療相手にあてがったのだ。救いの手を求める者なら、誰にでも平等に手を差し伸べるが教団の方針ではなかったのか。
ワシは憤った。
しかしイライザは違った。
「私は誰であろうと診療するわ。それに、困った人が訪れるのは教団よ。教団に任せてここで待っていたほうが、一人でも多くの人を効率よく救えるわ」
あくまで教団の方針に倣って人を救うという。
法術は自分の命を少なからず削る。
それで人を救うことには抵抗はなかった。だが、その相手はある程度は選びたかった。
ワシは金に物を言わせる貴族ばかりを救いたいわけではなかった。
そしてワシは教団への当てつけもあって、いろいろと不本意なやらかしを繰り返した。特にシモ関連。・・・本当に不本意だったんだぞ?
そうすることで教団はワシに失望し、ついには破門を言いつけた。これが狙いだった。ただワシが飛び出しただけでは、教団の総力を挙げて連れ戻されてしまう。
こうしてあえて破門されることで、ワシは自由の身となった。
「私は救いが必要だと思う相手を自分で見つけて救いたい。勝手を言ってすまないと思っている」
イライザとの最後の別れのとき、ワシはそう言った。
「道は違えど、行く先は同じ夢ですわ。私は教団で、貴方は外で、救うべき人を救うことになるんですね。私にそれを止めることはできませんわ」
イライザは笑顔でワシにそう言って送り出してくれた。
そしてワシはイライザと離れ離れになり、今の今まで一度も会うことはなかった。
ワシが悔いに思っているのは、送り出してくれたときのイライザが、笑顔でありながら瞳が涙で揺れていたのが忘れられなかったからだった。
それからどれだけ他の女に手を出そうとも、新たな仲間に出会うとも、そのとき以来胸に空いた寂しさが埋まることはなかった。ワシがシモの悪さばかりしていたのは寂しさからだ。仕方なかったのだ。
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