新訳・親友を裏切った男が絶望するまで

はにわ

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新薬  ~騎士団長目線~

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次の地獄はすぐにやってきた。
雷を防ぎきったかと思うと、魔族が王都を包囲しているとの連絡が入った。どうやら結界を物理攻撃で破壊しようと考えているらしい。
結界は以前のそれに比べて強力なものであるが、それでも急ごしらえなのもあって恐らく魔族の総攻撃には耐えられないと魔術師団長に言われて戦慄する。結界が破壊される前に魔族を倒さねばならない。だが、元より実力の心もとない兵士達も、今や数は半数である。一気に魔族がなだれ込めば一瞬にして終わる・・・恐ろしい雷は結界で防ぐことが出来たが、今だ現状は絶望的な状況にある。
城に保管してあるナオール草の回復力ではまだ戦力になるまで回復するには時間がかかる。


「だがやらねばならない。戦える者を集めろ!迎撃するぞ!!」


「「「「「「「「はいっっっ!!」」」」」」」」




!?


私の掛け声に、思った以上の人数の兵士が返事をしたことに気付く。

見るとディオにやられたはずの男の顔をいて、私は絶句してしまった。


「騎士団長。どうにか新治療薬の処方が間に合いました」


そこへ現れたのは王国薬学研究所の所長であった。


「新治療薬だと?そんなものが・・・」


私は聞いていない。薬学研究所は王がろくに予算も与えず、ろくに開発も進んでいないと聞いていた。


「予算がないので時間がかかりましたが、十年以上ほど時間をかけてナオール草をベースにした新薬を開発したのです。効果はリーン国が開発したそれを上回ります。王に言うとまた変なことになりそうなのでずっと伏せておりましたが・・・」


所長はそう言って苦笑いを浮かべていた。確かに暗愚なる王に新薬の開発をしていると言っていても、完成が近づいたら「もう予算はいらんだろ?」などと言って予算を更に引き下げるなんてことになりかねない。


「治験は済んでいませんが、戒厳下であるというのもあって緊急承認してもらいました。まぁ、理論上は安全なので何も無いでしょう。まぁアレですよ将来的な不安よりも、まずは目先の脅威に対応するが必然かと!」


戒厳下で処理する書類が莫大に増えたことで全てを見てなかったが、新薬の緊急承認の書類があったのか。良くわからずに適当に判を押してしまった。所長が尤もらしいことを言っているが、治験が済んでいないとは何とも恐ろしい。理論上大丈夫、が通れば治験などは必要ない。全然大丈夫じゃないから治験が存在する。『理論上安全』に縋るのは科学的ではなくむしろオカルトと言える。
このまま兵士を送り出しても良いものか?と考えたが


「まぁ私は使ってないからいいか」


だが、とりあえず自分には関係ないので私は良しとした。
新薬で回復したであろう兵士達が「えっ?マジ?」と青い顔をしているが、所長の言う通りまずは目の前の脅威を取り払わねばならない。


「出陣だ!このルーチェを護るぞ!!」

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