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アリス様の狂気
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「計画通り です」
高潔なる王女にあるまじきゲス顔を晒すアリス様を見て、俺は驚愕のあまり思考が停止しそうだった。
これがアリス様・・・?これまで俺に見せていたお姿は、あの笑顔は、全てが偽物?
「かっ・・・!」
俺の首から血を吸い上げていた手が離れた。
なすすべもなく俺の体は地面にドサッと力なく横たわる。体が動かない。見ると俺の体がシワシワになっていた。なんで生きているんだろう俺?といったレベルだ。
「ふふ、馴染みますわ。流石私の力を与え、体まで重ねた男・・・私の体に良く血が馴染みますわ」
アリス様は俺から吸い上げた血がお気に召したのか、随分と気分が高揚しているようだった。
「レイツォ・・・君は私の兄弟になったのか・・・」
ディオが場違いの言葉を俺に投げかけていた。やめて。今その話題を出さないで。
「流石はレイツォ・・・良く力を蓄えてくれました。今なら私は何でも出来そうな気がするほど、とにかく力が溢れています」
アリス様の体から、先ほど前の俺と比べても比較にならないほどの魔力が溢れていた。今の彼女はさっきまでの俺なんかよりもずっと強い・・・それだけは肌に感じる魔力だけでも良くわかった。
「お前がレイツォを狂わせ、このような茶番を繰り広げたのかアリス!」
ディオが剣を抜き、アリス様に向かってそう叫んだ。
何故もっと早くにそれをやらなかった・・・俺の血を吸い終わる前に。
「レイツォだけではありません。騎士団長もですわ。ですけど私は大したことはしておりません。取り入るほど心の弱い人の隙間につけこんで、ただ囁いただけです。彼らは私の囁きに耳を貸し、心を揺さぶられ、自分の思うままに動いただけ」
俺の心に語り掛けてきていたのは、アリス様だったのか。いやらしいオッサンみたいな感じがしていたけど、演技上手だな・・・
「彼らは自分の意志で行動していたに過ぎません。私は少し背中を押しただけ。それだけです。ルーチェ国もお先が真っ暗ですね・・・国の騎士団長や有望な魔術師がこのザマですから」
アリス様はまるで悪気の無いようにそう言った。
背中を押した・・・そう、それだけなのだ。俺が狂気に走ってしまったのも、全ては俺の意志によるものなのだ。
俺が自分が恥ずかしくて仕方が無かった。
「その点、ディオ様は流石隙がありませんでしたね。到底私の駒にはなりそうにありませんでした。私の隣に立つ夫としては実力、人格ともに申し分ありませんでしたが、私の欲する覇道には邪魔になると思っていました。そしてその懸念通り、私の前に立ちはだかりましたね。優秀過ぎる夫というのも考え物ですわ」
駒?覇道?
アリス様には何か目的があるのか?いやまぁ、目的もなしにこんなことはしないわな。
「一体何が望みだアリス!」
ディオの質問に対し、アリス様は両手を広げ慢心の笑顔で答えた。
「私の目的は、この弱くて無様なルーチェ国をリセットし、私と魔族で一新した新たな国を作ること。そしてルーチェを、私を蔑んできた愚かな国々を滅亡させてやることです」
高潔なる王女にあるまじきゲス顔を晒すアリス様を見て、俺は驚愕のあまり思考が停止しそうだった。
これがアリス様・・・?これまで俺に見せていたお姿は、あの笑顔は、全てが偽物?
「かっ・・・!」
俺の首から血を吸い上げていた手が離れた。
なすすべもなく俺の体は地面にドサッと力なく横たわる。体が動かない。見ると俺の体がシワシワになっていた。なんで生きているんだろう俺?といったレベルだ。
「ふふ、馴染みますわ。流石私の力を与え、体まで重ねた男・・・私の体に良く血が馴染みますわ」
アリス様は俺から吸い上げた血がお気に召したのか、随分と気分が高揚しているようだった。
「レイツォ・・・君は私の兄弟になったのか・・・」
ディオが場違いの言葉を俺に投げかけていた。やめて。今その話題を出さないで。
「流石はレイツォ・・・良く力を蓄えてくれました。今なら私は何でも出来そうな気がするほど、とにかく力が溢れています」
アリス様の体から、先ほど前の俺と比べても比較にならないほどの魔力が溢れていた。今の彼女はさっきまでの俺なんかよりもずっと強い・・・それだけは肌に感じる魔力だけでも良くわかった。
「お前がレイツォを狂わせ、このような茶番を繰り広げたのかアリス!」
ディオが剣を抜き、アリス様に向かってそう叫んだ。
何故もっと早くにそれをやらなかった・・・俺の血を吸い終わる前に。
「レイツォだけではありません。騎士団長もですわ。ですけど私は大したことはしておりません。取り入るほど心の弱い人の隙間につけこんで、ただ囁いただけです。彼らは私の囁きに耳を貸し、心を揺さぶられ、自分の思うままに動いただけ」
俺の心に語り掛けてきていたのは、アリス様だったのか。いやらしいオッサンみたいな感じがしていたけど、演技上手だな・・・
「彼らは自分の意志で行動していたに過ぎません。私は少し背中を押しただけ。それだけです。ルーチェ国もお先が真っ暗ですね・・・国の騎士団長や有望な魔術師がこのザマですから」
アリス様はまるで悪気の無いようにそう言った。
背中を押した・・・そう、それだけなのだ。俺が狂気に走ってしまったのも、全ては俺の意志によるものなのだ。
俺が自分が恥ずかしくて仕方が無かった。
「その点、ディオ様は流石隙がありませんでしたね。到底私の駒にはなりそうにありませんでした。私の隣に立つ夫としては実力、人格ともに申し分ありませんでしたが、私の欲する覇道には邪魔になると思っていました。そしてその懸念通り、私の前に立ちはだかりましたね。優秀過ぎる夫というのも考え物ですわ」
駒?覇道?
アリス様には何か目的があるのか?いやまぁ、目的もなしにこんなことはしないわな。
「一体何が望みだアリス!」
ディオの質問に対し、アリス様は両手を広げ慢心の笑顔で答えた。
「私の目的は、この弱くて無様なルーチェ国をリセットし、私と魔族で一新した新たな国を作ること。そしてルーチェを、私を蔑んできた愚かな国々を滅亡させてやることです」
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